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第19話 楽しいお出掛け、かな

「シェ、シェイラちゃーん?一緒にお出かけでもしない?」

私は、昨日の件から少し不機嫌になっている気がするシェイラちゃんに話しかけた。

フロリアーノは真夜を連れてどこかへ行ってしまい、私は一言も喋らないシェイラちゃんと二人、部屋に取り残されてしまった。

シェイラちゃんは私の誘いに怪訝そうな顔をしながら

「……いいですけど、どこに行くんですか?」

「ま、まぁとりあえず、そこら辺ぶらつこうよ」

どこに行くかなんて全く決めていなかった(何故なら、沈黙が気まずかった&昨日のことで勝手に私が負い目を感じている、ので思いつきを口にしただけだった)

私はシェイラちゃんの問いに適当な答えを返すと、シェイラちゃんはため息をつきながらも立ち上がってくれた。

「まぁ、私は奴隷の身ですから……あなたの言うことには従いますよ、いつだって」

と、部屋から出る前にシェイラちゃんに少々の棘を刺されて、私達は当てもなく学園外をぶらついていた。


フロリアーノが集めてくれたらしい寄付である程度懐に余裕がある私達だが、そのお金はフロリアーノが稼いだもの、つまり未だに私はヒモなのだ。

ヒモであることをを心に刻み、豪遊するようなことは止めよう(されないだろうけど!フロリアーノに失望されたら私は爆散してしまう!)なんて考えていた私に、声がかかった。


「……神花さま?」

振り向くと、そこには金髪をたなびかせた美少女、クララちゃんが立っていた!

「あ、うん。おはよう、クララちゃん」

なんて軽く挨拶を言って、手を振っただけの私に。


クララちゃんは躊躇なく跪き、頭を下げた。

「ご挨拶、光栄でございます!神花さま」

……えっ?

「い、いやいや、クララちゃん!?顔上げて!何!?何ナニ!?なんで急に頭を下げるの!?」


あ!隣のシェイラちゃんが冷たい目をしている!困る!仲良くなりたくて一緒に出かけたのに!

それだけじゃない!周囲の人も皆こっちを見てる!悪目立ちしてる!困る!


「ク、クララちゃん!とりあえず頭上げて!とりあえず!とりあえずでいいから!」


その後も固辞するクララちゃんをなんとか宥め、跪く格好は止めさせた。

「なんで、あんな風に頭を下げたの?皆の前で?」

「……!申し訳ございません!神花さま!人通りの多い通路で行うには些か過ぎた行いでした!」

「違う!違うの!皆の前で頭を下げたのが悪いんじゃなくてなんで頭を下げたのか聞きたいの!」


「それはもちろん、神花さまに会えたからに他なりません!神々しい天鳳の加護を受けし神花さまに!」

そう言ってクララちゃんは再び跪こうとした。

それを再度止めつつも、私は混乱していた。

ま、まずい……クララちゃんが何を言っているかわからない……言葉は分かるのに、話が通じない……


そんな風に私が混乱していた時、後ろでそのやり取りを見ていたシェイラちゃんがポツリと

「……天鳳?」

とだけ呟いた。

「あ!天鳳教……ってことは、クララちゃんは?」

「はい、私は平等で平和ある天鳳教の教えをフロリアーノさまから授かりました」


……なるほど。

だからさっきの行動を……まぁ、少し極端な気はするけど。

フロリアーノが今何をしているかは気になるけど、でもまぁ、今日の夜にでも聞けばいいか……それより

「そうだったんだ!……ねぇ、クララちゃん?」

「はい、何でしょうか?」

クララちゃんは敬礼しながらそう返事する(後にシェイラちゃんから教えてもらったが、あの敬礼は王族に対してしかやらない程重い意味を持つらしい。

永遠の誓いだかなんとか……シェイラちゃんはクララちゃんの敬礼を見て、私の背後でドン引きしていたらしい)


「いや、大したことじゃないんだけど、一緒に買い物でもしない?って」

そりゃね、もう信者なんだし、優しくした方がいいでしょ!それに、この目的のないお出かけも、クララちゃんと一緒なら何かあるかもしれないし!

