第18話 ( ◜ᴗ◝)
「え!じゃあ真夜ちゃんもあの交差点付近で死んじゃったの!?」
「ええ……あなたの死んだ場所に献花されていてね……それに目を取られていたら、こう、階段から足を踏み外して」
「あははー!じゃ、もうあの交差点は呪われてるとかの噂が立っているかもね!」
「それくらい立っていいのよ。だって、若い女子二人が立て続けに死んだのよ?呪いの二つ三つ起きたほうがいい」
私と真夜ちゃんは、カフェで談笑していた。
真夜ちゃんの顔にはまだ涙の線が残っているけど、その口の端は笑っていた。そして、相変わらずの鋭い目つきも戻ってきていた。
「そうそう、あなたの創った宗教……それ、詳しく聞かせなさい」
「ひぇ、駄目出しされそう……」
「いいから」
私が両手を右往左往させながら語り終えると。
「……そう、全く、なっていない宗教ね」
「ひぇえ……」
「……でも、いい宗教なんじゃない?きっと」
私が思わず笑顔を浮かべると、真夜ちゃんもつられたように笑顔を浮かべた。
「でも、それならあなたが教祖ってこと?」
「まぁ、一応は……?」
真夜ちゃんは私の頭のてっぺんから胸ほどまで視線を往復して走らせて。
「カリスマがない」
「うっ」
私がダメージを受けたように胸を抑えると。
「心花は見た目はいいもっと胸を張って……その短い髪も、教祖として見たらいい」
「あ、ありがとう」
「でも……」
私が頭にハテナマークを浮かべると
「名前が少し地味よね、心花って」
「あぁ……それね」
確かに天峰って苗字は格好いいけど、実際その苗字は親が勝手につけた(というより教団に命じられて付けた)らしい苗字だから、あまり好きじゃないし(だから天峰呼びはあんまりしないで欲しい……できたら……)
心花って名前も、多分教団関連の何かなんだろうな、とは思うから、余り好きじゃない。
でも今更改名もなぁ……
「……そうね、苗字は、鶯なんて、どうかしら?」
「え゛っ」
「冗談よ。苗字なんて、この世界では余り呼ばれないでしょうし、今のままでいいでしょう」
や、やめてほしい!そういう冗談は!ただでさえフロリアーノの実家を捨てさせた責任を負っているのに!
これ以上の責任は背負いきれない!一人でも荷に余る!
「でも、そうね……名前を、変えるのはどう?」
「でも〜いい案がないよ〜」
いけない、フロリアーノの口調が移ってきた。私は自分の頬を軽く叩く。
「何か案はある?真夜ちゃん?」
「……あぁ、そうね。一つ、いい案があるわ」
真夜ちゃんは少し顎に手を当てた後、にやっと笑って答えた。
「神花、なんてどう?」
その実用性と中二的な格好良さを兼ね備えた案を聞いた私の瞳は、キラキラと輝いた。
「おかえり!フロリア!シェイラちゃん!」
私は扉を開け放つと、快活に挨拶した。
「え、えぇ……おかえり、心花。あなたは多分、ただいま、だと思うけど」
「おかえり〜心花ちゃん、元気だね〜」
「こちら!鶯 真夜!私の昔からの親友だよ!」
「みなさん、すいません……鶯 真夜です」
私が扉の裏から真夜ちゃんを引っ張り出すと、真夜ちゃんは落ち着いて挨拶していた。大人っぽい……いや、私が子供っぽいのか?もしかして、この集まりで一番子供っぽいのって私か?
「あぁ、あなたが……」
「真夜ちゃん、だよね〜心花ちゃんから話は聞いてたよ〜心花ちゃんの友達なら、私達も歓迎だよ〜」
「真夜は私と同じ出身だから!フロリアの知らないことも知ってると思うよ!賢いし!」
隣の真夜が、えっ?みたいな顔をしたけど、その外見で馬鹿ってことはないだろう。まぁ、外見からしたらフロリアーノが勉強ジャンキーなんて思いもしないし、関係ないかもしれないけど。
「それとね!」
私が人差し指を天高く掲げる。
「これから私!心花じゃなくて、神に花、神花に改名したから!」
ドヤ顔でそう宣言した私に、届いたのは
「えぇ……?」
というシェイラちゃんとフロリアーノの困惑顔だった。
「心花ちゃん……あ、ううん〜神花ちゃんは、これか
神として宗教を広めていくつもりなの〜?」
「神を名乗るなんて、あなた……不敬も度を過ぎない?天罰が文字通り下るわよ、それも、千年ぶりくらいの規模のものが」
フロリアーノとシェイラちゃんの反応は悪かった。フロリアーノは困惑しながらも受け入れてくれようとしているが、シェイラちゃんはだいぶ拒否反応を示している。
その予想外な反応に、私が戸惑っていると。
「でも、神花は神なんて嫌いなんでしょ?ならいいじゃない、別に」
なんて、少し煽るような(私の気のせいかな?)口調で真夜が私に話しかけてきた。
「別に、その考えに同意する必要はないでしょ。お互い、手段が一致するなら一緒にやれば。じゃない?神花?」
な、何か少し攻撃的じゃない?真夜ちゃん?いや、私の気のせいかも……思えば、真夜ちゃんはずっとこうだった気もする!さっきまでのしおらしい様子の方がむしろ真夜ちゃんらしくなかったかも!
で、でもやっぱり独占欲みたいなのが、漏れ出てない……?気のせい、かな……?
「私は〜いいよ〜神花ちゃんと目標は知ってたし〜そのためなら、なんだってするよ〜」
フロリアーノがそんなことを言いながら私の空いている方の手を握ってきた(もう片側には真夜ちゃんがもたれかかっている)
シェイラちゃんはため息をずっとついているが、それ以上何も言うつもりはないようだ。
……まぁ、シェイラちゃんは一応とはいえ、私とフロリアーノの奴隷ってことになっているから、断れないのかもなぁ……
今度、シェイラちゃんにも何かお礼しないとなぁ……
やっぱり現代日本で育った価値観としては奴隷はあまり好きじゃないわけですよ!出来るなら、シェイラちゃんとも対等な関係を築いて、その上で色々手伝って欲しい!特に、内面が大人ってことも分かったし、それなら子供と違って、もっと対等な関係を築きやすいはず!
……だから、シェイラちゃん!
今私の両手をそれぞれ握って牽制し合っている二人を、なんとかしてください!!!
……なんて私の無情な思いは届くはずもなく……
私は二人を両脇に抱えたまま、その日一日を過ごしたのだった……




