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宵闇に奏でる―NOCTIS STORY  作者: 夜月黎


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NOCTIS人気投票③―総合人気投票部門―

再び、再開する。


「それでは、最後です」


朔の宣言で始まる。

この企画のトリ。


"NOCTIS総合人気投票!!"


スタッフが幕を掲げる。


「よっしゃー!今年こそ!!」


陽が大声をあげる。

朔は目線だけを陽に向ける。

その冷たい目に陽は、うっとなる。


「では、この部門も四位から」


静かな朔の声が告げる。


陽はわくわく顔で待っている。

凪はいつものにこにこ顔。

奏は対して興味なさそうに、ポケットに手を突っ込んでいる。


「四位は……」


少し間を開けて。


「朝霧陽」


発表と同時に陽が項垂れる。


「だぁーっ、今年も最下位……」


ふっと笑って、奏が見下ろす。


「最下位ねぇ?」


キッと奏を見上げて陽は大声を出す。


「くっそぉーっっ!!」


「さっき、俺のこと散々最下位だって貶してくれたよなぁ?」


完璧に煽り倒している。

陽はぐっと歯を食いしばる。

完全に自業自得だ。


「コメント、行くぞ」


朔は冷めた目で二人を見てから、続ける。


『いつも明るくて、NOCTISの太陽』


『普段可愛いけど、ドラム叩いてる時はめっちゃカッコイイ!!』


『間の悪さが最高』


『陽の笑顔に救われた』


少しだけ、陽の元気が戻る。


「ねぇ、間の悪さが最高って何?俺、褒められてんの?これ」


「褒めてんじゃねぇの?」


奏は適当に返す。


「奏、お前適当に言ってんだろ……」


凪はくすくす笑う。


「NOCTISの太陽、は陽にぴったりだよね」


凪の言葉に陽は、頭掻きながら、少し照れくさそうに笑う。 


「へへっ、そうかな」


朔が陽の背中を、ばんっと叩く。


「ほら、お前からのコメントだ」


一歩前に出た陽が、カメラの正面に立つ。

慣れてなさそうに陽は、カメラを見る。


「えー、俺に投票してくれたファンの皆さん、ありがとうございました」


軽く頭を下げる。

それから、いつもの元気いっぱいの笑顔で、


「俺は楽しくやってるだけなんだけど、『救われた』とか言われると、嬉しいです。またライブで皆に元気分けに行くからっ!!これからもよろしくっ!!」


そう言って、勢いよく頭を下げる。

そして、定位置に戻る。


「陽が真面目にコメントしてる……」


奏がボソッと言う。

凪は頷きながら、


「陽もたまにはね」


とにこっと。

朔は満足そうに無言で頷いた。



「では、次、三位」


少しの間。


「三位は、月城朔」


朔が自分の名前を読み上げる。

本人は満足そうだ。


「やっぱ、そうだよなぁー」


陽はつまんなさそうにぼやく。

凪は驚いて目を丸くしている。


「えぇ?朔三位なの?」


「妥当だろ」


そう返すのは奏だ。


三人をチラ見してから、朔はコメントを読み上げる。


『NOCTISを支える土台』


『朔がいなかったら、NOCTISは続かない』


『NOCTISへの愛が一番深い』


『他三人を締める時のあの冷たくて冷静な目に萌える』


読み上げた朔自身が、一瞬だけ言葉に詰まる。


それから、ボソッと。


「……光栄だな」


陽はにやにやしながら、朔を覗き込む。


「朔ぅー、照れてんじゃん?」


ファンが萌えるという、冷静な目が陽に向けられる。


「うるさい」


凪もたたみかける。


「朔、嬉しそうだよ?」


「凪……」


凪には、呆れたような目を向ける。


「素直に喜べよ、朔いなかったら、バンド回んねぇの、皆わかってんだから」


