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第35話 過ぎ去る人もいれば来る人もいる。新キャラ到来!?


「たのもーっ!たのもーっ!」

宿でゆっくり眠っていた神花は、扉の外から響いてくる、突然の声によって目覚めた。


(たのもーって、なに……?道場破りでも来た?)

そう思って起き上がろうとした所で、自分の現状に気付き動きを止める。

(あ、そういえば絶対動くなって真夜に言われてるんだった)


神花がそう思っている間に、真夜とクララが扉の前まで向かっていた。フロリアーノとシェイラは、どうやら買い物らしい。


「……クララ、私が扉を開けるから、あなたは警戒して」

「いえ、私が開けます。もし相手が凶器を持っていても私ならなんとかできますから」


二人がひっそりと扉の前で警戒を強めている間、声の主は声を弱め

「あれ、もしかして留守かな……いやでもそれならここで待つだけ……うん」としつこく待ち続ける覚悟を決めていた。


流石にその言い分に扉の前にいる真夜達も引いているのか「もう開けなくていいんじゃない?」「放置しておきますか?」なんて言っている。


「あ、でも結局フロリアーノ様が帰ってきたら鉢合わせますね」というクララの一言で、渋々真夜達は扉を開けることにした。


「うわ!中にいたんですか!?」と、扉の外から元気な声が聞こえる。扉の外に立っていたのは、少し小柄な青髪の女の子だった。


「わ!わ!……すみません!こちらにアンドラーシュ皇の関係者様がいらっしゃると聞きまして!」

その青髪の女の子は、パッパッと服をはらってから二人に向き直る。そして精一杯虚勢を張ったような顔で、ペコリと頭を下げた。


「レオン公家次女のルリン・レオンと申します!あ!すいません!お茶ありがとうございます!」

ソファーに案内された青髪の彼女はルリンと名乗り、美味しそうに出されたお茶を飲んでいる。


「レオン?レオンって、この国の……」

「はい、そうです。私の父のライハルト・レオンは現在、この国の総議長を務めています」

真夜が疑問をポツリと呟くと、ルリンは胸を張って誇らしげに答える。


「そんな方が何故ここに?」そっとお茶請けを持ってきたクララが鋭い目つきで油断なく尋ねる。神花がこっそりと様子を伺うと、クララはしっかりと帯剣しており、常にルリンと神花の導線上に立っている。


「え?表にアンドラーシュ皇族の印がついた馬車があったので、宿屋の方に訊ねただけですよ?」

「え?」

「えっ?」


三者三葉の「え?」が飛び出した。

ルリンのそれはなぜそんな分かりきったことを訊ねるのか、の「え?」だろうし、真夜の「え?」は全く知らない事実が飛び出した時の「え?」だし、クララの「えっ?」はシリアスに追及しようと思っていたらものすごく間抜けな答えだった時の「えっ?」だ。コソコソ移動していたはずが、胸に大きな名札をつけながら動いていたようなものなので、まぁ間抜けといえば間抜けなのだが。


「いえ、正確にはアンドラーシュ帝国とテオゴリスの間に伝わる密約の印ですが……知らなかったのですか?」

ルリンがそこで初めて猜疑の目を向ける。

「まぁ、こっちにも事情があるから。盗んだとかやましい事じゃないから、それは安心して」


真夜がペースを崩さず追及を柳に風で受け流す。まぁ、実際、事情があるのは本当なのだが。それでもここまで堂々としているなんて、真夜にも詐欺師の才能があるのかもしれない。(私とフロリアーノは既にシェイラちゃんから詐欺師の称号を頂いている)


「……そうですか!それなら良かったです!あ、私に何か協力できることがあれば仰ってくださいね!アンドラーシュ帝国とテオゴリスは数百年の仲なので!」

ニコニコと笑顔でルリンはそう言った。その瞳の奥に疑いはまだ残っているのか、目の前の少女がただ純朴なだけか測りかねて真夜は目を細くすぼめる。


ルリンはそんな猜疑の視線にも反応しないまま、大きく頭を下げてお礼を言い、部屋から出て行った。

「……はぁ」

後に残された真夜が大きく項垂れ、ため息をつく。


「どうしたんですか?」とクララが尋ねる。

「……さっきの私、嫌な奴だったでしょ」

まぁ、確かに傍から見れば活発で純粋な少女をあしらった成人女性、という構図になる。


クララも少し悩んでから、さぁ?とでも言うように首を傾ける。まぁ、その態度が答えを物語っているようなもので、真夜はよりいっそう落ち込む。


「フロリアーノずーっと一緒にいたから移ったんだ、性格悪いのが」

そう落ち込む真夜に、クララがフォローしようと

「ま、真夜様は、フロリアーノ様ほどでは……」と言ったところで言葉が詰まってしまった。二の句が継げない、本人もいないのに。


「……ふっ、まぁ、本人に聞かれたら怒られるでしょうし、ここら辺にしときますか」

そう言いながら真夜は立ち上がって、神花のもとへと歩み寄ってくる。


それに気づいた神花は狸寝入りをしようとする。なんとなく気まずいからだ。真夜とクララが頑張っている間ぬくぬく布団の上でゴシップ気味に盗み聞きしていたなんて、神花でなくとも罰が悪いだろう。


そしてそっと神花のベッドの傍に立った真夜は、布団を撫で、「神花はどう思う?」と尋ねた。

「……気付いてたの?」と神花。


「私には便利な魔法があるから、ね」

と真夜が言うと、後ろからクララが寄ってきて、

「えっ!神花様、起きていらしたのですか?」

そう驚く。


「……便利だよね、真夜の魔法」

魔法をあまり使わない(使う場面もなければ練習もしていないので、もう使い方すら忘れかけている魅了の魔力を持っている)神花がポツリと呟く。


「まぁ、ね。それで、さっきの子、どう思った?」

との真夜の問いに素直に神花が答える。

「元気でいい子だと思ったけど……?」


「……ふーん、まぁ、私の性格が悪いから怪しく見えたのかもね」

一人で勝手に自虐して勝手に拗ねる真夜を宥めていると、買い物を終えたフロリアーノとシェイラが帰ってきて、のんびりと夕食の支度が始まった。

宿屋の窓から橙色の灯りが漏れ出る。それを、少し離れた場所から誰かが見ていた。


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