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氏神物語  作者: 斧竹石
11/12

プール

夏休み前、最後の休みで土曜日から月曜日の三連休のこと。


土曜日、天気は晴天で気温は40度近い猛暑となった。


朝は暑さで起きるようなそんな日、起きると汗で寝巻きはベタベタ。


伸二は部屋着に着替え、顔を洗い、朝ご飯を食べようとリビングに向かう。


伸二は寝る時クーラーを付けないタイプで部屋は蒸し暑く、リビングなら皆が起きて、誰かがクーラーをつけている。リビングに入った瞬間クーラーで冷えや部屋が待ち構えていると思ってドアを開けると。


(あぁ、すずし・・・・・・くない!)


リビングは廊下や自分の部屋と変わらず蒸し暑い、既に皆リビングに揃っているのにクーラーがついていない。


「あれ?どうしてクーラーつけてないの?」


どうしてクーラーを付けないのかと伸二は疑問に思って聞いた。


「付けてないんじゃない、付けられないんだ」


京が暑そうに料理をしながら言った。


「え?どういう意味?」


「クーラー壊れてるみたいなんだよ」


あざかがそういうので、伸二は本当なのか?と、自分でクーラーのリモコンを取ってボタンを押してみても反応がない。


電池を変えてみても反応はなかった。


「うぁ・・・・・・ホントだ」


伸二はどうする事も出来ず、取り敢えず近くの電気屋に電話することにした。


「あれ?出ない」


電気屋に電話してみたものの、留守番電話でかからず、また時間を置いて電話をかけることにした。


暑さの中、皆で揃って朝食を食べ、その後伸二はもう一度電話してみたのだが、やはりかからなかった。


仕方がない。アイスでも買うついでに電気屋を見に行こう。


と伸二は直接街の電気屋を訪れることにした。


「誰かアイス買いに行こうよ」


一人で行くのも寂しいので、誰か付いてきてくれるだろうと、伸二は提案する。


「だるい」


とあざか。


「嫌よ、暑いの苦手なの」


と彩乃。


「私今日お洗濯の当番だから・・・・・・」


ごめんね、と叶。


「私が行く」


4人中3人に断られ、伸二は諦めていたが、京が付いていくことになった。


流石にこれだけ居て一人で暑い中歩き回るのは寂しいので、伸二にとって京が付いて来てくれるのは嬉しかった。


「みんな何食べたい?」


ついでにアイスを買ってこようと思っていたので、伸二はみんなに注文を聞いた。


「カリカリ君!!!あ、りんご味な」


とあざか。


「私ピノ」


と彩乃。


「白くまさん!」


と叶。


「はいはい、電気屋も行ってくるからちょっと遅くなるかもしれないけど、留守番よろしくね」


みんなの注文を聞き、伸二と京は家を出た。


学校の時は流石に持ってきては言ってないが、京は普段日傘を指して出かけている。


京の肌は透き通るような真っ白な肌で。本人も焼きたくないようだ。


二人して商店街の中にある電気屋に行くと。


「あれ?シャッターしまってる!」


電気屋があるその場所にはシャッターがしまっており、紙が一枚貼られていた。


「誠に勝手ながら三連休の間は臨時休業とさせていただきます」


その紙には割と達筆でそう書かれていた。


何かしらの事情で電気屋は臨時休業、伸二は連休が終われば電気屋も再開するし、2~3日耐えれば良いかと、電気屋にクーラーを直してもらうのは諦めた。


「空いてないし、アイス買いに行こうか」


「ああ、そうしよう」


商店街の中にあるスーパーに入った。


「あー涼しい・・・・・・」


スーパーの中は冷房がガンガンに効いていて、溶けるような暑さの中ここまで来た伸二たちにすれば砂漠のオアシス見たいなものだった。


「京はどうするの?」


アイスコーナーに行き、伸二は自分のアイスを選び終わると、まだ何を買うか迷っていた京に声をかけた。


「僕はダッツの抹茶にしようかな」


「じゃあ・・・・・・私はチョコにする」


選び終えたふたりは、家に居る3人の分のアイスも箱に入れてレジへと向かう。


(はぁ・・・・・・外に出たくないなぁ・・・・・・)


