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R E D - D I S K 0 4  作者: awa
CHAPTER 11 * NO ME WITHOUT YOU
69/198

* Cross Hearts

 月曜。

 寝不足にもかかわらずいつもより少し早い時間に登校し、ベラは自分の教室へと向かった。後方戸口から近い場所にある彼女の席付近には、いつもと同じようにハンナ、テクラ、ササ、ネア、マーシャがいた。ササはベラの、ハンナはそのひとつ前で自分の席に座っていて、テクラはセルジの椅子に、マーシャはニルスの、ネアはハンナの机に腰かけている。

 彼女たちは、いつもベラとハンナのところに集まる。出席番号順になっている席が続いているのはマーシャとテクラのところも同じだ。けれど彼女たちの席は中央列のいちばん前からふたつで、ななめうしろにはティリーとエフィがいて、ダリルとケリーも来ることが多い。それを避ける意味もあってか、話す場所に選ばれるのはいつもベラとハンナのところだ。

 ちなみにベラたちの席に集まったとしても、ササとネアは絶対に、セルジやニルスの席を使わない。なぜかはわからない。場合によっては、ハンナやベラが彼らの席を使い、彼女たちに自分の席に譲ることもある。マーシャとテクラは彼らの席を借りる代わりに、中央前方の自分たちの席を彼らに貸すこともときどきある。今では暗黙の了解のようになっていて、どちらも、席を借りるのにわざわざ許可をとったりはしない。

 「どした。めずらしく早えーな」ササが言った。

 「十分かそこら早いだけで驚いてもらえて光栄です」

 そう言うと、ベラはセルジの机の左側にかかっていた彼の荷物を右へと移動させ、黒い紙袋を出した自分のバックパックもそこに無理やりかけてから、セルジの机を自分の机と並べるように移動させた。

 予告もなく突然されたことだったので、彼の椅子に座っていたテクラは当然のように驚いた。そんな彼女を見たベラは笑いながら紙袋を彼の机の上に置き、教室内にいたセルジとニルスを呼んだ。

 テクラは机についていくよう椅子ごとササの隣に移動し、その紙袋の中を覗いた。好奇心旺盛らしく、許可もなく手を入れる。すぐ興味を示し、マーシャもニルスの机をおりてハンナの隣でそれを観察しにかかった。

 「早えーな。どした」

 セルジがササと同じ言葉を繰り返したので、ハンナたちは笑った。ベラが舌打ちすると、ニルスはわけのわからないフォローをした。

 「ベラだってたまには目覚まし時計の時間、ミスることもあるって」

 ベラとセルジ、ササが同時につっこむ。「ミスかよ」

 「すごい」布袋の中身を勝手に出したテクラが言った。「シルバーアクセサリーがいっぱい」

 マーシャも別の布袋を開けている。「こっちも」

 「うお!?」ニルスが声をあげた。「ちょ、ちょっと待て。これ」

 彼とセルジはベラとテクラの横に並び、アクセサリーを確認した。テクラとマーシャは布袋を次々と開けはじめた。しまいに、ササやハンナも手を出しはじめた。それを、ネアはハンナのうしろから覗きこんでいる。

 ペンダントやブレスレット、ウォレットチェーンなどが、合わせて二十四点ある。

 「ぜんぶ“クロス・ハーツ”」ベラが言う。「どうよこれ」

 ニルスは彼女の予想を遥かに超えた様子で興奮している。「すげえ! 本物!」

 「どしたんだ、これ」セルジが訊いた。

 「もらったの。もう使わねーからあげるって。知り合いに頼んで指輪だったのをペンダントにしてもらったり、ペンダントの紐部分だけ替えたり、まあちょこちょこいじってはいるんだけど」

 ニルスがいくつかのアクセサリーを示す。

 「ここら、十年くらい前のデザインだよな」

 ベラは呆れた。「あんた、金ないから本物買えないとか言ってたわりに詳しいわね」

 「カタログ眺めるのだけが楽しみだからな」なぜか誇らしげだ。

 「デザインはぜんぶ何年か前のだってこと以外、よくわかんないけど。でも本物なことに間違いはない。ひとつずつあげる。おすそわけ」

 「マジで!?」

 「いいのかおい」セルジが言う。「世界的ブランドのもんだぞ」

 「中古だもん。しかもいじってる。磨いたりはしてくれてるけどね。アレンジのほうもかなり値引きしてもらったから、私はほとんど金使ってないし。友達にも許可もらった。煮るなり焼くなり好きにしろって」

