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第34話 新しい国へ!具体的には帝国から更に北上するよ!

「うぁ〜気持ち悪い〜」

馬車に揺られ続けて何時間、最初に弱音を吐いたのは、まだ体調も優れていない神花だった。


「大丈夫ですかー?」と言いながら膝枕をして心配してくれているのはクララ。シェイラは神花の頭に濡らしたタオルを置いて「まだ治ってないんだから安静にするのよ。欲しいものあったら言いなさい」と優しく言った。


「シェイラちゃんが優しい〜ありがとう〜」と、ヘロヘロの声で言う神花の横で、フロリアーノが真夜に「今の神花ちゃん、私の喋り方と似てないですか〜」なんて言い、真夜に「普段からもう少しハキハキ喋ったら?」なんて言われている。


「それで〜あとどれ位で着くの〜うぇ〜」と呻きながら神花が尋ねる。

「そもそも、この馬車はどこに向かっているの?誰かわかる?」真夜が疑問を呈すると、フロリアーノが脇から地図を取り出して広げる。


「この道は地図には書かれてないけど〜大体方角とかからここら辺を移動してるかな〜」

地図を指でなぞっていく。その細い指がすーっと動き、そして、止まった。


「推測ですが〜王族の亡命を支援するなら、きっとここでしょう」

連合獣国 テオゴリスの首都 レオラルトに。




五人は連合獣国 テオゴリスとアンドラーシュ帝国の国境の境目にある街に馬車を止め、休むことにした。

理由はこうだ。


「レオラルトは、テオゴリスの中でも奥地にあるので〜大体、二、三日ほどかかりますね〜」

それを聞いた神花の顔は文字通り青ざめる。絶望的な顔つきだ。


そこにシェイラが助け舟を出す。

「怪我人に無理はさせたくないし……どこか止まって休めるところはないかしら?」


「ここはどう?」真夜が指したのは、二つの国の国境付近にある、テオゴリスの街、カーリアだ。

「通り道だし、神花の調子が良くなるくらいまでここで待った方がいいんじゃない?」


フロリアーノも賛同し、五人の次の滞在先が決まると、ずっと神花を膝枕していたクララが「良かったですね」と優しく言った。


それから数時間ほど馬車に揺られて、五人はカーリアへと着く。馬車に乗ったままフロリアーノが周囲の人に宿を聞き、快く答えてもらえている。

「ここを少し行ったらいい宿があるらしいですよ〜神花ちゃん、もう少し我慢してくださいね〜」


神花はもうグロッキーになってしまい、その返事にもただ頷くだけだった。

「にしても〜獣国って言うからには、もっと様々な獣族の方がいると思ってた〜」

と、荷台に引っ込んだフロリアーノが喋ると、真夜が

「へぇ、フロリアーノなら大体なんでも知ってると思ってた」

と返し、

「行ったこともないし〜詳しいことは知らないよ〜でも、昔存在した複数の獣族を統一して生まれたってことは習ったかな〜」


「あぁ、だから連合獣国……」と真夜が呟いた頃、馬車が止まった。目的地に着いたようだ。

シェイラとフロリアーノが先に馬車から降りると、シェイラが「質素すぎも豪華すぎもしない、普通の宿屋ね。目立たなさそうだしちょうど良さそうね」と言った。


「神花さま、すみません、持ちますね……」

グロッキーで腹に穴が空いた神花はクララに抱き抱えられながら馬車を降りた。


「血なまぐさいようでしたら申し訳ありません」

なんて言いながらクララは神花を抱いて移動する。この五人の中で神花を運べるほど力が強いのはクララくらいなのだ。


ん?と思って神花はクララの胸に顔を埋める。

「そんなことは……ないよ?」

と青ざめた顔で優しく神花は言った。


(いや、というかめちゃくちゃいい匂いがする!膝枕されてた時からだけど、ずっといい匂いがするし!血なまぐさいなんてそんなことはないよ……普段何で体洗ってるんだろうなぁ、今度聞こうかな……)


なんて思っている神花の内心も知らないクララは、弱りきった今でも、ずっと聖母のように優しい心遣いをしてくれている神花に、より一層の感激を覚えて、涙をこらえていた。


その様子を傍から見ているフロリアーノ。

「……ちょっと?」

と馬車から降りてきた真夜に窘められる。

「え〜なに〜?あ、私〜先に受付、行っておきますね〜」

と目を細くして口の端だけ吊り上げながら去っていく。


「……まぁ、フロリアーノも分かっているでしょう」

とシェイラ。真夜も少し肩を竦めながら頷く。

(……嫉妬する気持ちは分かるけど……)と思いながら。


「わぁー、部屋、綺麗……」

少しずつ体調が戻ってきた神花が、宿の部屋を見ながら呟く。ついでにベッドから体を起こそうとしてシェイラに窘められていた。


「学園の部屋よりは質素ですけど、今度はベッドも3つありますし五人全員泊まれそうですね……!」

以前の部屋だとベッドも2つしかなく、そもそもクララにはクララの部屋があったので一緒に泊まれなかったクララが嬉しそうに呟く。寂しかったのだろう。


「シェイラちゃーん、もう少し部屋の中見たいよー」

ぼやく神花に、「怪我人なんだから大人しく休んでおきなさい」と止めるシェイラを横目に、真夜はフロリアーノに尋ねる。


「……この部屋、だいぶ高そうだけど」

「まぁ〜なんとかするよ〜。貯金もまだあるし〜」

とはいっても、以前は学園にいたから生活費やらはほぼかからなかった。フロリアーノは軽く返事をしたが、その実、お金には相当頭を悩ませているのだ。


「とりあえず、神花ちゃんはベッドの上で安静にしておいてくださいね〜。クララとシェイラちゃんは部屋にいて神花ちゃんの面倒を見ておいて〜私達二人はちょっと買い出しに行ってくるので〜」

フロリアーノは頭を切り替え、すぐに全員に指示を出す。


少し神花やシェイラに何か欲しいものはないか尋ね、前者からは甘い飲み物、後者からは神花のための包帯と言われ、それらの他にも要るもの、食糧などもメモして、フロリアーノと真夜は部屋を出ていった。


「にしても、クララを一緒の部屋に置き続けるのは意外ね。あなたなら買い出しにでも行かせて距離を置かせるんじゃないかと」

「……ん〜まぁね〜そうしたかったけど〜」

少し不満そうな顔つきでフロリアーノが喋る。


「けど?」

「……今回のことで〜神花ちゃんが狙われやすいことも分かったし〜そういう荒事ならクララ以外にうちに対処出来る人はいないでしょ〜。それなら〜私よりもクララの方が、神花ちゃんのそばにいた方がいいでしょ?」


「……」

真夜は何を言えばいいか少し悩む。異世界に来てからだろうか、真夜は少し言葉を慎重に発するようになった。


「ほら〜早く行こ〜。三人宿で待ってるんだし〜」

「え?あぁ、そうね……神花の欲しがってた甘い飲み物って、この辺りに売っているの?」

「なかったら柔らかめのケーキとかを買えばいいんじゃないかな〜」


先に行くフロリアーノの背中を真夜は目で追った。何か言おうと思い、逡巡して、そのまま口を噤んだ。

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