リーダーは誰?
「今日はリーダーを決めよう」
いつものスタジオ。
練習後に唐突に朔が言った。
全員が朔の方を見る。
「んなもん、朔でいい」
「俺も朔がいいと思うよ」
「俺も俺も!朔がいいと思う!!」
しかし、朔は眉間にシワを寄せた。
「いや、俺は前に立つのは向かない」
即座に否定する。
「……朔はもう、誰か考えてるみたいだね」
凪が静かに尋ねる。
ゆっくりと頷いて朔は奏を見た。
つられて、凪、最後に陽も奏に視線を向ける。
「……は?」
三人の視線を浴びる奏は思い切り顔をしかめる。
「俺?」
右手で額を抑えて奏が盛大な溜め息を吐く。
「嫌に決まってんだろ」
当然の答えだ。
「奏、前に立ってんじゃん!」
突如、思い付いたように陽がぽんっと手を叩く。
「いや、それは物理的にだろ……」
呆れ返った奏が陽に向かって言う。
少し考え込んでいた凪がふっと顔をあげて、奏の目を見た。
にっこりと微笑む姿は、天使のようだ。
「俺も、奏がいいと思う」
「お前っ……さっき、朔の時も同じこと言ってたぞ」
うーん、と凪は続ける。
「やっぱり、『NOCTIS』は奏に惹かれた人間が集まってるからね」
正面向かって言われて、奏は少し居心地悪そうに視線を逸らした。
いじけたように、口を歪ませている。
それが照れ隠しだと、この場にいる誰もが知っていた。
「俺もそう思う。NOCTISは奏の色が強い」
朔も同意する。
「賛成っ!!」
陽も同意する。
再び、奏は三人の視線を浴びる。
「……っ!」
言葉に詰まる。
「俺は……やらないぞ」
ぶっきらぼうに奏が吐き捨てる。
「奏は名前だけでいい」
朔が提案する。
「細々した調整は俺がやる」
その言葉に凪がふふっと笑う。
「奏にはそれは無理だね」
「うっさい」
すぐに奏が噛みつく。
凪は楽しそうに笑い続けている。
「奏は前に立ってくれるだけで、いい。俺達はそれについていく」
もう一度、朔が言う。
じっと、奏の瞳を見つめる。
奏も目を細めて、朔の瞳を見返した。
揺るがない、瞳。
――言い出したら、聞かねぇんだよ、こいつは。
少しの沈黙の後、奏は諦めたように息を吐いた。
「……俺はホントに何もやらねーぞ?」
「それでいい」
「俺も手伝う!!」
そう言った陽は朔に速攻、
「いらん」
と返された。
「それでいいと思うよ」
凪も同意する。
観念したように体の力を抜いて、ソファにもたれかかり、奏は天井を見た。
「……勝手にしろ……」
「決まりだな」
「決まりだね」
「奏がリーダー♪♪」
三人はそれぞれに納得している。
納得してないのは、奏だけだった。
「……仕方ねぇかぁ……」
誰にも聞こえないように口元だけで呟く。
その顔には僅かに笑みが浮かんでいた。




