表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
R E D - D I S K 0 4  作者: awa
CHAPTER 06 * CATCH ME IF YOU CAN
41/198

○ Cuka ( Falling Fast ver.02 / I Am Me )

 翌日、すでにオープンしたブラック・スターの地下一階。

 ベラはID確認のために廊下に立ち、マトヴェイと話をしていた。そこに、昼から店を抜けていたエイブが戻ってきた。

 「数時間で戻ってくるって言ってなかったか?」

 エイブがマトヴェイに答える。「ごめん。思ったより時間が」

 「デートだったのよ」ベラは小声で補足した。

 「は? マジ?」

 「マジなんだなこれが」

 エイブが説明する。「二十五歳。すっかり忘れてたんだけど、このあいだ番号交換したんだよ。ランチに誘われたものの顔を思い出せなくて、そしたらベラが、彼女が写ってる写真を教えてくれた。美人だったから、とりあえず」

 「どれだよ?」

 ベラは廊下の壁にかかっているフレームの中の写真から彼女の姿を探し、彼に教えた。美人だという言葉にはマトヴェイも納得した。

 「っつーかこれあれだ、オレとデトが口説こうとして、ノリ悪い気がしたからすぐやめたやつ」

 「ノリ? べつに普通だったけど。っていうかむしろ──」

 「まさかお前、喰っちゃったの?」

 「そういう話をするなよここで」

 マトヴェイは笑いながらベラの肩に腕を乗せた。彼女に言う。

 「こういう奴のほうが実は危ないからな、気をつけろよ」

 「競争してみたいわよね。同じようなタイプを相手に、デトレフと三人で同時スタート。誰がいちばん最初に相手を喰うか」

 「誰が勝つと思う?」

 「あなたはダメ。闘争心丸出しで失敗する」

 「失礼な奴だな」

 「っていうか、喰った方向で話を進めるな」と、エイブ。「じゃあ問題。レストランを出たあと、彼女は腕を絡めて僕を散歩に誘った。で、散歩に。僕がこうやったら」ベラの腰に両手をまわす。マトヴェイは腕をおろした。「相手はどうしたと思う?」

 マトヴェイが質問を返す。「場所は?」

 「川沿いの公園」

 ベラも彼の腰に手をまわした。

 「昼間でしょ? ぜんぜん明るいわよね。ムードがない気が」

 「確かに。でも酒を飲むのに時間は関係ないだろ」

 「なんか失礼なこと言ってる気がするけど」

 マトヴェイは指を鳴らした。

 「むこうから来た?」

 「残念。はずれ」

 ベラも答える。「じゃああなたががっついた」

 「まさか。顔は近づけたよ、このくらいまで」微笑んでベラに顔を近づける。が、デートの相手がしたような反応を、彼女は微塵も見せない。「やっぱりダメだな。ベラじゃ反応がなさすぎて再現できない」

 「ねえ、なんか失礼なこと言ってる」

 「わかった!」マトヴェイが言った。「顔真っ赤にして、そん時はなんもなかった!」

 笑いながらエイブが腕を解く。

 「そう。で、何事もなかったようにまた歩きだしたら、今度はむこうから来た。そのあとのことは想像に任せる」

 二人は笑った。「悪魔だ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 メインフロア。

 「エルバやキュカはともかく、ヒラリーみたいなのがうたう詞って、お前書けるの?」パッシがベラに訊いた。

 「それは知らない。でもあれでしょ、ふざけなきゃいいんでしょ? あと、殺さなきゃいいんじゃない」

 「基準がおかしいよ」

 「普通の恋愛を観察するしかないと思う。手の早い兄様たちみたいなのを相手にするのじゃなくて、でもあなたたちみたいに落ち着いてるのでもなくて、まだ確信めいたものはない、いちばんうるさい時期の感じのカップル」

 「ちょっとしたことで騒ぐ時期か。いちばんキライそうだな」

 「大嫌い」と、ベラは冷たく答えた。

 「けどまあ、また知らない奴雇うよりはよかったよな、ヒラリーが来てくれて。これで女が四人になった。ディックたちも、半年は新しいの入れなくていいんじゃないかっつってる」

