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第23話 集 会


「……ふむ、大分人通りも少なくなってきたな」

フロリアーノが私、クララちゃん、イヴさんとお付き?のメイドさんを先導し、学園でも寂れた、使われていない棟の中へと進んでいく。


「襲われるんじゃないか〜なんて、不安になりました〜?」

フロリアーノが朗らかに尋ねる。内容は煽ってるけど、話している人と顔が優しげだから朗らかな雰囲気になってる、かな……?


「いや、例え誰が来ても私がみすみす言いなりになることはないさ。そうだな、軽く二十人くらいで襲ってみるかい?私でも少しは手こずるかもしれないな」


その不遜な物言いと、それを全く傲慢に感じさせないだけの立ち振る舞い。クララちゃんが少し言ってたけど、この人は剣術、魔術の授業でも別格の存在らしい。まぁ、そうだろうな、としか思わないけど。


そんな彼女にとってもこの場所はノーマークのようだ。

周囲をつぶさに観察しながら歩いている。

と、ここでフロリアーノが立ち止まった。その前には一つの扉がある。


「ここか?」とイヴが尋ねる。

「そうですよ〜扉をどうぞ」とフロリアーノが譲る。

数瞬の躊躇の後、イヴはドアノブに手をかける。


ゆっくりと扉を開け、中の様子が見えてくる。

少し狭い部屋に、十数人の人が集まり、皆、一様に膝を付き、部屋の奥の少し高い台へ向かって祈りを捧げている。


「ごめんなさい」と、私は伝え、イヴさんの前に出る。

私が一歩を踏み出すと、信者達は前を空け、道を作る。


私は台の上へ登る。それまで部屋の隅にいたシェイラちゃんが、私の手を握り、共に台の上へ立った。

私は台の上からイヴさんに向かって微笑みかける。

その間も、信者達はずっと私に向かって祈りを捧げ続ける。


「どうですか?イヴさん。これが、私達天鳳教です」

イヴさんは何も言わなかった。ただ、その瞳に浮かぶ感情に驚きが含まれていたことを、私は確信した。


その後、信者達を返した後、集会を行った部屋に私達は残り、互いの話を始めた。

「率直に言って、驚いたよ。まだ学園に来て半月も経っていないだろうに、ここまではっきりと、教団という形を取っていることに。なぁ、ラン」


そこで初めて、イヴさんは隣のメイドさんに同意を求めるように話しかけた。

そのメイドさんはイヴさんの呼びかけを無視して、私達に向かって深々とお辞儀をする。

「ランミンバー・イグロットと申します。アンドラーシュ・イヴ様専属の小間使いとして働かせていただいております」


隣で呼び掛けを無視されたイヴさんは少しむすっとしていたが、すぐに気を取り直して。

「まぁ、天鳳教という集団に、特に学園内で力があることは理解したよ。それに、それだけのことを短期間で行えるだけの人員が揃っていることも、ね」


そこでイヴさんは私を見据えて、話しかけてきた。

「しかし、協力というものは単なる打算では結べないものだ。信念、イデオロギー、価値観、そういったものの合致こそが信頼となり、それが協力へと結び付く。だろう?」

そこでイヴさんは私の手を握り、自身の胸の近くまで引き付けた。

「私という人材が興味を抱いたことは事実だ。ただし、君達は未だ交渉のテーブルに着いただけ、ということを忘れてもらっては困る。これからだろう、私達の関係というものは」


「よろしく頼むよ。神花、フロリア、クララ、そして、そこの可愛いお嬢ちゃん」

最後にイヴさんはシェイラちゃんの髪を軽く撫でてから、この場所を去っていった。

シェイラちゃんは子供扱いされたことに少し腹が立ったようで、イヴさんの背中を睨んでいたが。


「……はぁ、なるほどね。あれはまぁ、厄介な人なことで」

部屋の隅から真夜が声を掛けてくる。

ずっとそこにいたの!?なんて思うほどには自然に、暗がりに溶け込んでいた。

「あれはね〜クララちゃんが苦手にする気持ちもわかるね〜」

「事は上手く進んでいたはずなのに、ほんの少しの捨て台詞だけでこちらに敗北感を与えてきたわね」

フロリアーノとシェイラちゃんが続けて感想を言う。

「と、とはいっても!イヴさんがあそこまで譲歩していた所は見たこと無かったです!もしかしたら、協力してくれるかもしれません!」

と、クララちゃん。

「協力してくれるかも、じゃなくて〜させないと〜」

そこでフロリアーノがこちらを見てくる。

「だから〜ね?クララちゃん?」

そして、フロリアーノに名指しで呼ばれた私とクララちゃんは、小さく震えるのだった……。




……その日の夕方、学園外のカフェで。

「あら、奇遇ですね?良ければご一緒しても?」

と、横にクララちゃんを連れた私が呼び掛ける。

相手は勿論、イヴさん。その隣にはランミンバーさん。


「……尾行かな?それとも、クララ、君が?君がそこまで私に興味を持ってくれているとは思えないが」

イヴさんは何故ここに来たのかとでも言いそうな胡乱げな目でこちらを見てくる。

「偶然ですよ、ね?クララさん?」

教祖&お姫様モードの私が答えると、横のクララちゃんもコクコクと首を動かす。


「……まぁ、いいか。確かに、話したかったところだ」

そう言ってイヴさんは私達を席に招く。テーブルの上には二人が頼んだであろうケーキとティーセットが置かれている。


店員に「同じものを」と伝えたイヴさんはこちらに向き直り

「さて、会話をしようか。これでも私は会話が好きなんだ。未知を既知にするために必要なのは会話だと思っている」


そう言いながらケーキを切り分ける。

そして、切られたケーキにフォークを刺すと、そのフォークをランミンバーさんの口元へと持っていく。ランミンバーさんも何の疑問も持たず、そのケーキを食べ、イヴさんはそれをにこやかに見ている。


「このケーキは彼女の好物でね。君達に好物はあるかい?」

イヴさんはそう尋ねる。

「さて……この国のものは何でも珍しいので……強いて言うならフロリアの作った料理でしょうか?」


クララちゃんが答えないので、私が代わりに答える。ランミンバーさんは以前から殆ど喋らない人だけど、クララちゃんの無口さはイヴさんが原因だろう。

今だって彼女の頬には冷や汗が流れ落ちている。


「そうか、人が作った料理が好きとは、素敵なことだ。

……ところで、君は」

イヴさんはなんてこともないように話を続ける。平凡なトーンで、一定のテンポで。

「フロリアのことが好きなのかな?恋愛感情として」

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