第7話:疑い
蔵に向かった梅と陽ノ丸はもう一回蔵の中を調べてみることにした。
「やっぱり・・ないか・・・」
陽ノ丸は落胆の表情を見せたが、梅は「絶対にある」と確信しているようで、何度も同じ所を探した。
「何故、同じ所ばかりを探しているのだ・・・」
「何故かって?同じ所を探して、“無い”を確認する。そうすれば、残ったところを探せば絶対にあるわけ。だから同じところで“無い”を確認しているの。」
陽ノ丸は「なるほど」といった表情で、もう一度“無い”を確認しながら宝珠を捜した。しかし宝珠はその姿を見せることは無く、時は刻一刻と過ぎていった。
「よし、次は奥のほうを頼む。ものを倒して壊さないように慎重に頼むぞ。」
「はいっ!」
梅は梯子を使って上へ上へと登っていった。しかし高所恐怖症の梅はどうもなれない様子で少しづつ梯子を掴んでいった。
やがて、小さな襖のところでその梯子は終わった。
「この襖でいいんですよね〜?」
「その襖だ。中には先祖代々伝わる物も入っているから、気をつけて探るんだぞ。」
「はい!」
そう言うと、梅はその暗闇の中へ、ゆっくりと入っていった。
「やっぱり想像してたとおりだ〜。埃が舞ってるよ〜。やっぱりこんな仕事請けるんじゃなかった〜。」
梅は、そう言って、さっき陽ノ丸がそうだった様に落胆の表情を見せた。しかし、「このままで終わる私じゃない。」と意気込んで、「絶対に見つけ出してやる。」という決意を胸に誓ったが、それでもやっぱり、宝珠の姿は無かった。
「無い〜。こんなに探しても無いんだから最初から無かったんじゃないの〜?」
梅は諦めて梯子を降りていった。その姿を見た陽ノ丸は、はじめ「見つかってよかった。」という表情を見せていたが、梅の表情を見て、「やっぱりなかったのか・・・」という表情をした。
「無かったんですけど。こんなに探しても無いんだから最初から無かったんじゃないんですか〜?」と、さっきの時と全く同じトーンで陽ノ丸に問いた。
「まさか・・・そんなはずは・・・」
と、その時に陽ノ丸のなかで何かが閃いた。
「さては、お前が隠しているのだろう。」
梅はそんなはずが無いと反論したが陽ノ丸は疑いの目を隠さない。梅と陽ノ丸の間に、微妙な空気が流れた。