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現代イージス艦〈みらい〉、星海戦争へ ― AIと艦長が未来を変える物語  作者: ねこあし
第1章 星海転移編―星海に現れた鋼鉄の来訪者

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第7話 影の迷路 ― 未来を蝕む深淵

〈みらい〉は揺らぎ核の手前で渦巻く“影の領域”へ突入した。


 星海の光は弱まり、代わりに黒い霧と歪んだ線が視界を覆う。

 

 まるで“未来がひしゃげたまま固まった世界”の中を航行しているような錯覚すら覚えた。


「艦長、影密度が急上昇! 前方二百メートルの範囲、未来潮流が完全に断絶しています!」


 ユイの声が硬い。


「断絶……? この空間、未来が存在しないってこと?」


 レイリアが凍りついた声で問う。


「はい。ここでは“数秒先”すら確定しません。航行の予測アルゴリズムが使えません……!」


 ユイのホログラム手が震え、艦内の複数のパネルが赤色に点滅する。


「艦長……こんな中を進むのは、本当に――」


「ユイ」


 遼は低く、しかし穏やかな声で呼び止める。


 ユイは息を呑み、遼を見つめた。


「未来が見えないなら……今の判断で進むだけだ」


 その言葉に、ユイは胸の奥が熱くなるのを感じた。


「……はい、艦長。わたしが全力で支えます」


 遼は静かに頷き、舵を握り直した。


「――進むぞ。影がどう来ようと、俺たちが未来を選ぶ」


***


 影の中は、予想以上に“異様”だった。


 黒い霧は形を変え、触手のように伸びてきたり、突然海のように波打って押し寄せたり、時には“壁”のように未来を塞いでくる。


「艦長! 左舷二十度、影の収束点! 逸れてください!」


「了解だ!」


 機体を大きく傾けると、霧が刃のように切り裂いていく。


「……っ危なかった!」


 レイリアが緊張で顔を青くする。


「ユイ、この影……ただの障害物じゃない。こっちの動きを読んでる」


 遼は舵を切りながら気づいた。


「はい、艦長。影は“未来を喰う”存在。本質は“未来予測”。わたしたちの挙動を“先回り”しようとしているようです」


「未来を奪うだけじゃなく、未来を『決めさせない』のね……」


 レイリアの声が震える。


「だが――」


 遼は深く息を吸い込んだ。


「未来を読むだけじゃ、本当の“航路”は決められない」


「艦長……?」


「予測ってのはな、海ではすぐに裏切られるもんだ。潮の流れは変わる。風も波も、急に気まぐれを起こす」


 遼は微かに笑った。


「だからこそ、“あり得ない手”が一番強い」


 ユイがハッと顔を上げた。


「艦長……予測不能の操作……!」


「行くぞ!」


 遼は舵を逆方向へ思い切り倒した。


「えっ、そっち!? 艦長、そこは影密度が――」


「高いほど、影は自信満々で読みやすい。その裏をかく!」


〈みらい〉は影の濃い領域へ飛び込み、黒い霧の壁が迫る。


「ユイ、フィールド最大!」


「最大出力……いけます!」


「レイリア、衝撃に備えろ!」


「了解ッ!」


 黒い壁に激突――


 する直前、潮流がわずかに乱れ、影の“未来読み”が狂った。


〈みらい〉は影の壁を“滑るように”突破した。


「……抜けた……!?」


「抜けたわね!? 本当に!!」


 レイリアが驚愕し、ユイが思わず口元を押さえる。


 遼は息を吐きながら、静かに言った。


「未来を読まれたら、読ませなきゃいい。相手が計算できない手を打てば、影は後手に回る」


 ユイは目を潤ませながら微笑む。


「……艦長、本当に……あなたは……」


「ただの海の男だよ」


 遼は照れたように言う。


「未来が変わり続ける海をずっと相手にしてきたんだ。――こういうのは得意なんだよ」


 レイリアも微笑んだ。


「あなたが艦長でよかったって、本当に思うわ」


***


 影の迷路を抜け、〈みらい〉は揺らぎ核の直前へ到達した。


 だが――


「艦長! 影、本体の“影核”反応が出現! 急速接近中!」


 ユイが叫ぶ。


 闇色の巨体が、霧の奥からゆっくりと姿を現した。


 無数の触手。


 穴のような中心。


 光を、時間を、未来をすべて吸い込んでゆく“虚の巨獣”。


「……来たか」


 遼は舵を握り直した。


「これが“影の本体に近い部分”か?」


「はい、艦長……端末の比じゃありません。存在位相の厚みが違います……!」


 レイリアが息を呑む。


「あれ、揺らぎ核を狙ってる……!」


 影が揺らぎ核へ伸びていく。


「艦長……!」


 ユイの声が震えた。


「追いつけるか?」


「……追いつきます。〈みらい〉なら」


 ユイの瞳が強く輝く。


「艦長が舵を取れば、必ず……!」


 遼は一度だけ深呼吸した。


「なら行く。――揺らぎ核は俺たちが守る」


〈みらい〉は光を纏い、影核へ一直線に突進する。


 未来を守る決戦の幕が上がった。

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