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宵闇に奏でる―NOCTIS STORY  作者: 夜月黎


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33/33

酒とNOCTIS、少しの本音

温泉の後は、部屋で食事の時間だ。


既に部屋に運ばれた豪華な膳に、お酒。

早速陽がグラスを高々とあげる。


「おっつかれさまーっっ」


ひときわ元気な陽。


朔が全員と律儀にグラスを合わせる。

凪も控えめに全員とグラスを合わせ、面倒くさそうに奏はグラスをあげた。


「いやー、十年、頑張ったねっ!!」


豪快にひとくち目を飲んだ陽が大声で言う。

軽く溜め息をついた朔が陽をたしなめる。


「まだ終わってないからな、ツアー」


「わかってるってぇ!!」


げらげら笑う陽。

朔は既に渋い顔だ。


凪がひょいっと自分の膳から箸で肉を取り、隣の奏の皿にのせる。

次に刺し身も半分、奏の皿に移す。


無言で奏は凪を見た。


「食べるでしょ?」


笑顔で返す凪。


「食うけど……」


そう言って食べる。

それを見ていた陽が凪を指差す。


「凪ぃー、奏ばっかりずるいっ」


たぶん、もう酔っ払っている。

目がだいぶあやしい。


くすっと笑って凪は天ぷらを陽の皿に移す。


「陽には、天ぷらあげるから」


「ありがとぉー」


そう言って陽は天ぷらを食べ始める。

凪は更に自分の前の膳を見回して、


「朔もこれ食べない?」


小鉢を差し出すと朔は素直に受け取る。


「もらう。ありがとう」


いくつか小鉢を渡して、それからやっと食べ始める。


「ホント、お前食わねぇのな」


奏が凪の膳を横目で見ながら言う。

ふふっと凪が笑う。


「その分、甘いもの食べてる」


そう答えながらグラスのビールを飲み干し、次はおちょこに日本酒を注ぐ。


「……酒もだろ?」


少し呆れ顔で奏がつけ足すと、凪はにこっと微笑んだ。


「凪はぁ、もっと食えぇーっ」


陽が大声をあげる。

即、朔が陽の頭を後ろからはたく。


「陽、少し声を抑えろ」


「ってぇー」


はたかれた頭を抑え、陽が朔を恨めしげに見る。

朔はそんなことお構いなしに食事を進める。


「お前、ホント酒弱いのな」


奏がグラスを傾けながら、陽を見る。


「うるせーっ、俺は酔っ払ってないっ」


そう反論する陽を見て、奏は笑う。


「酔っ払ってないって言うヤツほど、酔っ払ってんのな」


「陽はその典型だな」


魚を綺麗にほぐしながら、朔が陽を見る。


「……俺、酔っ払ってないって」


しつこく言う陽。


「陽はいい加減、認めた方がいいよ?」


にっこり笑って陽を見る凪。


「……」


黙る陽。


「凪、お前何杯目だ?」


ふと朔が凪の手元を見る。


「んー?まだ二本目?」


ぶはっと陽が吹き出す。


「二本目ってぇ、それ、日本酒だろっ?」


「そうだけど」


平然と凪は答える。


「お前は相変わらず強すぎ」


ぼそっと奏。


「え?普通じゃない?」


いつもと変わらぬ顔で凪はしれっと答える。


「普通じゃねぇ」


「普通じゃない」


奏と朔の声が重なる。

ふふっと凪が笑う。


「奏と朔、仲良しだね」


奏と朔は顔を見合わせる。


「何言ってんの?お前」


奏が顔を引きつらせてる。


「いいじゃん、いいじゃん!!NOCTISのはじまりの二人じゃん!!」


陽が手を叩いて喜んでる。

面倒くさそうに奏は陽を見た。


「うるさい」


顔をしかめる。


「だってさぁ、朔が奏手懐けなかったら、NOCTISになんなかったじゃん!!」


「手懐ける、言うなっ」


グラスを飲み干して、奏が突っ込む。


「間違いないな」


ふっと笑って朔もグラスを空ける。

奏は朔には何も言えない。


一番荒れてた頃を知られているからだ。


「……まぁ、感謝……しては、いる」


顔を逸らして、奏はぼそっと呟く。

顔が、少しだけ赤い。

陽と朔は驚いた顔で奏を見た。


「奏がデレた!!」


「陽、黙れ」


少しだけ高揚する気持ちを抑えながら、朔は唇の端が自然と持ち上がるのは抑えきれなかった。


「ふふっ、朔もデレてるよ」


それを見た凪が笑顔になる。


今度は奏が目を見開いて朔を見る。

ふっと笑って目を細める。


「俺もね、感謝してる」


不意に凪が言う。

三人の目が自然と凪に向く。

柔らかい笑みが凪の気持ちを表している。


「朔が奏を見つけてくれたこと」


凪の瞳が朔を真っ直ぐに見つめる。

朔はその視線を受け止める。


「だから俺はNOCTIS(この場所)にいれる」


陽を見て、最後に奏に向けられる凪のまなざし。

少し恥ずかしげにふいっと顔を背ける奏。


「……お前、飲み過ぎ」


ぶっきらぼうに呟く。

凪は首を傾げる。


「そんなに飲んでないよ?」


奏は知ってる。凪は酔ってない。

けど、酒のせいにしないと気恥ずかし過ぎる。

奏は誤魔化すように酒を煽る。


「奏っ、照れんなよぉ!!俺も感謝してるってぇ」


グラスを高く掲げて一人乾杯してる陽。

既に顔が真っ赤でかなり酔いが回っているようだ。


「朔ぅー、奏手懐けてくれてありがとなぁっー!!」


ばんばんっと朔の背中を叩きながら、陽が言う。

朔は顔をしかめる。


「わかったから、お前はもう少し静かに飲め」


陽を自分の席に戻させる。

朔が水を渡そうとするが、陽はそのまま横になってしまった。

すぐに寝息が聞こえる。


「陽、今日は早かったね」


凪が覗き込む。


「今回のツアー、やたら張り切ってたからな」


奏が呆れ気味に陽をチラッと見る。

その顔は少しだけ、柔らかい。


「凪」


静かにグラスを傾けながら、朔が呼ぶ。

落ち着いた声。

凪は不思議そうに朔の方を見た。


「お前が奏を見つけたことにも感謝している」


「えっ」


凪の瞳が揺らぐ。

朔は凪をじっと見つめる。

その視線を受け止めた凪の手は、少し震えている。

ぎゅっと手のひらを握り、震えを抑える。


「お前が自分から飛び込んで来たことが、どれだけの覚悟だったか、今ならわかる」


凪の息が詰まる。

胸の奥からあの日の熱が蘇ってくるような気がした。


「……うん」


「凪、お前が来てからだ」


凪が顔をあげる。

朔の視線がいつもより少し、優しい。


「奏が人間らしくなってきたのは」


凪は驚いて息を呑んだ。

思わず、奏を見る。


「朔」


黙って聞いていた奏が口を挟む。


「……お前も酔っ払ってるな」


ふっと笑って朔は奏を見た。


「事実だろ?」


少しだけ、悪そうな顔をしている。


「うるせぇ」


奏は先に顔を逸らす。


凪は朔と奏を交互に見た。


「ふふっ、やっぱり仲いいね」


クスクス笑う。


「黙れ、もうお開きだ」


奏が手をひらひらさせる。


凪は真面目な表情に戻る。


「え、でもまだデザート来てない……」


奏と朔は顔を見合わせた。

ははっと笑い合う。


「お前、ブレねぇな」


「それが凪だな」


「なんで笑うのっ?」


そう言いながら、凪も笑っていた。









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