奏の珍しく素直な言葉に、朔は思わずにやっとしそうになった。

一度咳ばらいをして誤魔化し、朔は一歩前に出る。


しっかりと一礼して、カメラの前に立つ。


「月城朔に投票いただいたノクティアの皆さん、本当にありがとうございます」


朔らしい丁寧な挨拶だ。


「NOCTISの土台という光栄なお言葉をいただきまして、感謝しています。ですが、やっぱり、他の三人がいるからこそ、俺はこのバンドで楽しくやっていけてます」


少しだけ、気恥ずかしそうに、笑う。

珍しい表情に三人は、顔を見合わせて笑った。


「これからも、自分がNOCTISのために何が出来るか、考えながら、皆さんに音楽を届けに行きますので、よろしくお願いします」


最後、また丁寧に一礼。


思わず、スタッフからも拍手があがる。


「え、何この一位みたいな雰囲気?」


陽が遠慮がちに一言。


「……まぁ、朔だから」


「朔だからな」


奏と凪に同時に返される。


定位置に戻った朔は、またひとつ咳ばらいをして表情を戻し、進行を続けた。


「では、次は二位」


また、間があって。


「二位は、天音凪」


凪はぽかんとして、朔を見た。


「え、俺?」


「なんで、お前は驚いてんだよ?」


奏は呆れたように突っ込む。


「だって、俺が朔より上なんて……」


少しだけ戸惑って、凪は言う。

その横で陽は、


「……俺より上はいいのかよ」


とボヤいていた。

それが聞こえていたのか、凪はにこっと笑って陽を見た。


「さすがに陽よりは……かな?」


陽には爆弾だったようだ。

黙ってしまった。


朔は額を抑えながら、コメント発表に移る。


『美しすぎる』


『一番言葉が素直で純粋』


『凪の感情が全部ギターの音になってるのが、カッコいい』


『奏への憧れが尊い』


『笑顔に癒やされる』


『NOCTISの音楽の最後のピースが、ハマった感じがするギターが最高』



ちょっと恥ずかしそうに凪が笑う。


「俺、そんなイメージ?」


うんうんと頷く三人。


「そのまんまだよ、よく見てんなぁ」


口元に手を当て、感心したように奏が言う。


「ギターのことは言われると嬉しいな」


嬉しそうに笑う凪。


「……凪、今ファンが数人悶え死んだぞ?」


陽が冗談めかして言う。


「えっ、死ぬの?」


後ろに一歩のけぞって凪が驚く。


「いや……あの、冗談だって」


逆に陽が驚いてしまう。


「ばーか」


奏がからかうように陽に言う。

口を尖らせて無言で陽は奏を見た。


「凪、ファンへむけてコメントだ」


朔に促され、少し遠慮がちに凪は一歩前に出る。


ペコッと頭を下げた凪は、にっこり笑ってカメラを見た。


「俺に投票してくれた皆さん、ありがとうございます……」


それから、少し考えて、視線を泳がせる。

一生懸命考える姿に、誰もが応援したくなる。


「え……と、正直、よくわかんないけど、ちゃんと、俺の音、聞いてくれる人がいるんだなって言うのは、すごく嬉しいです」


コメントに慣れてない感じの一生懸命な凪の言葉。


「俺が返せるのは、ギターだけなので、またライブで皆と楽しい時間を過ごせたらと思ってます」


それからまた、ペコッと頭を下げて、


「よろしくお願いします」


と言って、ササッと定位置に戻った。


「凪らしい、な」


奏が言った。


「だね」


陽も同意。


朔は唇の端だけで微笑った。


それから、最後の発表。


「最後は一位だ」


そう言うと、先ほどのミニくす玉を奏の前に移動する。


「?」


奏が不思議そうにくす玉を見下ろすが、朔はカメラに向き直る。


「NOCTIS人気投票、総合一位は……」


そう言って、間を置く。


「夜宮奏」


スタッフから拍手が起こる。


「やっぱりそうだよなー」


陽は口を尖らせる。


「奏すごいね」


凪は嬉しそう。


朔も納得したように頷く。


