酷吐く
「僕は……卒業してからの葵を知らない……だから、これからは君を1人の女性として見たい。だから友達からじゃ駄目……かな?」
「友……達……」
「うん……」
友人や仲間の間でよく使われる言葉。この大事な時に限っては意味が違う。これは振られる時に使われる断り文句の台詞じゃないか。
「あ……そうか……友達からか……わ、分かった。 うん。 友達から始めようケンちゃん。 これから宜しくお願いします」
「うん。 宜しくお願いします葵」
ケンちゃんの優しい眼差しが心に深く突き刺さる。
私は何を期待していたんだろう。
勝手に盛り上がって、大勢いる前で告白して。迷惑を掛けてまでする事だったのか?
自分の積み上げてきたものを台無しにする無鉄砲さに腹が立つ。
ケンちゃんとは当然のように付き合えると勘違いしていたし、ケンちゃんにだって相手を選ぶ権利だって当然あるだろう。
それが私以外にも等しくあると何故気づかなかった。
この馬鹿やろうが。泣きたい気分だ。
沈黙した2人の間に耐えかねたのか美紀が割って入った。
「ごんねぇ野崎君。 私、葵とは同じクラスの林 美紀って言うんだけど、この馬鹿が迷惑掛けちゃったみたいだから連れて行くわぁ」
「えっ? あぁ……はいっ」
「み……美紀! いたのか?」
「いるに決まってるでしょ! ズカズカ教室に入っていって好き勝手騒がせて。 少しは考えなさいよ」
「あ……ああ。 ごめん」
美紀に手を引っ張られながら2人は教室から勢いよく出て行った。
取り残された健太は呆気に取られたかのように暫く動けずに、美少女2人が出て行った廊下をずっと眺めていた。
◇
2人しかいなくなった廊下を歩きながら葵は静かに口を開いた。
「美紀……私振られたわ」
横目で葵をチラリと見て、今にも泣き出しそうな葵に呆れたような顔して言った。
「振られてないでしょ」
「振られたに等しいだろあの台詞は! 友達だぞ! 友人と一緒の扱いだぞっ! 何をどうしたら友達から恋人になれるんだ。 どう足掻いても不可能だ! よしっ、死のう!」
「一旦落ち着け! 普通は友達から期間を得て恋人になるんでしょ! 何もおかしい事ないじゃない」
「あの台詞は断り文句だったろ」
「私は違うと思ったよ。 それに感心した」
「何に感心したんだ。 私は心臓が止まるかと思ったのに」
美紀は立ち止まり葵の顔を真剣に見て答えた。
「だって普通の健全な男子なら葵の美貌に靡かない訳がない。 女の私が言うのもなんだけどアンタにはそれくらいの魅力がある。 普通じゃないのよ」
「……変人みたいな言い方するな。 そうなる為に努力はしてきたつもりだからな」
「良い意味でよ。 それに努力してるのは知ってるわ。 だから、アンタの魅力を知りながらちゃんと友達から向き合いたいって言ったあの子に感心したのよ。 恋人からでもいい筈なのに、友達からって。 それってちゃんと葵を見てくれようとしてるからじゃない? 私が男だったら即答してOKして即日中にパコってる自信があるわよ」
「うわ、キッッッモ!!」
軽蔑する眼差しに美紀はニコリとしながら
「ふふ、少しは元気出た?」
「あ………」
美紀はずっと私を励ましてくれていたのか。
そう言えばここのところずっと相談に乗って貰ってる。高校からの付き合いだが、ここまで深く私の事を話したのはケンちゃん以外、美紀が初めてだ。
何か癪だが、美紀とは始めから妙に馬が合っていたな。
「ありがとう美紀。 少しは元気でたよ」
「恋に無鉄砲過ぎるのよアンタは。 雪女のあだ名も変えた方がいいわ。 暴れ猿とかに」
「うるっさいわ! 一言余計何だよ」
「なら作戦会議するわよ。 あんたの恋を実らす為のね」
「良いのか?」
「ここまで振り回しておいて何を今更気を使ってるの。 なかった事にされたら逆に気持ち悪いわよ」
こうしてケンちゃんを振り向かす為の作戦が始まった。
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