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宵闇に奏でる―NOCTIS STORY  作者: 夜月黎


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奏と陽

初めて陽と会った時、奏は苦手なタイプだと思った。


「奏もバンドやってんだって?俺もなんだよー!!」


初対面で名前を呼び捨て。

元気いっぱいに話しかけられて、奏は面食らってしまった。


「……ああ、そうなんだ」


奏はその場しのぎで適当に返した。

だが、陽は空気を読まずにぐいぐいと距離を縮めてきた。


「一緒に音合わせようよ!」


「今度ね……」


そう言って適当にあしらった。

しかし、陽は毎日のように奏の前に現れた。


「今日は暇!?」


「……いや」


そんなやりとりを一週間は続けただろうか。

ついに面倒くさくなった奏は、一度だけと思い、陽がいるというスタジオに行った。


そこで、奏は奇跡を見た。


直前までは、確かにただの面倒くさい奴だった。

それが、ドラムスティックを持った瞬間に雰囲気が変わり、ドラムを叩き始めた陽は、最早、別人だった。


荒々しく、鋭いリズムが奏を貫いた。


気づけば、陽は奏のバンド――NOCTISの後ろでドラムを叩いていた。




そんなことを思い出して、奏は陽を見た。

相変わらず、賑やかだ。


「……陽、うるさい」


ソファに座ったまま、後からから声をかける。


きょとん、とした陽が振り返る。


「ごめん、ごめん」


軽く謝って、陽は奏の隣に座った。


「奏は今日は不機嫌さん?」


奏はちょっと眉をひそめて陽を見る。


「別に……お前がうるさすぎなんだよ」


あはは、と笑って陽は奏の背中をばんばんと叩く。


「……いってーよ」


憮然として奏は陽に返す。


「ほら、奏も練習しようぜ。次のツアー、もうすぐだよ!」


そう促されて奏は立ち上がり、マイクの前に立つ。


うるさくて、面倒くさくて、距離感ゼロだけど、陽が後ろでリズムを叩いてくれるから、奏は前で安心して歌える。


今日も後からはいつものビートが聞こえ始めた。


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