プロローグ
僕は氏神伸二この物語の主人公だ。
あんまり自分の容姿には興味はないけど、普通だと思う。
友達からは腑抜けた面だとか言われる事もある。
身長は少し高めで180cm近い。最近の若い人は170cm以上が普通だから、飛び抜けて高いという訳ではないと思う。
趣味は多くないけれど、一つの物事に没頭する事はあまりない。
この辺で僕のちょっとした自己紹介は終わり。
さてさて、少し変わった物語の始まり始まり。
4月8日
その日は始業式で、僕はこの春から高校二年生になった。
僕が通っている高校は長山高校と言う公立高校。
昔はこじんまりした少し小さめのどこにでもある普通の高校だったらしいけど、何年も前に中高一貫になって、それを期に生徒数が大きく膨れ上がり、生徒の増加に合わせ校舎も大きくなり、今やマンモス校となっている。
校舎は中学から通っている僕でさえもたまに迷うほどの大きさ。
始業式は基本的に正装で行かなければならない。
なので、今日は普段はあんまり着ることのないブレザーを着込んだ。
高校に友達が少ないのは確かだけど、それとは関係なく学校に行くだけにわざわざ友達と待ち合わせして行ったりするのは面倒くさいタイプの人間なので、僕はいつもの通り一人黙々と学校に向かった。
新入生を迎えるべく、僕を含めた在校生は先に体育館に集合する。
もちろん体育館も馬鹿みたいに広い。
それに体育館はこの一つだけでは無く第二、第三と帰宅部からすれば無駄だと思う程に沢山ある。
「そんなにいるのかな?」
と思ってはいるが、実際様々な部活があってちゃんと無駄なく使用しているそうだ。
始業式が始まる。
新たにやってきた新入生を迎え入れる。新入生の表情は様々だが何とも華やかなものだ。
堅苦しい開会の挨拶を終えると、今度は長ったらしい先生方の話が始まる。
ほとんどの生徒は聞き流していた。
僕もそう、初老のおじさんの長話なんて聞いているだけで眠たくなる。
せっかく考えてきてもらって悪いけど正直どうでも良いような話しかしないので皆が聞く耳を持たないのは当然と言えば当然だ。
言うことだけ言ってさっさと終わらせてくれた方がありがたい。
30分程理事長。
続けて校長を含めた教職員達の挨拶が終わりようやく式が終わる。
式が終わると一度体育館の外に出てクラス分けがボードにて発表される。
僕もボードに書かれた自分の名前を探す。
数多い生徒をかき分けやっとの思いで自分がどのクラスになったのか確認できる。
少し楽しみな時間だ。
僕は少し時間をかけて自分の名前を発見した。
どうやら僕は2-Aクラスになったようだ。
自分の名前だけ確認して少し人が少ない所で待機していると、各クラスの先生が自分の担当するクラスが書いてある看板みたいなものを持たされていて。
「2-Cの人はこっちについて来てくださーい!」
「はーい!新入生の子はこっちですよー!」
などと先生方が自分の受け持ったクラスの生徒を呼び込んでいた。
そのなかでも、一際面倒くさそうにしている一人の中年男性教員がいた。
「あー2-Aはここだ~ちゃっちゃと集まれ~」
と僕の担任になるのであろう先生がだるそうに声を出していた。
この学校は教師も山ほどいるから誰が誰だか分からない・・・・・・。
まあ誰が担任でも別に良いだけど。
でも、あんまり熱苦しい教師は嫌かな?