「奏はこれで、九年連続総合一位だ」


そして、奏にくす玉の紐を引っ張るように促す。


仕方なく紐を引っ張る奏。


ぱんっと音がして、割れたくす玉からは、紙吹雪と『一位おめでとう』と書かれた紙が現れる。


「……なぁ?これ、いんの?毎年」


溜め息をついて、紙をひっぱる。


「まぁ、気分だ」


朔は淡々と返す。


「奏へのコメントは、大量にきている」


そう言って朔はコメントを読み上げる。


『圧倒的存在感』


『あの声に全部持って行かれる』


『奏の存在に一目惚れした』


『ステージ上の煽りはヤバい。萌え死ぬ』


『あんなにカッコイイのに笑うと可愛い』


『奏が歌うと世界が変わる』


『奏がいるから、NOCTISがNOCTISで在る』



もうこれは、言うこと無し。

誰も言葉を発せなかった。


しん、とした空気を破ったのは、やはり陽だった。


「奏、やべぇな、やっぱ」


ふふっと凪も笑う。


「皆、奏が大好きだね」


奏は少し居心地悪そうに顔を逸らす。


「奏、ファンの皆へのコメントだ」


朔に背中を押され、奏が一歩前に出てカメラを向く。

さすがにカメラの前では、笑顔を見せる。


「たくさん投票してくれたノクティアの皆さん、ありがとうごさいます。夜宮奏です」


軽く頭を下げ、奏は前を見た。

それから、少しだけ挑発的な笑み。


「正直、順位とか興味ないけど……」


少し顎を引いて、斜めにカメラを見る。


「一目惚れした、とか、世界が変わるとか言われると……」


ニヤッと笑って、誘うように。


「覚悟できるよな?」


それは、自分に対してなのか、ファンに対してなのか。

それは明言しない。


「俺は生きてる限りステージに立つから、ちゃんとついてこいよ?」


そう言って、定位置に戻る。


「……出た、煽り奏」


陽。


「奏らしいね」


そして凪。


「もうちょっと、ファンへの感謝とか……」


ブツブツ言うのは朔。

しかし、諦めたように息を吐いて、止める。


奏は少し恥ずかしくなったのか、不機嫌そうに横を向いている。


「……照れるならやるなよ」


陽がボソッとぼやく。


「うるさい」


奏もボソッと返す。


それを見て、凪は楽しそうに笑った。


「それが奏だからね」



「それでは、ここまで長い時間、ありがとうございました」


朔が締めに入る。


「改めて、たくさんの投票ありがとうっっ!!」


陽が引き継ぎ、


「『NOCTIS – Night Archive』の次回の更新もお楽しみに」


凪が告知。


「次はライブで会おうぜ」


奏が締める。


音楽が流れ、カメラの電源が落とされる。



動画が切れると、陽は大きく伸びをした。


「はぁー、疲れたぁ」


「お疲れ」


凪声をかける。


「来年こそ、一位取るぞーっ」


そう言う陽に、奏ははっと笑った。


「無理だろ?」


「即答すんなっ」


いつもの二人のやり取りに、凪はくすくす笑う。


「でも、陽がいるから楽しいってコメント多かったよ」


凪に言われ、まんざらでもないような表情をする。


「だよなっ」


しかしすぐに落とされる。


「奏にはかなわないけどね」


「……凪、お前……ひとこと余計なんだよ……」


陽は結局項垂れる。


「毎年変わらんな」


朔は呆れたように呟く。


「ま、それがNOCTIS(おれたち)だろ?」


奏が言うと、朔は目を細めて肩をすくめた。


「そうだな」


笑って、呆れて、喧嘩もして。

でも、最後にはまた笑う。

いつも通りの、四人。


変わらない関係性。

変わらない居場所。


それぞれの胸に、それぞれの想いを抱えながら、四人はまた、奏でていく。














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