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第21話 お、畏れ多い、って感じ

「と、いうことで〜この学園における権力の覇者、アンドラーシュ・イヴに照準を合わせて布教しようと思うよ〜どうかな〜神花ちゃん」

フロリアーノが一息にこれからの計画を話し、神花に同意を求める。

「あ、うん……それはいいんだけど……その……」

「どうしたの〜?」

「その、なんでクララちゃんがここにいるの?」

私、神花が指した先には、小さく縮こまり、緊張と興奮で顔色をおかしくするクララちゃんがいた。

「クララちゃんはね〜熱心な信徒だし、勉強も、剣術も、魔術も上手だし〜何より、昨日神花と一緒に出かけたらしいし〜それなら、いいかな〜って」

そう言ってフロリアーノはクララちゃんを横目で見る。

何故だろう、フロリアーノの流し目に、普段彼女が抱いている慈しみの心が全く感じられない気がするのは……


「見苦しい嫉妬は辞めなさい。クララの人脈が必要だからここに呼んだんでしょ、フロリアーノ」

「も〜真夜ちゃん、ネタばらししないで〜もう少しからかいたかったのに〜」

そうやってフロリアーノは真夜に一言言ってから改めて小動物のように震えているクララちゃんに向き直る。

……冗談、なんだよね!良かったー!


「ね〜今の話聞いてたよね〜クララちゃん?」

「はっ、はい!!」

クララちゃんが頭を大きく上げて、それから勢いよく振り下ろして頷く。その余波に、縮こまっているクララちゃんの頭を撫でようとしていたシェイラちゃんがひっくり返った。

「じゃあ〜紹介してくれるよね?イヴさんに〜私たちのこと」


クララちゃんの表情が固まった。人って本当に凍りつくんだ……。

「クララちゃ〜ん?」

や、やっぱりフロリアーノが怖い……クララちゃんにだけやたらと当たりが強い気がする……

「わ、私、あの人が苦手なんです!」

……あの人?フロリアーノのことじゃない、よね……?


イヴさんのことだった。まぁ、話の流れからして当然か。

「どこが苦手なのか、具体的に言いなさい。そうしないと立てられる対策も立てられないでしょ」

と真夜が話を促すと(真夜もクララちゃんと初対面のはずなのにグイグイ行けている……これが性格の違い……クラスでイニシアチブを取れる人種と取れない人種……)

クララちゃんは多分私に似ている方ではありそうなんだよね。宗教にサラッと騙されるあたりも。


「イヴさんは……とにかく、圧が凄いんです!それに、賢くて、全て見透かされているような気がして……」

「でもクララちゃんも一応トップクラスの成績でしょ〜あまり差があるようには見えないけど〜?」

「いえ、イヴさんに会うと、あぁ、あれが皇族か……って感じるほどで……あ!いえ!神花さまも王族らしいですが!それとは少し違っていて……」

クララちゃんの話を聞いている途中で真夜が驚きの表情でこっちを見てきた。

そういえば、王族ってことになっていること説明してなかったなぁ。

あ!絶対(あんたが王族……?人口20人の村の村長すら手に余るでしょ……)って考えてる!私にはわかる!


それはともかく。


そのクララちゃんの話を聞いて真夜とフロリアーノが話し合っている。恐らく計画をどうするか練っているのだろう。

……な、仲間外れにされたからって寂しくないんだからね!


なんて下らないことを考えながらシェイラちゃんと一緒に縮こまったクララちゃんを撫でていると。

「大体決まりました〜」

なんて言いながらフロリアーノが駆けてくる。かわいい。


「それじゃ〜今からの計画を話しますね〜」



そうして、私とクララちゃん、フロリアーノは三人で廊下を歩いていた。目的地は勿論、アンドラーシュ・イヴの部屋に他ならない。

「これが排除とかだったら〜直接会う必要も無いけど〜勧誘なら直接顔を合わせないとね〜」

というフロリアーノさんの一言により、クララちゃんは苦手な相手との対峙を余儀なくされた。

思えば今日はクララちゃんにとっていい事がないな……後で何か買ってあげようかな……年下だし可愛がりたいんだよね、クララちゃんのこと。


ともかく、私達はイヴさんの部屋の前まで案内された。

クララちゃんが扉を叩くと、扉の隙間から長い黒髪のメイドさんが一人顔を出してきた。

「クララ=チューリップです。突然のご訪問、お許しください。是非ともお耳に入れたいことが……」

その言葉を聞くと、メイドさんは「了承いたしました」と頭を下げ、扉を閉めた。

「……お入りください」

程なくしてメイドさんによって扉が開き、私達は無事中へと招かれた。

通された部屋の中には文机が一つと、それに腰掛けるように、私達に背を向けて窓の方を向く一人の女性がいた。

後ろ姿からでもわかる、綺麗に手入れされた白いロングヘアーが揺れていた。窓からの逆光を影に、彼女のコントラストはより一層輝いていた。

「君が来るとは珍しいね、クララ」

その女性は私達の挨拶も待たずに喋り始めた。その態度を見て、確信する。これがアンドラーシュ・イヴ。アンドラーシュ帝国第三王女なのだと。


「私の把握する限り、君が来るような事件はこの学園で起きていないと思うんだけどね」

クララの体が固まる。イヴさんは返事を待つ様子もなく話を続けた。

「となれば、考えられることは二つ。私を上回りたいか、私を利用したいか」

そこで彼女は話を止め、こちらに振り向いた。

丸い大きな瞳が、睨むとも眺めるともつかない色でこちらを覗いている。

「そして、今日はその両方だろうね。ようこそ、天峰神花さん。それと、フロリアさん」


あぁ、クララちゃんが言っていたことが分かった。これは確かに皇族で、そして、規格外だ。




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