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R E D - D I S K 0 4  作者: awa
CHAPTER 15 * NERO
98/198

* Mid August Lovers

 翌日、夕方。

 アゼルを見送るため、ベラはコンドミニアムの玄関にいた。彼の首に手をまわす。

 「なんか変な感じ。なんで私がこっちに残るんだろ」

 彼も彼女の腰を引き寄せた。

 「お前が待つって聞かねーから」

 「行かないでって言ったら行かなかったりする?」

 「肉食う」

 「高級なの買えばいい。わざわざ食べに行くほどのことじゃない。っていうか私と行けばいい」

 アゼルは彼女にキスをした。彼女が壁を背中に背負う。

 「お前も食いたいだけだろ」

 「ガーリックくさくなるから気をつけてね。あと煙草がすごくすすむ。ビールも飲みたくなる。帰ったらすぐシャワー浴びないと、髪がべとべとになった感じがするかも」

 「先に入んなよ」

 「私もまた浴びるの? さっき浴びたばっかりなのに」

 「どうせ暇」

 またキスをしながら、彼はゆっくりと彼女の下着に手をかけた。

 ベラが笑う。「もしもーし。なにする気ですか」

 「一回だけイカせてやる。たぶんすぐ帰る。それまで待ってろ」

 「三時間くらい経っちゃったら“すぐ”とは言わないからね」

 「日付変わるまでには帰るかも」

 「延びた!?」

 彼も笑った。「なんか買ってきてやろーか」

 「ドーナツ?」

 「無理」

 「ケーキ?」

 「あほ」

 今度はベラから彼にキスをした。

 「夕食はなんか食べとく。そんでデザート作っておく。なくなる前に帰ってきてくれれば、それでいい」

 「んじゃドーナツ作れな」

 「わかった」

 アゼルが職場の人間との夕食兼飲み会に出かけたあと、ベラは冷蔵庫の残りでサンドウィッチとちょっとしたサラダ、そしてデザートにドーナツを作った。

 そのあとリビングのテーブルにノートや手帳、ノートPCを用意する。手帳のメモや携帯電話に届いたメールを見ながら、完成するかはわからないが、とにかく書くことにした。

 PCに届いたメールは、インターネット経由でアゼルがくれた携帯電話からも読めるようにしてある。PC用アドレスは仕事用として、ブラック・スター関係の人間にしか教えていないものの、PCに接続できない環境でそれが欲しい時、ネットのメールボックスにログインすれば、PCに届いたメールがすぐに読める。これは、最近やりはじめたことだ。

 そこにはヒラリーやケイト、キュカやエルバ、そして店の客たちからのメールが届くようになっている。こういう内容の詞はどうかという提案や、自分や周りの人間に起きたこと、詞のネタになりそうなこと等、詞になるとは限らないし、なったとしても他のものと合わせたものになるかもしれないといった程度の、作詞へのちょっとしたヒントたちだ。

 ただここのところ、ディックが新しく作った、ベラのPCアドレスを書いた名刺が一部スタッフによって内密にばら撒かれているせいか、匿名を名乗る客からも、愚痴のような相談のようなメールが届くようになっていた。迷惑メールの類は特にないので悪用はされていないのだろうが、誰にも言えずにいる自分の現状を告白するような内容が送られてくる。作詞のネタを提供してくれているのだと勝手に解釈することにしているので、ベラは特に気にもしていないけれど。

 ともかくそんなメールたちを参考に、彼女は作詞をはじめた。特定のメールから作詞をするとしても、ベラが送信者に直接返す返事といえば、曲ができてレコーディングが終わり、うたう人間が決まったあと、そのことをメールで報告するだけだ。ベラ以外は一週間後というのを基準にして、相手の希望があればその曜日や時間に合わせ、シンガーがそれをステージでうたう。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 午後二十二時三十分を過ぎた頃、ベラは玄関ホールへと向かった。ドアを開けて入ってきたアゼルに飛びつくと、彼もそのまま彼女を抱き抱え、そしてキスをした。

 「遅い」彼の髪を撫でながらベラが言う。「待ちくたびれた」

 「十一時は過ぎてない」

 「あんたは待たせてばっかり」

 「待つっつったのはお前」

 「おいしかった?」

 「気づいたら酒ばっか飲んでた」

 「飲んだの? 未成年のくせに」

 「サングラスかけてたらID確認されんかったから、そのまんま」

 彼女はもう一度彼にキスをし、そして笑った。

 「ほんとだ。酒くさい」

 ベラの背中を壁にあずけてアゼルが訊く。「ドーナツは?」

 「作ったよ、プレーンとチョコレートだけだけど」

 「ぜんぶ食ったりしてねえよな」

 「ちゃんと残してる」

 「食ったらシャワー浴びる」

 「ねえ、どうやって帰ってきたの?」

 「迎えがあったから、普通にタクシー」

 「ああ。よかった飲酒運転じゃなくて」

 「迎えにきた奴は軽く飲んでるけどな」

 「ダメじゃないですか」

 「一回も捕まったことないから平気だっつって」

 「関係ないよね。平気だと思う基準がわかんない」

 「俺らが気にすることじゃねえよ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 ベッドの上でひとつにつながっている時、ベラは自分の上に覆いかぶさるアゼルの頬に触れた。

 「──明日で、終わっちゃう」

 彼女の傍らで肘をつき、彼は彼女にキスをする。「正確には“明後日”じゃなかったっけ」

 「そうだ。明日はまだ一日中だ。──でも、それが終わったら」

 ベラの髪を撫でる。「明後日の朝には終了」

 「寂しい?」

 「休みが終わんのがイヤ」

 「確かにイヤ」彼女が彼を抱きしめると、彼も彼女の頭の下に腕をまわしてそれを返した。「夏休みのうちはまだいい。でも夏休みが終わるのはイヤ。長期休み、冬までないんだもん」

 「その頃にはもう別れてる気がする」と、アゼル。

 「クリスマスは一緒にいる」

 「もういいんじゃね。去年も一緒じゃなかったし」

 「でも会いに行った」

 「会ってねえよ」

 「別れてても別れてなくても電話する」

 「喧嘩になるから出ねえ」

 「なにそれ。出なかったら待ち伏せだからね。インターホン地獄だからね」

 答えずアゼルはまたベラにキスをして、彼女の身体のずっと奥にまで入っていった。

 「いいから、もう黙れ」

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