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第5話 多少の人見知りが入っている女には辛いよ……

そして翌朝、いよいよ私達の計画(宗教創始)がスタートする日だ!

とりあえず昨日の夜、ベッドの中である程度の計画は立てたし、後はそれをフロリアーノさんに話して、動き出せばOK!

と話し始めようとした所で

「心花ちゃん〜ごめん〜私、今日仕事行かなくちゃいけなくて〜心花ちゃんにシェイラちゃん、任せてもいい〜?」

なんて言われた。

そうか、フロリアーノさんにはお仕事があるもんな……なにせ、今の家計の収入はフロリアーノさん100%だ。果汁100%なんて言いながら100%じゃないジュースとは違い、正真正銘の100%だ。シェイラちゃんは働けないので責められないが、私は責められるべきだ。

だからこそ私も稼がなければいけない。その上で、フロリアーノさんと私の夢も叶えなければいけない。メジャーデビューするなんて言っておきながら、実質その夢を諦めて、フリーターでそのくせ彼女には夢を追いかけているなんて語り、半分彼女のヒモと化しているクズ男のようになってはいけないのだ。


「フロリアーノさん、大丈夫!私も、今日は動こうと思ってて……昨日のことからね……」


その後、私の計画をフロリアーノさんに伝え(シェイラちゃんは横で黙々とサンドイッチを食べていた。口が小さくて、飲み込むのに時間がかかっていた)


計画を話しながら、朝ごはんを終え、フロリアーノさんが仕事に行く。私はその背中を見送ってから、諸々の後片付けを済ませて、シェイラちゃんを連れて街に向かった。

目指すのは井戸や広場。そして、布教のターゲットにするのは……


「あ、あの……この辺りで、子供用の服を売っているお店、知りませんか……?」

「え?あぁ、そうねぇー、あっちの方とかどうかしら?あなたは?最近来たの?」

そう、主婦などの、子供がいるような母親だ。


「はい……この子と二人で」

「あらあらー、何か、事情でもあったのかしら?」

「実は……」

その後、私は心にもないことを語り、シェイラちゃんも私の意を汲んでくれたのか、私の足にピッタリとくっつき(因みに、シェイラちゃんは目深のフードを被っている。多少ではあるが耳が尖っているし、何より、美人すぎて私との血の繋がりを疑われかねない、悲しいことに)


「そういえば……この街は今、戦争で大変らしいと聞くのですが……」

「そうねぇー、うちもねぇー最近大変で、あ、そうそう、――さんもそうでしょう?」

「ああ、そうなのよぉ。もう息子も父も兵役に連れてかれちゃってーお貴族さまの子なら助かるでしょうけど、庶民はねぇ」

そうやって口々に愚痴が始まる。ここだ。

「あの!私、実は遠い東の方の国から、来たのですが……」

ん?と主婦たちの目がこちらに向く。その数は、いつの間にか数十人にも膨れ上がっている。井戸端会議、なんて言葉はもう日本には無くなってしまった(井戸が無くなったので)が、ここでは健在のようだ。

「そこでの教えと違うことが多くて、戸惑ってしまっているのですが……今の、皆様の悩みは、白金教によって解決、されないのですか?」


そう聞くと、苛烈な反応が返ってきた。

「白金教会なんてもうダメよー!」

「あそこ、カシウスからのスパイがいるらしいのよ!」

「最近はねぇ、いよいよ教会もめっきり少なくなって、この国から逃げようとしてるんだわ!」

やはり、少し突けばこれだけの不満が飛び出してくる。

少し上手くいきすぎている気がしなくもないけど、ともかくと、その反応を見つつ、私は要所要所で口を挟む。


「教えが――」

「皆様には良い――」

「――一緒にやりませんか――」

話を上手く誘導して、明日、布教の集会を行う方向へ話を纏めていった。

何人か眉をしかめていた人もいたが、概ね好感触だ。

大抵の場合、主婦は比較的時間に余裕があり、更に、よく噂を広めてくれる。

実際、私の両親がハマったカルト宗教も、そうやって創始したと聞く。

少々私に都合がいいように話が進んでいるような気もするけど、まぁ、上手くいっているのならいいでしょ。上手くいってないよりは。


そうやって、私はいくつかの集まりに噂を広めていった。

そんな私を、シェイラちゃんがジッと見つめていた。


「――――え〜!すご〜い!心花ちゃん、もうそこまで話を進めてたの〜!?」

私が家に帰って、今日の成果を報告すると、フロリアーノさんが目を丸くして驚いていた。

驚く顔すら可愛いな……

「いやー、やっぱり、新興宗教とか、そういう概念がないからかな。皆警戒せずに話を聞いてくれたし、この調子なら、そこまで苦労せず、作れるんじゃないかな。新しい宗教」

そう、私は少し、調子に乗っている。なにせ、本来なら一ヶ月……はかからなくとも、一週間はかかると思っていた工程が、僅か一日で進んだのだ。

故に、私は少し調子に乗っている。この異世界には、異世界独自の難しさがあることも、知らずに――

「あ、そうだ……フロリアーノさん、ごめんね。白金教の人気が落ちていることを利用して布教するようなことをして……」

一応、朝の時点でそれについてもおおまかに伝えて、フロリアーノさんは良いと言ってくれたが……それでも、やっぱりフロリアーノさんの職場(職場でいいよね?)が悪く言われていると少し、こう、私の良心にダメージが……恩人のことを悪く言われているような……


「え〜、気にしてないよ〜私も、もう愛想尽きてるし〜それに、そう思う気持ちも、よく分かるから〜」


う、サラリと言われる「愛想尽きてる」が私にもひっそりダメージを……それはそうと、やっぱり、フロリアーノさんにとっても、この現状は好きじゃないらしい。優しいフロリアーノさんのことだ、きっと、民衆を救えないことに心を痛めているんだろう。


「それに〜新しいことを、試して、知れるのって凄い楽しいから〜どんどん、人々で実験していこ〜失敗も、成功への犠牲だよ〜」

あ!違う!この人、知識欲の方が強く出てる!優しさとか倫理観とか、諸々のしがらみを超えるくらい知識欲に狂っているだけかも!

フロリアーノさんの緩い口調で、結構残虐というか、底冷えするようなことを言われると、こう……

生物系の学部で、生き物にも人にも優しくしている、マドンナみたいな人が、実際は実験でラットを犠牲にしまくっているみたいな……いや、そういうイメージだけだけどね……あるよね……なんか……


でも、フロリアーノさんのその知識欲こそが、私達を途方のない夢へと駆り立てたきっかけだから、私にとっては、凄くいい事だったんだよなぁ。フロリアーノさんと出会えたことも、フロリアーノさんに、こうして助けてもらえていることも……


うん!フロリアーノさんのためにも、頑張ろ!


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