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宵闇に奏でる―NOCTIS STORY  作者: 夜月黎


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二十歳の夜

凪が二十歳を迎えた日のこと。


デビュー四年目。

凪のバースデーライブが開催された日の夜。


いつもより熱狂したライブも終わり、楽屋で着替えをしていた。


まだ体の奥に熱が残っている。

凪はタオルに顔を埋め、熱を冷ましていた。


そこへ。


「凪」


奏の声が飛ぶ。


顔をあげ、振り向く。


「手」


それだけ言う。


「?」


凪は不思議そうに手を出した。


その上に、ぽいっと放り投げるように小箱を乗せる。


「やる」


「え?」


ぽかんとして奏を見上げる、凪。

少しだけ恥ずかしそうに見る奏。


「今日、誕生日なんだろ?二十歳の」


ぶっきらぼうに返してその場を去る。

凪は奏の背中を呆然と見つめた。

手のひらの上の小箱は、軽い。だが、凪にはずっしりと感じられた。


そっと箱を開ける。


中には繊細なラインの片翼をモチーフにしたネックレス。鎖も華奢な作りだ。


「え、これ、俺に?」


あまりの突然ぶりに驚きを隠せない。

だが、凪の顔には知らず知らずに笑みが浮かんでいた。

箱の蓋を再び閉めて、大事そうにポケットにしまう。

それから、支度をしてシャワーに向った。



今回の打ち上げは少し広めの場所だった。

凪のバースデーライブということで、事務所の先輩後輩、ミュージャン仲間など、いつもより大人数だった。


その中で楽しそうに凪はお酒を飲んでいた。

いつもは四人固まっていることが多いが、さすがに今日はそうもいかない。


たくさんの『お誕生日おめでとう』『二十歳おめでとう』に、凪は愛想笑いを浮かべつつ、少しだけ疲れていた。

緊張しているからか、今日初めて飲むはずのお酒が、薄く感じる。


軽く、溜め息をつく。

手の中のグラスがやけに重い。


……四人でいられるって楽なんだなぁ。


そんなことを思って、ふっと首元に触れる。

鎖の感触が手に伝わる。

さっき、奏に貰ったネックレスを、シャワーを浴びた後につけた。

ちょっと気恥ずかしかったけど、嬉しかった。


繊細な片翼が、妙にくすぐったい。


……奏から見た俺ってこんなイメージ?


右手でその片翼に触れた時だった。

少し離れた位置にいる奏と、目が合った。

奏の灰色(グレー)の視線が、凪の目からネックレスに移る。


そして、ふっと微笑った。


凪の心臓が跳ねた。

顔が熱くなり、息を吸うのを一瞬忘れた。

しかしすぐに奏は視線をそらし、隣の人と話始めた。


気のせい……?


今見たものが信じられないように、凪の動きは止まった。


隣にいた後輩が気づく。


「どうしたんですか?」


はっとして凪は目の前の相手に顔を向ける。


「うん、なんでもない」


にっこりと微笑んで。


その後も宴会は進み、凪は勧められた酒を全部飲んだ。

しかし、最後に残っていたのは、凪と朔だけだった。


「お前、酒強いのか?」


「うーん?わかんない、今日初めて飲んだし」


「そうだろうが……」


朔は苦労が増える予感を既に感じていた。


「ふふっ、意外と美味しいね、お酒って」


凪の無邪気な笑顔に朔は頭を抱えた。



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