どこにでも一人はいる体育会系の熱血先生がこの長山にも居て、皆その先生が担任になることを嫌がる。
まあそういう暑苦しいのが鬱陶しい時期だろう。
悲しいことに熱血先生が皆からあまり好かれていないことに先生自身が気づいていないことは内緒だ。
そう言う人が好きって人もいるにはいるだろうけど、僕はどっちかというと苦手かな。
2-Aの生徒は皆、中年教師について行った。
人が多くて良くわからないが頑張って僕も後についていく。
クラスへの移動中、良く知った奴が僕に話しかけてきた。
「よお、伸二!同じクラスだな!」
とフレンドリーに話しかけてきたこの男子生徒は袴大輔。
大輔とは中学校からの友達で。
おしゃべり、目立ちたがり屋、自己中心的、バカ。
特徴はそんな所かな。
大輔は中学、高校とサッカー部に所属している。
身長は僕より少し高くて、サッカー部で鍛えられているためしっかりとした健康的な体をしている。
顔はまあまあなのかな?どっちかと言うと良い部類に入るのかもしれないけど、性格面から女の子に嫌われる節がある。
「えーっと、誰だっけ?」
僕はわざとらしく知らないフリをする。
「は?もういいってそう言うネタ・・・・・・大輔だよ、大輔!」
「あーはいはい。思い出したよ、相変わらず馬鹿だね」
「誰が馬鹿だ!」
バシッと肩を叩かれ、そして僕らは少し笑い合う。
中学校から大輔はいつもこんな感じだ。
僕らは去年、クラスは違ったけど時々は一緒に帰ったり遊んだりしていた。
大輔は部活も忙しいし、こうして会って話すのは少しだけ久しぶりだった。
「相変わらずの馬鹿っぷりだな、お前ら!」
大輔と話していると、また聞き覚えのある声がした。
声の主はショートカットに少し目つきの悪い目、笑うと口に見える八重歯、可愛らしい顔の少女。身長は平均的なのだが、少し小さいイメージがある。
彼女の名前は花里あざか。
大輔と同様あざかとも中学校からの付き合いだ。
男勝りで口が悪いのがたまにキズ。
あざかとも去年は一緒のクラスではなかったのでこうして会うのは久しぶりってこともないかな?
ちょくちょく話しもしていたし、昼ご飯を一緒に食べる事もあった。
けれど、あんまり学校の外で遊ぶ事は無かったと思う。
2-Aの団体の中にいるってことはどうやらあざかも同じクラスになったみたいだ。
「よっ、伸二!・・・・・・と大輔」
「・・・・・・俺はついでかよ」
大輔が小さく悪態をつく。
「そっか、あざかもAクラスなんだ。騒がしいクラスになりそうだね」
「騒がしいってなんだよ、そこのバカと一緒にすんな!」
「ちょっ、久しぶりに会ってバカバカって言いまくってよ、お前らひどくね!?・・・・・・え?ちょっと、ねえ・・・・・・・聞いてる?」
大輔が何か言っているが、2-Aの集団が足を止めたので聞いていなかった。
どうやらこのクラスが、僕らが一年間学ぶ教室のようだ。
「ここか」
基本的に自分の学年の棟にしか行かないのでこの2-Aの教室に来るのは初めてだ。
「やっぱりこの学校広いよな」
あざかも同様にこの学校の広さを改めて実感しているようだ。
「たまに自分がどこにいるか分からなくなるよね」
「だよなー」
ふと大輔を見ると、久々に会った友達にバカバカ言われて落ち込んでいるようで、廊下の隅で拗ねていた。
「ほら、大輔早く教室入るよ」
「早くしろってバカ!せんせー待ってるぞ?」
大輔は動かない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ビクともしないので大輔をそのまま放置して僕とあざかはそのまま教室に入った。
すると活きよい良く立ち上がり叫びだす。
「うおぉい!なに放置してくれちゃってんだよ!!!」
大輔が半泣きで走って廊下から教室に入ってきた。
「だってお前面倒くさいんだもん」
「面倒くさいってお前・・・・・・ひどくね?なぁ伸二も何とか言ってやってくれよ!」
ひどいよな!?と大輔は僕に泣きついてきた。
「はぁ・・・・・・全く」
僕は面倒くさそうに大輔に答える。
「大輔って、面倒くさいよね」
本気じゃないけどね。
「うわぁああああああああああああああああああああああ!」
大輔は教室出て行って走り去ってしまった。
「あーあ、どっか行っちゃった」
「馬鹿だ!馬鹿!アハハハハ!」
「まあね」
走り去る大輔を見て二人で笑う。
「そ、そうだ。伸二?今年はその、一緒になれて・・・・・・」
「僕らも早く席に座ろうよ」
あざかが何か言い出していたけど、先生が面倒くさそうな目でこっちを見ていたので急いで席に座った。
「あーえー、何てった?袴?だっけ・・・・・・まあ一人ぐらい生徒が居なくなっても別に問題ねぇだろ」
どうでも良さそうに大輔のことを放置した先生。
やっぱり適当だな、この人。
皆が席に座り終わると、先生は自己紹介を始めた。
「あー俺は田中太郎。お前らの担任になった。まあ一年間よろしく頼むわ」
黒板に自分の名前を書く。
田中太郎って本名なのか?・・・・・・例文に出てきそうな名前だ。
「えーっと、まあお前らも自己紹介・・・・・・だな。これは一様全クラスやっているみたいだしな・・・・・・まあ、やるか」
「えー!」と皆嫌そうにそれぞれ言葉をあげていた。
まあ想像してなかったわけでもないし、去年も自己紹介はあったので僕は特に何も思わなかった。
しかし、どうなのだろう実際。
自己紹介は大切な事だとは思うけど、前に立つのが恥ずかしいって思う生徒の数が大半なのだろうか?
