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現代イージス艦〈みらい〉、星海戦争へ ― AIと艦長が未来を変える物語  作者: ねこあし
第1章 星海転移編―星海に現れた鋼鉄の来訪者

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第12話 星環戦術会議 ― 影の正体と“未来の鍵”

 揺らぎ核を守る初戦から数時間。


〈みらい〉は〈アウロラ〉の母港区画へ帰投し、艦隊旗艦内部の“戦術会議室”へ招かれていた。


 室内は半円状のホールで、中央に星海の潮流モデルが浮かんでいる。


 その周囲には星環連合の高官らしき存在が六名――皆が人型だが、人間とはどこか違う気配を放っていた。


 遼、ユイ、レイリアの三人は円卓の対面に案内され、正面には調整官アレイシアが立つ。


「まずは、揺らぎ核の防衛。艦長、あなたたちのおかげで第一次侵蝕を防ぐことができました」


「礼はいい。……だが、あれは“一時しのぎ”だろ」


 遼は淡々と返す。


 アレイシアは静かに頷いた。


「はい。影は完全には退きませんでした。


 むしろ――これからが本当の脅威です」


 潮流モデルが黒く染まり、中心に巨大な“影の穴”が現れた。


「これが……“本体の影”?」


 レイリアの声が震える。


「正確には“影の触媒”。本体そのものは潮流の外層に存在しています」


 アレイシアが説明する。


「外層……?」


 遼が眉をひそめる。


「はい。未来潮流の“外側”――未来として認識できない領域。そこに潜む存在が“時間喰らい”です」


 ユイが小さく息を呑んだ。


「……つまり、私たちが観測できた影は“単なる手”……?」


「そうです。時間喰らい本体は観測すらできません。観測可能なのは“侵蝕に使われた影”――いわば、その意志の残滓ざんしです」


「残滓であれだけ強かったってことは……本体はどれだけ……」


 レイリアが口元を押さえる。


 遼は冷静だった。


「目的は何だ? 本体は何を望んでいる?」


 アレイシアは胸に手を当て、言葉を選ぶように続けた。


「――“絶対未来”です」


 ユイが目を見開く。


「絶対未来……可能性がひとつだけの世界……?」


「はい。そして、それは“時間喰らい以外の全生命の終焉”を意味します。選択する自由が奪われ、ただ一つの流れへ収束した未来。世界は死に、潮流は凍結し、星海は消滅します」


「だから固定化するのね……未来をひとつに縛り上げるために」


 レイリアが呟く。


 遼は腕を組み、アレイシアをまっすぐに見据えた。


「……それだけじゃないな?」


 アレイシアは一瞬だけ言葉を詰まらせた。


「艦長……なぜそう思われますか?」


「敵が“わざわざ揺らぎ核を狙う理由”が説明になってねぇ」


 会議室にいた星環連合の高官たちが、ざわりと色めき立つ。


 遼は続けた。


「潮流を固定したいなら、もっと外側からじわじわ侵蝕すりゃいい。だが影は“核”を狙った。……核に近づけば星海全体が一気に崩れる」


「……艦長、まさか――」


 ユイが目を丸くする。


「ああ。揺らぎ核の奥に、影が欲しい“何か”がある。違うか?」


 数秒の沈黙。


 アレイシアは静かに口を開いた。


「さすがは艦長……。星海に来てわずかな時間で、核心へ辿り着かれました」


「言え。核に何がある?」


 アレイシアが掌を向けると、潮流モデルの中心が光り――

 

一つの“粒”が浮かび上がった。


 それは小さな光の欠片。


 だが近づくほどに脈動を増し、まるで心臓の鼓動のように震える。


「これは……?」


「“未来の鍵(アクセス・キー)”――星海の全潮流の根源コードです」


 ユイの声が震えた。


「未来の……根源……」


「はい。このアクセス・キーを手に入れれば、潮流の書き換えが可能になります」


 レイリアは声を失った。


「書き換えって……つまり、未来そのものを……?」


「はい。星海のすべての未来を、ひとつに固定できます」


 遼は小さく息を吐いた。


「……影が欲しいのはそれか」


 アレイシアは頷く。


「揺らぎ核を破壊するためではなく――“鍵”へ直接アクセスするために影は核へ迫りました」


 ユイが震える声で続けた。


「もし鍵が奪われれば……?」


「星海は即座に完全固定化されます」


 アレイシアの声は限りなく静かだった。


「あなたたちの世界も、あなたたち自身も――“ひとつだけの未来”へ強制的に縛られます」


 レイリアは椅子の背に体を預け、大きく息を吸った。


「……そんなの、絶対に許せないわ」


「もちろんだ」


 遼の声は揺れなかった。


「アレイシア。“鍵”の保全は俺たちに任せる。影の本体がどこにいようが、核まで辿り着かせない」


「艦長……本気で?」


 ユイが遼を見る。


 遼は迷わず頷いた。


「未来を奪われて困るのは、星海の連中だけじゃない。――俺たちだ。俺たちの未来は、俺たちで守る」


 アレイシアは深く頭を下げた。


「……橘艦長。星環連合はあなたたちを“潮流守護者(フロウ・ガーディアン)”として正式に認定します。揺らぎ核の防衛戦は、次の段階へ移行します」


「次の段階?」


 遼が聞き返した。


 アレイシアは静かに答える。


「――影の本体を誘き出し、“鍵”への侵入経路を断つこと。そのために、あなたたち〈みらい〉が必要です」


 ユイが息を呑み、


 レイリアは拳を握りしめ、


 遼はゆっくりと微笑んだ。


「上等だ。やることがハッキリした。――未来を守る戦い、始めよう」


 潮流モデルが輝き、会議室の天井に星海の光が揺らめいた。


 こうして〈みらい〉とその乗員たちは、星海全体を救うための“核心任務”へ踏み出すのだった。

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