スーパーから出るとまた地獄のような暑さが待っていると思うと、伸二も京も外に出るのを躊躇した。


だが、いつまでもここにいる訳にも行かないので、仕方なく外に出る。


せっかく京が付いて来てくれたので、家で食べる分の他に、帰る途中で食べる分のアイスをもう一つ買っておいた。


ソーダ味のアイス。長方形の水色のアイスに棒が二つ刺さっていて、二つに割るようになっている。


二つに割って、伸二は京とアイスを分けて食べる。


まだスーパーを出たばかりなのにアイスが溶け始めていた。


アイスを食べながら、伸二は少し前を歩く京の姿を目で追っていた。


白い日傘に白いワンピース、手には一本のアイス。


(絵になるなぁ・・・・・・)


「なんだ?ジロジロ見て」


伸二の視線に気づき、京が振り返る。


「綺麗だなって」


暑さで頭がおかしくなっているのか、伸二は思ったことをそのまま口にしてしまった。


「・・・・・・褒めても何も出ないぞ」


京は表情を変えることなくそう言ったが、また前を向き歩き出すと、伸二に見えないように少しだけ頬を緩ませた。


二人が帰宅し、リビングの扉を開けると。


「おい、買ってきたぞ・・・・・・っていないのか」


京がそう言って帰宅したことをみんなに告げるが返答はない。三人ともリビングには居なかった。


部屋にいるのかと思い、伸二は三人の部屋を見て回るが、誰も部屋にいない。


「あれ?」


どこかに出かけたにしても鍵はかかっているし、どこにいるのだろうかと思ったが、取り敢えず汗をかいたので着替えようと自分の部屋に入ると。


「うわっ」


伸二の部屋で三人がくつろいでいた。


「なんで皆ここにいるの?」


「クーラー壊れたのよ~」


「いや、リビングでしょ・・・・・・」


「皆の部屋のもよ」


彩乃によると、伸二の部屋以外のクーラーが全て壊れているらしい。


そんなことあるのか?と半信半疑で伸二は確認しに行く。


いくらなんでも全部一度に壊れることはないと思ったのだが、各部屋確認してみるものの、彩乃が言った通り本当に壊れていた。


仕方がないので伸二は自室に戻る。


みんなそれぞれ本を読んだりゲームしたりとくつろいでいる。


(それにしてもみんな薄着にも程がある・・・・・・・あー叶ちゃんまで薄着だよ・・・・・・どうせ彩乃さんにでも影響されたんだろうけど)


「ちょっと、目のやり場に困るんだけど・・・・・・」


暑いのは理解が出来るが、ほとんど下着のような姿でいられると、伸二にしては困る。


「暑いんだから仕方ないだろ!」


「ふふっ・・・・・・そんなこと言って、本当は嬉しいくせに」


決して嬉しくはない。本当に困る。


しかし、自分が部屋から出るのは気が引ける。伸二だって暑くないわけではないし、だがクーラーが壊れていないのこの部屋だけだ。


仕方ない。この三連休は我慢しよう。


と、伸二は諦めた。


「うわっ!京まで?」


京も薄着で伸二の部屋に入ってきた。


「暑いんだ、仕方がない」


京は伸二のベッドに腰掛けて持ってきた本を読み出す。


(・・・・・・はぁ、仕方ないか)