そんな事を考えている間に先生が自己紹介を始めようとした。
「じゃあ一番からな・・・・・・氏神か?じゃあ早速よろしく」
・・・・・・そうだった。
僕は出席番号1番だ。
なんで僕が一番なのだろう?
アとイから始まる性の人がこのクラスだけ居ないなんて。
まあ順番何かどうでもいいか、結局皆自己紹介する訳だし。
そんな事を考えながら教壇に向かう。
教壇に立ち、クラスの全体を見渡した。
1年いるけどやっぱりよく知らない生徒が大半だ。
(あ、氏神くんだ・・・・・・カッコイイ!)
(ホントだ、一緒のクラスだったんだ~!)
ん?
クラスのあちらこちらから何か聞こえる。
なんだろう?騒がしくて聞こえない。
悪口じゃないといいけど・・・・・・。
まあ、気にしてもしょうがない。
さっさと自己紹介を始めよう。
「氏神伸二です。去年はE組でした。出身は山長中学です。よろしくお願いします」
平凡過ぎるかな?まあいいか、面白くする必要もないわけだし。
さっさと自己紹介を終えて、僕が自分の席に早くも帰ろうとした時。
「おい、伸二!つまんないぞ!何かやれよ!」
あざかが野次を飛ばしてくる。
え・・・・・・?ど、どうしよう?
「えーっと、じゃあ質問とかしてくれたら適当に何か答えますけど」
これで良いのかな?と、あざかの顔を見ると満足気に頷いていた。
しかし、質問何て皆興味あるのかな?と思っていると。
「はい!!!」
あざかがすごい勢いで手を挙げていた。
発案者がいきなり?
んーまあでも当てないと後が怖そうだし。
それにあざか以外挙げていない・・・・・・。
「あー・・・・・・じゃあ、あざかどうぞ」
「好きな食べ物は?」
普通過ぎないか?自分で面白くないとか言っておきながら、全くもって面白みのない質問だ。
「好きなモノも嫌いなモノもこれと言ってないかな」
取り敢えず適当に答えよう。
皆最初に手を挙げるのは嫌だったのか、あざかが挙げてからちょこちょこと手が挙がっている。
皆面白半分なのだろう。
「えーと、じゃあそこの女の子どうぞ」
何人か手を挙げている中で、適当に目に付いた女子生徒を当ててみた。
というかあざかはまだ手を挙げていた。
もういいだろう?
対した質問しないくせに・・・・・・。
「花里さんとはどういう関係なんですか?」
その女子生徒の質問に何故か教室がざわつく。
あざかと僕の関係か。
ふと、あざかの顔を見てみると何故か顔がすごく赤くなっている。
・・・・・・え?なんで?
「えーっと、中学からの友達ですけど?」
少し間をあけて「へー」と意味深な顔で女子生徒は言った。
わざわざ質問するような内容だったのかな?
まあ、適当に質問したのかもしれないな。
他にも何人かの生徒の質問に答え、一様全部答えた。
5人目ぐらいの質問が終わった頃。
「時間がねぇからその辺にしとけ」
面倒くさそうに先生が言った。
「すみません」
何故か僕が謝るはめに・・・・・・。
僕は早々に席に戻った。
後であざかに文句を言わないと。
引き続いて自己紹介が行われた。
僕以外の他の生徒は当たり障りのない普通の自己紹介をした。
・・・・・・・あざかもだ。
人につまらないなんて言ってきたくせに。
20分程でクラス全員の自己紹介が終った。
「後は教材配って終わりだ。それじゃあ休み挟むから次は月曜か・・・・・・たりぃなぁおい・・・・・・」
教材等が配られ、今日はこれで終わりだ。
はぁ・・・・・・始業式だけだと思っていたけど結構疲れたな。
帰りの挨拶が終わった瞬間、僕はあざかを捕まえに行った。
後ろに周り肩を掴む。
「わっ!急になんだよ?」
「あざか、なにか言うことがあるんじゃないの?」
「そ、そうだっけ?取り敢えず帰りながさ・・・・・・」
二人とも家がそれほど遠く無いので徒歩で登下校している。
自転車通学だと手続きをしないといけなかったり、学校が発行したシールを貼ったりといろいろ面倒くさい。それに、そもそも自転車を持っていない。
「自分だけずるいよ」
「いや、悪かったって、そんなにゴチャゴチャ言うなよ」
・・・・・・全く、簡単に言って。
「まあ・・・・・・いいや、それよりさ」
これ以上はキリがない。ここは引いておこう。
「ん?なに?」
「何か忘れてるような気がするんだよね」
さっきから何かつっかえているような感覚。何だろう?
