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第24話 招待 invite


私は、フロリアーノさんのことが好きなのだろうか。親愛ではなく、恋愛感情として。

それは、ずっと考えないようにしていたことだった。


……あれ、なぜ?

いや、思いもつかなかったことだ。考えなかったのではなく、考えもつかなかった。


……それなら、私はフロリアーノのことが好きではないのだろうか。

フロリアーノさんは、真夜ちゃんみたいなものだ。ずっと横にいて欲しいし、居なくならないで欲しい。辛い時には背を撫でて欲しいし、辛そうにしている時には抱きしめてあげたい。

この気持ちは、恋愛感情なのだろうか。それとも、ただの親愛なのだろうか。


真夜ちゃんと同じということは、それは多分親愛なのだろう。そう思って、イヴさんに答えようとした時。


ふと、イヴさんの目を見て、その答えが本当に正しいのか、不安になった。

いや、イヴさんがどういう答えを望んでいるのかなんて分からないけれど。それでも、彼女は無駄な会話(えぇー!〇〇ちゃんあの人のこと好きなのー!?あの人かっこいいよねー!でもでも、あの人彼女いるらしいよ!)なんて恋バナはしないはずだ。


それは、この短期間、イヴさんと話して分かったことの一つかもしれない。彼女は賢く、理知的だ。

だから、私は喉元まで出かかった答えを引き留めた。


フロリアーノのことが恋愛的に好きなのか、という問いに関する私の答えは……

「……分かりません。少し、答えを待っていただけますか?」


そう告げると、イヴさんは驚きとも切なげともいえる表情を一瞬見せて、

「いいとも。私は寛大だからね。いつまでも答えを待とう」

と、いつも通りの微笑んだ表情に戻って告げた。



それから、ほんの少しイヴさんと話したところで、彼女は用事が出来たと帰って行ってしまった。

恐らく、彼女の方から特に話したいと思えることが無くなったんだろう。

クララちゃんは隣で安堵のため息をつくが、私の方は。

重い宿題を背負わされたかのような気持ちのまま、帰ることになった。


部屋に帰ってフロリアーノを見る。何か考え込んでいる様子で唇に指を当てている。

部屋には他に真夜とシェイラちゃんがいて、真夜は窓の外を見ながら物思いに耽っており、シェイラちゃんは難しそうな本を読んでいる。


私はフロリアーノに声を掛けようと一歩踏み出したところで固まった。何を言えばいいのか、急に言葉が出なくなってしまって。


「……あ……」

フロリアーノは目を閉じて考え事をしている。その姿を見るだけで、急に頭が真っ白になる。

い、イヴさんのせいだ!なんて他人に責任を押し付けても変わらず、私が固まっていると


「ん〜?神花ちゃん?」

と、フロリアーノの方が私に気付いて声を掛けてきた。

「イヴさんとはどうだった?会えた?」

「う、うん!色々話して貰えたよ!ランミンバーさんがああ見えて猫舌とか!」

「ふふ〜なにそれ〜。良かった〜楽しくお喋りできたみたいで〜」


あっ、フロリアーノさんとの会話が終わりそう……このままだと言いたいこと、何も言えないまま終わっちゃう。

それは、嫌だ!


「フ、フロリアーノ、明日、どこかに出かけない?」

えっ、という顔でこちらを見るフロリアーノ。

焦った私は間髪入れず続ける。

「ほ、ほらさ!こないだクララちゃんとかシェイラちゃんと出かけたし!そんな感じで出かけたいなーって!」


答えを待つ間、背中に冷や汗をかいたまま固まる私。フロリアーノはそんな私を見つめて、少し微笑んだ顔で

「二人で〜?」

と聞いてきた。


予想外の返答に頭が再度真っ白になった私は、思わず部屋の中を見渡す。

と、先程は窓の外を物憂げに見ていた真夜がこっちを観察していることに気付いた。


「あ!ま、真夜もどうかな!?思えばまだ、真夜と一緒にこの街を歩き回ったことってないよねー!?」

完全にテンパった私は思わず真夜を誘う。


真夜は無表情のまま

「……いいよ」

とだけ言って、また窓の外を眺め始めた。その表情はこちらからは窺えない。


「あ!フロリアーノも、それで!どうかな!?」

と、私がフロリアーノの方に向き直って尋ねると、彼女は少し残念そうな(ような気がするだけかも)顔のまま、頷いた。


かくして、私は三人でのお出かけ(もといデート?)を取り付けた、のだった……


え、エスコート、頑張らなきゃ……!


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