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手形

作者: 夕暮れ散歩

何が見えるって、私には見えません。こんな小さい子供なら、先入観無く見ることができるのでしょうか。

子供がまだ

よちよち歩きがやっとの頃に住んでいた部屋


駅も近く便利も良く

新しいし綺麗だったので気に入っていたのだが



居間からの外の眺めは

駅のホーム



ベランダのサッシ戸を閉めてしまえば


電車の音など気にならないほど静かになるし




ホームは

見えないようにしっかりと壁で囲ってあり

覗かれる事はないから良いのだが



何ヵ所かに

曇りガラスの小さな窓のようなものが付いていて



その窓のようなものに


乗客であろう

時々映る人影が妙に目に留まり


毎度毎度

軽く驚く感覚は

いつまでたっても慣れる事はなかった




こちらは三階

駅のホームはその高さまで草木が生い茂り

夜の闇に包まれる時間帯などは

少々不気味でもある



玄関側と裏側では

まるで明暗の別れた世界だった




裏側は

お世辞にも景色が良いとは言えない




だが子供は


良いとも言えない景色を見るために


ベランダ側に置いてあったソファーに乗っかり


サッシ戸の

ガラスにベタベタと手の跡を残していた





ある夜


その頃我が家に居候していた後輩が



「またまた小さな手形がついてますよ

拭いときますね」


と笑いながら

雑巾を取りに行ったので


私は

「サンキュー 悪いね~」

とのんびりテレビに見いっていた


すると後輩は


「なんか…落ちないんですけど」


と言いながら

ガラスをゴシゴシしている



なんだろうと思い

よく見ると



その手形は

子供がソファーに乗って背伸びをしても


‘とても届きそうにない位置’


にあったので

私は



「背もたれに上ったのかしら」


と呟いてからハッとした


同時に後輩も気づいた



それは


‘うちの子供の手より ひと回りほど大きい’

手形だった




そして

もうひとつ 気づいた




その手形は







「………外側だ」







あの部屋はいまどうなっているのでしょうか。今でも同じように付くのかな、手形。

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