第2話:丸太小屋
気がつくと、丸太だけで作ったような部屋にいた。何か、塊のようなものがあちこちに散乱している。まるで、からくり屋敷に来てしまったかのようだ。っと、その時だった。
「やっと起きたか。心配したぞ。」
なんだこいつ!と言わんばかりに、梅は目を見開いた。その目の前には顔が真っ赤な人型の物体が立っていた。梅は殆どの人がそうするように足をばたつかせ、後ろを向いて丸くなった。
「そんなに怯えなくても・・・」そうは言ってみるが、起きてすぐに前に見たこともない者が立っているのだ。怯えないわけがない。しかし、梅はそのとき不思議と、この者を受け入れようとするもう一人の自分の心を知った。もしかしたら昔一度会ったことが・・・などと言うことを心の奥深くの気持ちが諭すのである。梅は恐る恐る後ろに向きなおした。
「あなたは・・・だれ?」
「ああ、私は陽の鬼の長の、陽ノ丸だ。危ういところだったな。あのままでは君の命も危なかったのだぞ。」そのとき、梅の頭の中に、さっき起こったパノラマが早送りのように、一瞬のうちによぎった。
「あっあの時・・・そ、そうだ。村のおばさんは・・・大丈夫なの?」
「残念だが、村人の殆どの者は家から出ることを強いられることになっている。もちろん・・・君もだが・・・。」
梅は絶句した。絶句せざるを得なかった。しかし、なぜか泪は流れ落ちなかった。普段は活発な性格ではないが、このときだけは、好奇心でつぶれそうなほど、ワクワクした気持ちだった。と同時に、この者が鬼なんじゃないかと思い始めた。