伸二は椅子に座ってPCを立ち上げる。


しばらくすると伸二が画面に向かっていると、叶が興味を惹かれ、PCのモニターをまじまじと眺めた。


「いつも思ってたけどお兄ちゃん何やってるの?」


「ん~なんだろうね?」


叶に続いて彩乃も近寄ってくる。


「未成年が株取引って・・・・・・」


彩乃が伸二を見て言った。


「さ、最近は未成年でも出来るんですよ」


「へえ」


彩乃の疑うような眼差しが伸二に突き刺さる。


「どうなの、それ?」


「え、ああ、丁度冬から寝かせておいた奴が上がってきてて・・・・・・」


「お兄ちゃん株ってなに?」


伸二は叶が興味をそそられているようなので、叶にも分かるように優しく説明したのだが。


「わ、わかんないよ・・・・・・」


「まぁ、そのうちわかるようになるかな?」


その日は夜までみんな部屋の中で過ごし、伸二がみんなの後にお風呂に入って、お風呂から上がり部屋の戻ってくると。


「ナニコレ?」


伸二の部屋には伸二を含めて全員分の布団が敷かれていた。


「えーっと、もしかして皆ここで寝るの?」


「当たり前だろ?暑くて寝れないって」とあざか。


「ていうかさ・・・・・・なんで僕のも降ろされてるの?」


伸二はベッド寝ているが、普段ベッドの上に敷かれている敷布団と、掛け布団が床の上に置かれていて、何故かみんなの布団に挟まれていた。


「せっかくだから、みんなで寝ましょうってことよ」


問題ないでしょ?と彩乃。


「問題しかないと思うんですけど」


みんなはそれでいいのか?と伸二が聞いたところ全員同意済みだった。


(この三連休はもう諦めるか・・・・・・)


伸二は何かと我慢が多い連休を過ごすことになりそうだと、ため息をついて布団に入った。


伸二が寝転がって目をつむっていると、何やらワイワイと声が聞こえたので目を開けて見てみると、四人がジャンケンをしていた。


「何でジャンケンしてるの?」


伸二は気になって聞いてみた。


「誰が伸二の隣で寝るかジャンケンで決めてるんだ」


と京。


どういう意味だ?と聞こうとするとジャンケンが始まった。


「「「「ジャンケンホイ!」」」」


ジャンケンの結果、伸二の両隣はあざかと京になった。


「ぶーぶー」


と彩乃はわざとらしく拗ねていた。


叶は少し拗ねた顔で伸二を見た。


(別にどこでもいいんじゃ・・・・・・)


伸二はジャンケンまでして決めることなのかな?と疑問に思った。


「じゃあ、電気消すね」


伸二はリモコンで消灯して、風邪を引かない程度にクーラーの温度を調節して就寝した。


翌朝。


(暑い・・・・・・何か、重い・・・・・・)


伸二はそんな思いで目を覚ますと、伸二の両隣であざかと叶が引っ付いていた。


京と彩乃は朝食の当番で、既に起きてキッチンに行っているようで、二人の姿はなかった。


二人共よく寝ていて、無理に起こすのが気が進まず、伸二は二人が起きるのを待つことにした。


しかし、中々起きる気配がないので、伸二は首だけ動かしてあざかの方を見てみた。


思ったより近く、息が顔に当たる。こう言う機会は滅多にないと思い、伸二はあざかの顔をじっくり眺めてみた。


(まつげ長いな・・・・・・それに肌が凄く綺麗だ。あざかもこういう所は結構ちゃんとしているんだなぁ)


あんまり見すぎるのもどうかと思い、伸二が顔を背けようとしたその時。


「んっ・・・・・・ふぅ・・・・・」


寝返りを打ったあざかが伸二に近づき、吐息が漏れる。


(や、やばい・・・・・・けど動けないし・・・・・・)


