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R E D - D I S K 0 4  作者: awa
CHAPTER 13 * MISERY BUSINESS
87/198

* Misery Business

 盛大な拍手と大きな満足感に包まれていたヒラリーと替わり、ベラは歌詞カードをジョエルに渡してステージにあがった。マイクのスイッチを入れる。

 「今、すごい不機嫌。“怒り”がテーマだからべつにいいんだけどね」

 客たちの拍手は苦笑いに変わった。ベラが続ける。

 「確かに先週、奪いたきゃ奪えって言った。自分の知らない人間がつきあってる相手を奪われて傷つこうと、私はどうでもいいからって。けどやりかたってあるじゃない。言ったよね、私。嫌がらせだとか八つ当たりで奪うってのはクソだって。

 いちばん最悪なのは、寝取ることだと思ってた。コイビトがいるってわかってて寝取るってのは、ホントに最悪。そりゃ流される奴も悪いんだけど。でもこれ、目の前でってないんだよね、普通に考えれば。で、キスよ。これは厄介。相手の意思に関係なくできちゃうから。しかもいるんだな、相手のコイビトの目の前でそれする奴。ある意味これがいちばん最悪なのかもって思い知った。

 これは、その最悪なクソ女に向けて書いた曲。ホントはバンドがいたほうがいいんだけど、そこまで待てなかったから」

 あまりそちらを見ないようにしていたものの、話しながら視界の端に、不快そうな表情で立ち去ろうとするロッタが映った。メルヴィナたちがそれを止めている。

 ベラはさらに続けた。「ちょっと大きめの音量でいくから注意してね。歌詞カードの束、いちばん最後に歌詞がある。超早口だから、ちゃんと用意しました」

 そう言うと、客たちは大急ぎで歌詞カードの束をめくった。メルヴィナたちはもちろん、ヤンカに歌詞カードのことを教えてもらったチェーソンとマルコもだ。

 「ボスと二人、ノリノリで作ったよ。大笑いしながら。でもそんな楽しいのじゃない。詞を見ただけじゃ私がどれだけキレてるかっての、わかんないと思うけど。曲を聴いてくれればわかる。ちなみにこの曲はリク重視でうたうから、こういう奴見つけたら、絶交するまえにここに連れてきて、リクエスト入れてね。何度でもうたうから」そう言って、ベラは機材係に合図した。「んじゃいきます。天使ぶったあの娘へ送る新曲、“Misery Business”」

 いつもより大きな音量でフロアに曲が流れる──彼女は小声で口走った。

 「“あんたのやりかたはフェアじゃない”」



  これは私の目の前で起こったホントの話

  彼女は流れる雲みたいにフワフワした存在だった

  誰も彼女の考えを理解できない

  だから彼もコイビトの前で唇を奪われちゃったのね


  絵の具を混ぜた時みたいに コロコロ変わる彼女の態度

  もしかしたら味も変わるのかも

  きっと最新の流行が欲しかった

  だけど好き勝手させない、私はそんなの許さない


  いいえ、あなたを切り刻んだりしない

  これは私からあなたへの報告よ

  あなたの向かう先に彼はいない

  彼を手に入れたりできないし、彼のコイビトは傷つかない

  あなたじゃ彼に不足なの

  昔の男ですらあなたを待ってはいない

  だってもうこの世にいないから

  そうよ、今度こそあなたは本当に

  ひとりぼっちになっちゃったのよ


  その後はお決まりの行動 彼に好きだって言った

  彼女は流れる雲みたいに掴みどころのない存在

  カワイイお顔はなにをしても許されるって そう思ってる

  行動すべてが彼女は救いようのないビッチだって物語ってるのに


  彼女は勘違いしてる 誰も彼女のモノに手を出してなんてない

  失恋して哀れなお姫様を演じたいだけ

  なにもかも間違ってる それが彼女の仕事だってみんな承知

  言いたいことがあるなら言いなさいよ 私が受けて立つから!


  いいえ、あなたを切り刻んだりしない

  これは私からあなたへの報告よ

  あなたの向かう先に彼はいない

  彼を手に入れたりできないし、彼のコイビトは傷つかない

  あなたじゃ彼に不足なの

  昔の男ですらあなたを待ってはいない

  だってもうこの世にいないから

  そうよ、今度こそあなたは本当に

  ひとりぼっちになっちゃったのよ


  あんたの甘い嘘じゃ彼の心を揺らせなかった

  あんたの偽の涙じゃ彼の心を盗めなかった

  あんたの安いキスじゃ彼らの愛を壊せなかった

  彼らが持ってるのは あんたが一生かかっても手にできないものよ


  いいえ、誰もあんたのゲームに乗ったりしない

  わかってるでしょ、あんたなんかお呼びじゃないのよ


  いいえ、あなたを切り刻んだりしない

  これは私からあなたへの報告よ

  あなたの向かう先に彼はいない

  彼を手に入れたりできないし、彼のコイビトは傷つかない

  あなたじゃ彼に不足なの

  昔の男ですらあなたを待ってはいない

  だってもうこの世にいないから

  そうよ、今度こそあなたは本当に

  ひとりぼっちになっちゃったのよ



 曲が終わったあとの大きな拍手の中、やっとメルヴィナたちから解放されたロッタは涙目で、逃げるように店をあとにしたという。メルヴィナたちは満足感でいっぱいだった。大笑いしていた。マーヴィンは関心と曲に対する引きの半々の感想だったものの、ルースとベンジーはざまあみろと言っていたし、口にはしなかったがピートも同感のようだった。

 マルコとチェーソンはげらげらと笑っていた。あんなセリフを言ったあと、こんな歌を作って大勢の前でひとりでうたってのけたこと、気に入らない女を曲ひとつで精神的に追い詰めたベラのことが相当おかしかったらしい。もう少しいようと提案したものの、アゼルに引きずられるようにして渋々店を出た。

 ヒラリーはといえば、ベラがロッタに向ける曲を書くと言った時、ふたつの感情の板ばさみになっていた。ベラのことだからとんでもないことになりそうだとは予測していたものの、それを控えめにするよう言うことも、ましてや止めることなど、できるはずがなかった。ベラが聞くかどうかはともかく、しようと思えばできたのかもしれないが、聴いてみたい気もしたのだ。

 目に見える以上にベラは怒ってくれていて、不当な暴力を受けたことにあれだけ怒っていたベンジーたちも、彼女と話をしてからはまったくといっていいほど、なにも言わなくなった。ベラがなにをしたのか、なにを話したのかはわからないものの、怒ってくれているというのが純粋に嬉しかった。

 現実にあったことを彼女の視点から書いたこの曲への感想としては、さすがにざまあみろなどとは思えないものの、ロッタに対する同情などはなかった。自分からすればロッタは、ただ自分の恋人にキスをした人物でしかない。それもやはりベラと話したあとから、曲を聴いてからはさらに、ロッタがジョエルにしたことが、他人事のように思えていた。またベラに対する尊敬が大きくなってけっきょく、苦笑うしかなかった。

 その後ベンジーのリクエストでキュカとエルバが“One Kiss From You”をうたい、ベンジーはメルヴィナにキスをした。彼らふたり、お互いに気持ちはあったものの、どちらも好意をあからさまに表に出すタイプではなく、自分から言おうともしないため、まったくといって進展がなかった。先週ベラとヒラリーがうたった時に意味を理解したものの、ジョエルとロッタのことがあったため、ベンジーはタイミングを見失っていた。これで晴れて、ふたりはつきあいはじめた。

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