「教室に忘れ物?」
「そういうんじゃないけど・・・・・・」
「なんだよ、気になるなー」
「まあいいや忘れるって事は多分対したことないと思うから」
そんなこんな話しているうちに分かれ道に。
「んじゃここで、それじゃあまた学校でな~」
あざかは僕に手を振って歩いて行った。
「うん、また学校で」
あざかに手を振り僕も自宅に向って歩いていく。
数分後、僕の住むマンションについた。
僕の住む階は30階の最上階。
30階には一つしか部屋が無い。
一階だと101号室から107号室まであるのだけど30階には301号室の一つしか部屋が無い。
理由は一つ僕がそう言うふうに作るようにしたからだ。
何故かと言うと・・・・・・まあ対した理由では無いけど、ご近所付き合いが苦手というより色々理由がある。
というのはまあ、こんなマンションに高校生が一人で暮らしているなんておかしいと騒ぎになったり、悪くて通報されたりしかねない。
そう言う問題もあって、そう言う風に作った。
僕は此処に一人暮しをしている。
両親は居ない。
保護者もいない。
ここを買うのも生活費も全て自分で払っている。
何故、一高校生がそんな大層な生活を出来るのか・・・・・・まあそれは追々話す事にしよう。
エレベーターホールまで行くと、運が良いことにエレベーターが1階で停まっていて、待つことなくすんなり乗れた。
一様エレベーターは4台ついているのだけど一階に停まっていることは少なく、結構中途半端な位置で停まっている事が多い。
運が良いなあ、なんて思いつつ僕はエレベーターの中で何か忘れている事について考えていた。
そして、丁度30階に着いた時に思い出した。
大輔だ。
大輔のことを忘れていた。
あの後どうしたのかな?なんて考えつつ僕はエレベーターを降りて目の前にある玄関扉に鍵を差し込む。
扉を開けた瞬間。
何かがいるような気がした。
玄関には誰もいない。
どうにも気になる。
人の気配がする。
とりあえず端から順に部屋を覗いて行くことにした。
泥棒がいたとしても僕の部屋以外はほとんど物が無いからまあ探すのはそこまで苦労しないだろう。
各部屋を探してみた。
だけど荒らされた形跡も無い。
ただ、窓のドアが一つだけ空いていた。
まあ家に取られたら困るようなものほとんど置いてないのだけれど。
盗みにきたは良いけど金目の物が何も無いし帰ったとか?
まあ何も取られてないのなら警察に連絡した所でだし。
・・・・・・まあ良いか。
僕は考えるのを止め、着替えることにした。
「二人が一緒か・・・・・・ちょっと楽しみだなぁ」
これからの学校生活の事を考えながら僕は上着を脱ぎネクタイを外し、シャツのボタンをはずそうとした、その時。
トン・・・・・・トン・・・・・・トン。
部屋の外からそんな音がした。
どうやら廊下を人が歩いているみたいだ。
やっぱり泥棒?