眠ったままあざかは伸二の顔にどんどん自分の顔を近づけていき、このままでは、お互いの唇が触れ合ってしまいそうだった。


ただ首を背ければいいだけなのに、伸二は慌ててそんなことにも気づかす、どうしようかと焦っていると。


「バシッ!」


と、伸二の目の前にあるあざかの額を誰かが叩いた。


「何やってるんだ・・・・・・」


伸二は真上を見ると、京がジーッと伸二の顔を見ていた。


「動けなくて、あはは・・・・・・」


額を叩かれたせいで、あざかが目を覚まし、目の前に伸二の顔があることに気がづく。


「「・・・・・・」」


沈黙。


「う、うわっ!お、お前何やってんだよ!?」


あざかが驚いて飛び上がる。


「何?って自分がくっついてたんじゃないか・・・・・・」


「あ、あぁ・・・・・・そっか、ごめん」


「いや、そこで謝られると何か変な感じ何だけど」


「うるさいな!謝ってんだからどういたしましてとかあんだろっ!!!」


「えぇ・・・・・・」


伸二とあざかが騒いだせいで、叶も目覚めた。


「はぁ・・・・・・それにしても暑いわね」


朝ご飯を食べながら、彩乃がボソッと呟いた。


「そういえばこの辺りってプールないよな」


そんな彩乃とあざかの会話を聞いて伸二思い出した。


「あ、そういえば・・・・・・プールあるよ?」


「はぁ?プール何かどこにあるんだよ。電車でわざわざ遠くまで行きたくないっての!」


「いや?あるよ、すぐ近くに」


みんな伸二の言う意味が分からないようだった。


事実この辺りには市民プールの一つもない。


でも一つだけプールがある。


「プール入りたい?」


「そりゃあ、あるなら入りたいわよ」


「そんなの決まってんだろ!」


「私も!」


京も「コクリ」と頷いていた。


伸二はみんなを玄関に連れ出し、外の廊下に出た。


そして廊下の端にある扉に向かう。


「ん?こんなとこに扉なんてあったっけ?」


今まで目にしなかった謎の扉をあざかが不思議そうに見ている。


伸二はポケットから家の鍵と共に、キーチェーンにいくつか付いている鍵の一つで扉を開ける。


扉を開けるとそこには上に登るための階段がある。


「屋上にでも行くのか?」


「まあ、付いてこれば分かるよ」


伸二は何か企んだような笑みを浮かべる。


階段を登ると、今度は鍵がついていない扉がある。


またその扉を開けると。


「うわっ!すっげえええ!」


「何だこれ?」


そこは屋上。しかし、ただの屋上ではない。


屋上の真ん中には25m四方の水が張られていないプールがあって、その他にもシャワールームや更衣室なども備えてある。


プールは水も貼っていないし、随分使っていないので汚れが溜まっているので洗わなければ使えない。


「洗えば使えるよ?」


叶が「クイクイッ」と伸二の服を引っ張った。


「私もお姉ちゃんも水着持ってない・・・・・・」


(あぁ・・・・・・そっか)


伸二の学校には水泳部はあるが、授業ではプールをやっていないので、二栞姉妹は水着もスクール水着を持っていない。


「あざかと彩乃さんは水着持ってるの?」


持っているのなら先にプール掃除していてもらおうと思ったが。


「持ってるけど私も行く!」とあざか。


「私は毎年新しい水着を買うの!」と彩乃。


「えーっと・・・・・・じゃあ、みんなで買いに行こうか?」


あざかも彩乃も水着は持っているようだったが、伸二は二人の気迫に押されて結局みんなで水着を買いに行くことにした。


叶が香奈女も誘いたいと言うので、香奈女も連れて行くことになり、最終的に六人で行くことになった。


駅に待ち合わせた五人も前に、いつもの眼帯と刀は付けた香奈女が現れ、揃って電車に乗り、市街に向かった。


「僕はお邪魔なので・・・・・・」


水着を販売している店の前に来くると、各々水着を選び出し、伸二はその様子を見てすぐにその場を去ろうとした。


「待ちなさい、伸二くん」


彩乃が伸二を引き止める。


「こういうのは男の子の目線も必要なんだから」


「いやぁ・・・・・・・そう言われましても」


伸二はこの場に居るのが辛く、女性物の水着しか売っていないために女性しか居なくて、男一人でこの店に入るのは中々に勇気がいる。


「いいからそこで見てなさい」


伸二は彩乃に無理やり試着室の前に立たされた。


(気まずいな・・・・・・)


と伸二が周りの様子を窺いながらそんな事を思っていると。


「どう?伸二くん?」


試着室の扉を開け、彩乃が伸二の前に現れた。


「・・・・・・・」


彩乃が試着してきたのは黒いビキニタイプの水着。


伸二はただただ彩乃の姿に見惚れていた。


「ねぇどうなの?」


いつまでも言葉を発さない伸二に痺れを切らした彩乃が言う。


「え?何が?」


「だから~この水着よ、どうなの?」


「あーえーっと、良いんじゃないですか?」


「本当?」


「本当ですって・・・・・・」


本当は凄く似合ってるとか、凄く綺麗ですとか、そんな気の利いた事を言ったほうが良かったのだろうが、伸二はあまりに彩乃が魅力的で、恥ずかしくなって正直に言えなかった。