その言葉を聞いたクララちゃんは、大きく目を見開いた後

「光栄です……!どこへでも、お供します!」

と言いながらまた膝を着けようとした(流石にシェイラちゃんと私で止めた)


「それでさ、クララちゃんはさっき何をしようとしてたの?」

私達3人は横並びになって歩いている。シェイラちゃんは未だに私の影に隠れてあまり喋らない。前々から思っていたけど、シェイラちゃんってだいぶ人見知りだよねぇ……でも、何か辛い過去とかあるのかもしれないし、そっとしておいてあげよう。ただ、クララちゃんとシェイラちゃん、今日で2人とも仲良くなれるといいな。


「はい!私は先程、フロリアーノさまから頼まれたものを買い終わり、学園に帰る所でした!」

あぁ、そう……フロリアーノはクララちゃんに何を頼んだんだろう。いや、それも気になるけど、やっぱり気になるのは……


「その、クララちゃんはずっと、その……敬語なの?」

うーん、何かやっぱり、出会った頃の眩しいクララちゃんが忘れられないというか、違和感があるんだよなぁ。

「はい!そのつもりです!やはり、神花さまに敬意を表すにはこれくらいは!」

ど、どうしよう……私としては、敬語だと距離を感じるし、前みたいに少し砕けた優しい敬語の方が、クララちゃんに合うしなぁ……

私がシェイラちゃんに目線を送ると、シェイラちゃんは(あなたの好きにしなさいよ……)と伝えてくれた気がしたので、私は少しワガママを言ってみることにした。

(まぁ、私のワガママ癖はかねてからなので……)


「でも、少し距離を感じちゃうな。私、クララちゃんともっと仲良くなりたいと思ってるんだけど……」

そう私が言うと、クララちゃんは顔を真っ赤にして、

「は、はい!それなら、だ、大丈夫ですよ!敬語、やめます!」

なんて気負った顔で言う。

これは、まだまだ先は長そうかな……


さて、場面も変わり、私達三人はクララちゃんお勧めの劇場で舞台を見ていた。

壇上では二人の男性が一人の女性を取り合って剣戟を交わすシーンが演じられている。

……あ、逸れた剣先が女性の方に向かって……

あ、あぁっ!


…………

バッドエンドに落ち込んでいる私を尻目に、シェイラちゃんとクララちゃんが小さな声で話している。

「あの演技、私の故郷で見たものと違いました……凄いですね、この街の演者は」

「ええ……あちらの方は、帝国一とも評されているそうで……私も、何度か劇場に足を運びましたが、直接見られたのは今日が初めてです」

クララちゃんは恐らくシェイラちゃんに合わせて小声で喋ってくれているのだろう。やっぱり、私(というか天鳳教)が絡まなければ優しいだけの子なんだけどなぁ。


それはそうと、どうやらあの演劇はこの世界で昔から広く伝わっている英雄譚を元にしたものらしく、殆どの人はおおよそのあらすじは知っているらしい。

そう、つまり、バッドエンドに心を痛めているのは私一人……

「神花さま、大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫……ちょっとびっくりしただけだから」

「……ほら、神花。そこで水汲んできたわよ、飲みなさい」

しゃがんでシェイラちゃんがくれた水を受け取り、そのまま飲む。その間もクララちゃんがずっと背中をさすってくれていた。

「神花さまは優しいのですね、演劇の登場人物に感情移入してしまうなんて」

「まぁ、あの英雄譚は過去に本当にあったことが元になっているらしいから、本当の出来事みたいなものよ、あまり気に病まないの。もう数千年前のことなんだから」

私は、結局、涙目のまま二人に慰められて、劇場を後にし、自分の部屋へと戻った。

うわ〜ん!かなしいよぉ〜!

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