足音が僕の部屋の前で止まった。
ドアの方をむいた瞬間「バッ」と首を絞められた。
それに加え、それほど大きくは無いが人一人を殺めるには充分なほどのナイフが僕の首元に向けられていた。
おそらく泥棒はタンスの中に隠れていたのだろう。
適当に各部屋を見回っていただけなので気づかなかった。
「入ってもいいぞ」
と僕の首を絞めている強盗が口を開いてそう言った。
声からして女だろう。
ドアから少し小柄の強盗が入ってきた。
ナイフを向けている方を強盗A。
ドアから入ってきた小柄を強盗Bとしよう。
Bは何も言わずにAが僕に問いただす。
「金はどこだ?」
「泥棒・・・・・・かな?」
「質問に答えろ、金はどこだ?」
少しヒンヤリする鉄の感触が首元に伝わる。
「あるけど、ないよ?」
「どういう意味だ?」
「買い物は基本カードだし・・・・・・財布の中身も満足するような額は持ってないよ」
購買や食堂等学校で使う時ぐらいしか持ってない。
小銭ならちょっとだけある。
「そのカードを渡せ」
「財布に入ってるよ。ズボンのポケット」
Aは僕のポケットを探った。
「これか?」財布から一枚のカードを見せた。
「うん、そうだよ。でも・・・・・・それ僕以外使えないから意味ないよ?」
「他には?金になるものは無いのか?」
「ないかな」
金目のものって言ってもアクセサリーとか持っていないし。絵画とかも興味ないからなあ・・・・・・。
「鍵がかかっている部屋があるな、あそこには何がある?」
と、Bは唯一僕の家に鍵がかかっている部屋の事を聞いてきた。
「あそこは・・・・・・僕の家族の物が置いてある」
「鍵を出せ」
「それはできない。あそこは開けないようにしているから」
「殺されたいのか?」
「あははっ・・・・・そう言われても、あそこは開けない約束だから」
「仕方ない、無理やり開ける」
「だめだ」
Bが部屋を出て鍵のかかった部屋にいこうとする。
僕は途端にAの腹を肘で突きスキを作った。
そして手からナイフを奪い取り、今度は逆に僕がナイフを強盗に向けた。
「そこの小柄、止まって」
と部屋を出ようとしていたAを人質にBを脅した。
Bは始めて言葉を発した。
「お、お姉ちゃん!」
ん、お姉ちゃん?姉妹?
声が幼いな・・・・・・中学生ぐらい?
「しー・・・・・・騒がない」
他に物騒なものを持っていないか確認した。
「よし、じゃあマスクとって」
僕はBに向かって指示する。
Bはすぐにマスクをとった。
「・・・・・・」
強盗Bは声の通り僕より少し年下の女の子だった。
やっぱり中学生ぐらいかな?
可愛らしい整った顔で小動物のような印象。
「えーっと・・・・・・君いくつ?12とか13ぐらい?」
Bに聞くと、Bは少し怒ったような顔で「ち、違うよ!15歳だもん」と怒る。
中3か高1・・・・・・と言ってもこんなことをしている様子では学校には通ってはいないだろう。
「叶、黙って」
「ご、ごめんなさい・・・・・・」
AはBに怒ってBがしょんぼりして謝る。
名前出しているけど・・・・・・いいのかな?
とりあえずこっちもマスクを外してみよう。
ちょっとワクワクする。
二つ驚いた。
一つは、マスクの下がもの凄く美人だったこと。
二つ目は、その綺麗な顔に痛々しい傷後が頬についていたからだ。
二人を見比べてみた。
身長はでこぼこだけど、声や顔は似ている。
僕はどうしたものか考えていた。
未遂だしなあ・・・・・・。
「ちょっと良い?」
「「・・・」」
二人は首を縦に振った。
「質問には答えてもらうよ」
ナイフをチラつかせる。
「ブンブン」と妹のほうは思いっきり首を振った。
・・・・・・まぁ冗談だけど。
妹の方の反応がちょっと可愛い。
「このまま警察に突き出すって言うのもありだけど、とりあえずいろいろ聞きたいかな」
ナイフ突きつけたままじゃ話にくいかなあ・・・・・・と思い、姉の方からナイフを離すとすぐに妹に駆け寄った。
名前と年齢は一様聞いておいた。
「弍栞叶。15歳・・・・・・です」
「弍栞京。16歳だ」
姉の方は僕と同い年らしい。
「君たちはどうしてこんな事をしているの?」
「お金がなくて住む所がないからだよ」
妹の方が言う。
「どういうこと?」
妹の方に聞こうとすると、姉が妹を口を抑える。
「叶は黙ってて」
「それで?どうしてそんな事に?」
ナイフを突きつける。
「分かった、話してやる。だが説明するには少し長くなる」
「別に良いよ、今日は暇だからねえ」
どうやら自分たちの生い立ちから話さないといけないらしい。
何やら訳ありのようで、二人の顔が暗くなる。