次は花柄のワンピースタイプ。


「これは?」


「似合いますよ?」


「ほら~ちゃんとみなさいよ~」


適当に感想を述べる伸二に彩乃が近寄る。


「に、似合いますって!」


(この人美人だし何でも似合うと思うんだけどなぁ・・・・・・)


伸二はわざわざ聞きにこなくても良いのにと思いながら、永遠と続きそうな彩乃の水着の試着を見せられていた。


彩乃は結局最初に着ていた黒い水着を購入。


店に入ってから一時間以上経った頃、それぞれ水着を選び終わったようなので、さっさと家に帰ることにした。


水着を買ったのはいいものの、まだプールに入るには掃除が残っている。


(そういえば、プール掃除をすること香奈女ちゃんに言ってるのかな?)


家に帰ると早速水着に着替え、屋上にやってきた。


そしてプール掃除に取り掛かろうとするのだが、まずはジャンケンでホースを持つ人とブラシで掃除する人を決める。


ジャンケンの結果彩乃がホースを持つ事になった。


暑い、暑いと言いながらブラシ係は黙々とプールを磨き続ける。


「私に労働を強いるとは・・・・・・」香奈女はプール掃除をさせられるとは思っていなかったようで、伸二を睨んでそんな事を口走っていた。


「だあああ!!!いつまで磨けばいいんだよ!?」


広いプールを六人だけで掃除するのは中々に時間がかかり、こういう面倒くさい事をするのが最も嫌いなあざかがブラシを放りなげる。


あざかも限界で、そろそろ一時間近く磨いていると思うので、作業を切り上げることにした。


「それじゃあ最後に水流してこれで終わろうか」


「うっしゃ!!!」


あざかを含めブラシ係はその場に座り込む。


「じゃあ、彩乃さんホースで流していってください」


「ほーい」


水で汚れを流し終わるとプールに水を張る。


水が貯まると伸二本を持ってきて、ビーチベッドに寝転びながら読むことにした。


各々プールに飛び込み、みんな優雅にくつろいでいた。


プールには入らず、彩乃は伸二の元にやって来る。


「ねえ、日焼け止め塗ってよ」


「京に塗ってもらってくださいよ」


「えー伸二くんに塗ってもらいたいのに!」


「はいはい」


伸二は仕方なく本を閉じた。


彩乃は早速シートの上に寝転がる。


「紐といて~」


伸二は彩乃の水着の紐をとく。


「僕こういうの初めてなんですけど」


「そこのクリームを手に取って、全体にまんべんなく塗ってくれればいいから」


「京達まで塗ってくれなんて言ってこなければいいけど・・・・・・」


「あら?嬉しくないの?」


「そういう問題じゃないですよ」


伸二は言われた通り、クリームを手に取って彩乃の背中に塗り始める。


手になじませて肌に触れると


「んぅ・・・・・・冷たくて気持ちぃ・・・・・・」


ベタベタ。


(・・・・・・ん~こんな感じで良いのかな?加減が良く分からない)


「あぁ、そこそこ、きもちいわ~・・・・・・あんっ」


(これって気持ちが良いとかそういうものなのかなぁ・・・・・・・)


伸二は一旦手を止める。


「変な声出さないでくださいよ」


「んふふっ・・・・・・伸二くん才能あるかもね?」


「なんの才能なんですか!」


伸二は終始変な声を出す彩乃に呆れながら黙々と日焼け止めを塗っていった。


伸二たちは夕飯前まで屋上でプールを満喫していた。


その日の夜のこと。


伸二はお風呂上り、リビングのソファで牛乳を飲みながらくつろいでいた。


(はぁ・・・・・・疲れたけど、みんな喜んでたし、良かったな)


と一日を振り返り少し笑みをこぼしていたその時。


電話が鳴った。


(誰だろう?)


と伸二は携帯の画面を見ると、驚きと喜びが隠しきれず、思わず声を上げてしまいそうになった。


その画面に表示される名前を見ていると、懐かしい顔が思い浮かんできた。


彼女が伸二と電話ではあるが話すのは2年ぶりになる。


伸二は込み上げてくる思いを抑え、通話ボタンを押した。


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