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現代イージス艦〈みらい〉、星海戦争へ ― AIと艦長が未来を変える物語  作者: ねこあし
第1章 星海転移編―星海に現れた鋼鉄の来訪者

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第10話 揺らぎ核内部 ― 星海の“心臓”で見た未来

 光柱――揺らぎ核の中心部は、外側から見たどんな光景も凌駕していた。


〈みらい〉が核の境界を越えた瞬間、艦橋の窓が白く染まり、まるで宇宙でも海でもない“純粋な光の世界”へと突入していた。


「……これが……揺らぎ核の内部……?」


 レイリアが声を震わせる。


 窓の外には、星の破片のような光粒子が漂い、幾層にも折り重なる光の線が網のように織り上げられている。


 そのひとつひとつが未来潮流の“糸”。


 まるで宇宙の背骨ともいえる巨大な構造が、眼前に広がっていた。


「艦長……解析が追いつきません……」


 ユイが言葉にならない息を吐く。


「ここは、物質空間じゃ……ありません。未来潮流、願い、意思、記憶……それらが、“一つの場所”として統合されています」


「つまり……未来そのものの中を進んでる、ってことか?」


「はい、艦長。揺らぎ核の中心は“未来が生まれる場”。世界が次に踏み出す一歩を決める場所です」


 遼は息を呑んだ。


 それがどれほど危険な場所なのか直感で理解できる。


 未来を紡ぐ糸を一歩でも誤れば――


 星海全体の未来すら変わりかねない。


「艦長」


 ユイが遼の袖をつかんだ。


「……影です。追ってきています」


 スクリーンに黒い線が現れた。


 まるで巨大な影の“舌”が、光の糸を這うようにこちらへ伸びてくる。


「ここまで入り込んでくるのか……」


 レイリアの声は震えていた。


「艦長……揺らぎ核が完全に侵蝕されるまで、残り……六分三十秒です」


 ユイが言う。


「よし。ユイ、核中心の“揺らぎの座”までの最短航路を出せ」


「最短航路……?」


 レイリアが怪訝そうに眉を上げる。


「揺らぎ核を守る“鍵”だよ」


 遼は静かに言った。


「星環連合の調整官アレイシアが言っていた。揺らぎ核の奥に、“潮流の安定座標”があるってな」


 ユイが息を吸った。


「……揺らぎの座。あれは、“未来の選択権”を司る場所……!」


「そこを押さえれば、影の侵蝕を遮断できるんだろ?」


「はい、艦長。ただし……」


 ユイは唇をかんだ。


「そこに触れるのは……人でも、AIでもない。“意思”だけです」


「意思?」


 レイリアが目を見開く。


「艦長……あなたしかアクセスできません」


 遼は一瞬だけ驚いたが、すぐに笑った。


「なるほど。船の操舵を握るのは“意思”だ。なら、俺が行く」


「艦長――!」


 ユイの声が震えた。


「ユイ、心配すんな。行って戻るだけだ」


 遼は肩を軽く叩く。


「艦の中にいろ。お前たちの役目は“影を引き離す”ことだ」


「……艦長を一人でなんて……!」


「一人じゃない。〈みらい〉が動いてくれる」


 遼はやわらかく微笑んだ。


「それに……未来は誰かに託すもんじゃない。自分で掴んでこその“未来”だ」


 その言葉に、ユイは――泣きそうな顔で、しかし確かな誇りを宿した瞳で頷いた。


「……はい、艦長。わたしは……あなたの帰還を1秒も疑いません」


 レイリアも立ち上がる。


「私も、艦長の背中を守る。戻ってきてよ? 本気で怒るから」


「分かった分かった」


 遼は照れたように笑い、艦橋中央――揺らぎ核が示す“光の座標”へ足を踏み出した。


***


 光が遼の身体を包み、意識が一瞬だけ宙へ投げ出される。


 世界が反転し、上下左右という概念が溶け、遼は“歩く”のではなく“未来へ踏み出す”という奇妙な感覚を覚えた。


 そして――


『――橘遼』


 声がした。


 光が集まり、人の形を作る。


 それはユイにも似ている。


 だが、機械でもAIでもない。


 未来そのものが“人の形をとった”ような存在。


『あなたの未来――どうする?』


「どうする、とは?」


 遼は問い返す。


『あなたは多くの未来を選び、多くを救った。しかし……あなたはまだ迷っている』


 迷い――


 遼の胸にわずかな痛みが走った。


「迷いってのは……生きてる証拠だろ」


 遼は、静かに言い返す。


「俺は犠牲を選ばないって決めた。迷いながらでも、前に進む。その選択を、後悔したことはない」


 光の存在がわずかに震えた。


『ならば……あなたに問う。――“無数の未来”を前にしても、その意思を貫けるか?』


「貫けるさ」


 遼は迷いなく言った。


「俺は艦長だ。進む航路を決めるのが仕事だ。どんな未来でも、誰も失わない航路を探す。それが俺だ」


 光が強まり、揺らぎ核の中心が鼓動する。


『その答え――確かに受け取った』


『橘遼。あなたに“未来の鍵”を授ける』


 光が遼へ流れ込み、胸の奥に熱が宿る。


 次の瞬間――揺らぎ核全体が震えた。


***


 艦橋ではユイが叫んでいた。


「艦長の生命反応、安定しています!揺らぎ核内の未来位相が……変化を始めています!」


「影は?」


 レイリアが身を乗り出す。


「影が――後退しています!未来の固定化が解除されていく……!」


 ユイの瞳が驚愕と歓喜でふるえていた。


「艦長が……揺らぎの座を制御しています!」


 星海が震え、影が唸り――


 揺らぎ核の光が、世界に広がっていった。


 そして遼は、光の中心から歩み出てきた。


「……戻ったぞ」


 その声を聞いた瞬間、ユイは涙をこぼした。


「……おかえりなさい、艦長」


 レイリアも静かに微笑む。


「本当に……帰ってきてくれたんだね」


 遼は二人へ頷くと、艦橋全体を見渡した。


「よし――ここから反撃だ。未来を喰おうってのなら……こっちだって黙っていない」


 星海の中心で、〈みらい〉は再び航路を定めた。


 未来を守るために。

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