 今日の午後、ヒラリーは親の許可をもらったうえで店に来た。ディックたちは再来週の土曜に彼女の両親を招待することを了承、ヒラリーもそこでデビューする。

 「確かに、知らない人間を入れるよりはいいと思う。彼女はやたら詮索したりしないしね」

 「ジョエルとベンジーはそれを喜ぶと同時に、ちょっとした疑問の迷宮に入ってるみたいだぞ。お前が実は幹部なんじゃないか、みたいな。お前の言いつけどおり、ピートたちにはベラの発案てことでとおしたけど、ベンジーはジョエルが言いだしたって知ってるからな」

 彼女は鼻で笑う。

 「そのまま一生迷ってればいいのよ、疑問と一緒に」

 エルバとヒラリーになだめられながら、キュカは覚悟を決めてステージに立った。拍手の中、彼女が“Falling Fast”の恋落ちバージョンをうたう。



  何度も恋に落ちてきた

  そのたびに傷ついていた

  愛が壊れるのを見てきたから

  そんなものだと諦めていた

  だから自分に言い聞かせたのよ

  深みにはまるべきじゃないって

  だけどあなたに出会った時には

  すべてが手遅れだったの


  みるみる落ちていく

  あなたの愛を求めて

  流れに逆らえない

  夢中になってる

  知ってほしい

  今私がどんなふうに感じてるか

  あなたに一目会った瞬間から

  私は恋に落ちている

  みるみる落ちているのよ


  色々な恋の形を知っているのなら

  この気持ちを止める方法を教えて

  あなたを独占してしまいたい

  心の片隅ではそんなふうに考えてる

  また傷ついてしまうかしら

  あなたも同じ気持ちならと願うけど

  私が地に落ちてしまう前に

  この恋をあなたに救ってもらいたい


  みるみる落ちていく

  ただあなたの愛を求めて

  だめ 流れに逆らえない

  夢中になってる

  知ってほしい

  今私がどんなふうに感じてるか

  だってあなたに一目会った瞬間から

  私は恋に落ちている

  みるみる落ちているのよ


  あなたの瞳 あなたの声

  あなたの手 あなたの笑顔

  あなたのすべてを知りたいの

  私の瞳を見て あなたの声を聞いて

  私の手に触れて 私を手に入れて

  あなたに私のすべてを知ってほしい


  みるみる落ちていく

  あなたの愛を求めて

  流れに逆らえない

  夢中になってる

  知ってほしい

  今私がどんなふうに感じてるか

  あなたに一目会った瞬間から

  私は恋に落ちている

  みるみる落ちているのよ



 「感情こもってるな」キュカに送られる拍手の中、パッシが小声でベラに言った。「お前の必至のキャラ作りを真似てるのか、それともマジに誰かに惚れてんのか」

 ベラにはどうでもよかった。「こんな詞を書かされたと思ったらイライラするわ」

 「天才はつらいねえ」

 音楽が怒り交じりの自己主張曲、“I Am Me”へと変わる。



  彼女は、私が欲しくてたまらないものをすべて持ってる

  悪びれることなくそれを見せびらかす

  私は卑屈

  彼女は、ただ立っているだけであなたを手に入れられる

  私は汚れた窓の向こうからそれを見てる

  彼女はまがいもの


  決して羨んだりしない

  私は私だから

  誰かのために仮面を被ったりしない

  あなたのためにだって

  誰かのために変わたりしないわ

  たとえそれがあなたのためだとしても


  あなたは、心の底では彼女を求めてるのに

  なぜか私のところに来る

  あなたは嘘つき

  あなたは、私が彼女のようになることを望んでる

  私に私以上のことを求める

  私は応えない


  他のものになったりしないわ

  私は私でしかないんだから


  決して羨んだりしない

  私は私だから

  誰かのために仮面を被ったりしない

  あなたのためにだって

  私は変わらないわ

  私は変わらない

  他のものになったりしないわ

  他のものになったりしない

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