表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宵闇に奏でる―NOCTIS STORY  作者: 夜月黎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/37

凪の余話

控室のソファに座り、用意された珈琲を口に運ぶ。


少し、苦い。

でも、その温かさが、体の緊張を少しだけ解してくれる。


「あったか……」


口元だけで呟くと、奏が近づいてくる。


「お疲れ」


そう言って隣に座ると、自分の分の珈琲を飲んでいる。


俺はゆっくりと隣を見上げる。


奏の表情が僅かに、沈んでいる。

たぶん、誰も気づかないほどの。


「奏、疲れてる?」


そう言うと、奏は一瞬動きを止めて、それから俺の方を見た。


「……少しな」


それだけを言って奏は正面を向いた。


「奏らしいね」


俺はそう言って笑う。

奏は少しだけ不機嫌そうにこちらを見た。


でも、何も言わない。


それも、奏らしい。


それから、少しだけ間を置いて。


「お前は……大丈夫だったか?」


それだけボソリと呟く。


俺は一瞬止まって、珈琲を置く。


「……うん」


少し、考える。


――何が?


そう答えようとして、でもやめた。


「大丈夫」


それだけ答えて、残りの珈琲を飲み干す。


奏は何も言わずに、足を組んでソファに座ったまま、ただ前を見ていた。


俺が帰ろうとしている時も、奏はまだソファに座ったまま、ぼーっとしていた。



家に帰って、リビングのソファに座る。

クッションを抱えたまま、今日のことを思い出していた。


『奏と演奏してると生き生きしてる』


『奏の声と凪のギターの響き合いが好き』


『音で会話してる感じがいい』


単純に、嬉しかった。

でも……。


『凪の憧れが奏に届いてほしい』


まだ、奏の隣には立てていないんだろうか……。


同じステージに立って、同じ音を共有しているはずなのに。


まだ、俺の憧れのまま……?


確かに、奏は追いついたと思っても、すぐに先に飛び出していってしまう。


きゅっと、クッションを握る手に力が入る。


「……俺の、存在……」


思わず、口から零れる言葉。


ふっと失くなってしまうような、もの。


「……奏はやっぱり凄いなぁ……」


少しだけ笑って、天井を見上げる。


いつもと、変わらない夜。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