都市
「私の勝ちだ」
丘の頂上でユキアが言った。
どっちが頂上まで早くつけるのかという賭けをして、二人で走ってきた。
「はあ、はあ」
中々息が落ち着かないし、汗もだらだらかいていた。ひんやりとした風が涼しくて気持ちがいい。
「くそ、俺の負けかよ」
思わず舌打ちする。
「ふふ。ミドリにはジュースを奢ってもらわないとな」
「仕方ないな」
足の速さに自信はあったがユキアにはかなわなかった。
「じゃあ後で買ってやるよ」
「ああ。そうしてくれ」
そしてユキアが丘から見える景色を眺める。
変わり果てた都市の残骸が広がっていた。
中心部のビル群はどれも倒壊し、ガラスはすべて割れ、今では樹木に覆われ緑に覆われ始めている。
道路を車が埋め尽くしている。通信が止まった際自動運転車は全て止まりあちこちで事故を巻き起こした。
俺たちが小さい時は健在だったこの都市も、国中の都市と一緒で滅んでしまっている。
「懐かしいな」
ユキアがそんなことを呟く。
「そうか? もううんざりするくらい見ただろ」
「まあな。とはいえ、私はいつも、この街を見ると懐かしさを感じるよ。あのビルの一つで毎日徹夜して働いたものだ」
「そんな誇らしいものなのかよそれ」
俺の方はと言えば、嫌な出来事が多かったから好きじゃない景色だ。
誕生日を祝うために家族でファミレスに行ったら、そのまま世界が反転してしまった。
俺たちは暫くこの光景を見ていた。
「そろそろシェルターに戻らないか?」
「ああ、いいぞ」
ユキアは頷く。
そして二人で歩いてシェルターに戻ろうとする。
「誰か!」
その声で俺たちは足を止める。
「都市の方からだ」
「いくぞ」
「おいユキア!」
ユキアが走り出し、俺も彼女についていく。
そこには蹲る女の子がいた。
他の掌編、短編は作者ページへ。気に入ったらブクマ/評価をお願いします。