 ニルスは真剣な表情をした。「いや、煮るくらいならぜんぶくれ。焼くくらいならぜんぶくれ」

 「やらねーよバカ」

 「男の子っていーよね。こういうの似合う」テクラが言った。

 「男向けブランドだべ」とササ。

 ハンナが訂正する。「女の子でも似合う子はいるよ。ベラとか」

 マーシャは同意した。「男でも似合うのと似合わないの、いると思うけどね」

 「マーシャの彼氏は似合う?」

 「え、どーだろ」

 「なんならひとつ持ってく?」ベラが訊いた。「どう説明するのか考えるの、めんどくさい気もするけど」

 「喜ぶかな」

 ニルスが答える。「シルバーアクセ好きなら喜ぶはず。特に学生で金ない奴。価値がわかんねーんならあげても無駄だとは思うけど。もったいない」

 「訊いてみればいいんじゃない?」ハンナが提案した。「メールか電話でこのアクセサリー知ってるか訊いて、欲しいかって。欲しいって言ったらもらう」

 少し悩んでからベラの了承を得ると、マーシャは彼氏にメールを送った。

 「マジ悩む」セルジが言った。「ひとつに絞れって、ビミョーだ」

 真剣に悩んでいるらしいニルスも同意する。「確かに。みっつくらいまでなら──」

 「それは取りすぎ」と、ベラが言う。「ハンナ、どれか欲しい?」

 「え。絶対似合わないし」

 「うん、似合わない。ついでにネアも似合わない」

 ネアが唇を尖らせる。「わかってるもん」

 ベラは笑った。「ササは微妙だな。どーする、いる?」

 「微妙とか言われたら、いるとか言いづらいわ」

 「まあつけたいもんつければいいって言う派なんだけどね、私は。テクラも微妙だよね。似合うといえば似合うし、普通の女っぽいのでもアリだし」

 「あ、黒ずくめの服着たらアリかも」マーシャが言った。

 ベラも同意する。「だよね。んじゃ、ササとテクラも自分のぶん選ぶとして」セルジとニルスに言う。「ネアとハンナがもう一回いらないって言ったら、二人のぶん、もうひとつずつあげる」

 彼らは声を揃えた。「マジ!?」そして期待を込めた眼で二人を見る。

 彼女たちは顔を見合わせた。

 「──そんな雰囲気、つくられたら」

 つぶやいたハンナに続いてネアも言う。「いらないって言うしかないじゃんね」

 「よっしゃ!」

 後方の戸口からエフィとティリー、ダリルとケリーが入ってきて、ベラを見つけて声をかけた。

 「見て見て」エフィが自分の首元にある小さなペンダントを示す。「昨日ケリーが──」セルジたちを見やる。「あれ、なにしてんの」

 「え、なにそれ。アクセが大量」ティリーが言った。

 ニルスが応じる。「ただのアクセじゃねえよ。高級品だぞ」

 とは言っても、値段はピンからキリまである。彼もそれは承知だが、世界的ブランドで自分が喉から手が出るほど欲しがっているブランドだというだけでもう、かなりの高級品というカテゴリに入れてしまっている。

 「マジ?」

 テクラの背後からダリルも覗く。「もしかして“クロス・ハーツ”?」

 「そうそう」とニルス。「ベラがくれるって」

 ダリルは衝撃を受けた。「マジで!? ひとつ五千だの一万だの三万だの五万だのするもんを!?」

 「中古だしいじってるよ」ベラはそう答えてエフィに訊く。「で、なに」

 「あー、これこれ」彼女は再び首元を示した。「昨日四人で遊んで、ケリーがバイト代入ったからって買ってくれた。可愛くね」

 彼女がつけているのは小さなハート型の、白っぽい宝石のようなものがついた銀色のペンダントだ。

 「へー。可愛い可愛い」という感覚はベラにはよくわからない。

 「うちらも揃い」ティリーの首元にも、同じシリーズと思われるパープルのダイヤ型の宝石のようなものがついたペンダントがある。「あ、あたしはダイヤ型だけど」

 「そんなにカネが欲しいか」

 「なんの話だ」

 「ダイヤはカネだよ。金運アップ。ようするに金が欲しい」ベラは淡々と説明した。「クローバーは幸福。四つ葉のクローバーは愛情・健康・富・名声を表す。リボンなら縁結び、友情恋愛関係なくね。花なら美と幸せ、花にもよるけど。月は成長、ある意味ロマンチスト。誰よりおとぎ話を夢みてる。星は希望、願い事が叶うように。クロスは災いから身を守る。守ってもらった覚えはないから、特に信じてもないけど」

 「いろいろあんだな。クローバーが幸福ってのは聞いたことあるけど、他のにそこまで意味があると思わんかった」

 「ハートは!?」エフィがベラに訊いた。

 「そんなの訊くまでもないでしょ、恋愛よ。愛に飢えてるってこと」

 「飢えてんのか、あたし」

 「まあ恋愛運だけじゃないだろうけどね、正確には“愛情”なはずだから。そういうの信じてハート型のもの持つのはいいけど、持ちすぎると逆に狂うよ。ただの欲深いバカになる。モチーフの意味なんて信じないけど、そっちは信じてる」

 「おお、さすがだな。あたしがハート型増やそうとしたの、見抜いたな」

 「あんたほんと、わかりやすい」

 マーシャは携帯電話をしまった。「返事きた。知ってるって。ややこしい説明も一応した。わかったかはわかんないけど、くれるなら欲しいって」

 「じゃあどーぞ」

 ササがふたつのアクセサリーを示す。「これとこれって、揃い?」

 「違う」ニルスが答えた。「一年違いのデザイン。似てるけどな」

 「おすすめは?」マーシャが訊いた。

 「俺らだって悩んでんのに、おススメなんてわかんねーよ」と、セルジ。

 「じゃあそのふたつ」ベラはササが示したふたつを指した。「持ってけばいいじゃん。お揃い的に」

 「いーの?」

 「いーよ。ここに持ってきたの、半分くらいなんだよね。これは、まあいいかなっていうものたち」

 ダリルがどうしたのかと訊いたので、ベラは説明を繰り返した。

 「こんだけくれたの? っつーかこの倍? 一気に?」

 「友達四人がね。ずっと年上の友達が」

 「マジすげえ。超贅沢」

 「ひとつならあげる。ダリルならたぶん似合うはず」

 彼女も意外に興奮している。「マジ!?」

 「ちょっと待て」ニルスが割りこむ。「先にオレらに選ばせろ」

 「あ、布袋」ベラがマーシャに言った。「ひとつ持ってっていーよ。残りは適当に突っ込むから。でもロッカーに入れて鍵かけときなね、さすがにパクられるのはちょっと」

 彼女が笑う。「わかってる」

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