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醜いアヒルの子

 今でも思い出すと小学生の頃はある事がキッカケで心が(すさ)んでいた。

 何もかもがどうでもよくなって、自暴自棄になって、自分の感情が全くコントロール出来なくて、沢山の人に迷惑をかけた。

 そんな自分の暗黒期とも言える状態だった時に、立ち直るきっかけを作ってくれたのがケンちゃんだったんだ。


「ちょっと葵、あんたみたいな目立つ女がいきなり教室に行ったら向こうもまたビックリするんじゃないの? せめて今回は校門前で待つとかで出来ないの?」


「そんな女々しい事したくない。 それに部活の勧誘やらで私達上級生が直接1年生の教室に出向く事なんて今の時期は普通だ。 周りに混じって話せば気付かれない」


「普通に気付くわ。 どう見てもアンタは運動部の体型(なり)じゃないでしょうが」


「失礼な奴だな。 運動はしてないがそれなりには仕上げてる」


「そう言う話じゃないのよ。 葵は良い意味でも悪い意味でも目立つから考え直せってこと」


「その提案は無理だ。 もう着いたから」


「はぁ~。 駄目だこれは」



 午前中で授業を終えた1年生の教室では、既に上級生達も1年生に交じり勧誘活動が始めていた。サッカー部や、テニス部等の人気スポーツより文芸部の方がどちらかというと必須そうだ。

 賑やかになった教室の雰囲気に、明らかに異彩を放つ彼女が入って来たことにより教室がどよめく。


「うわ……めちゃくちゃ可愛い人が来たんだけど」

「誰あの人? モデルみたい」


 私の事を可愛いとかモデルみたいとか言われる事に悪い気はしない。そうなる為に努力してきた事だから。それもこれも目の前にいるケンちゃんを確実に振り向かせる為の行為だったのだから。


「ケンちゃん……私のこと覚えてない? 小学生の頃、ずっと一緒に遊んでた……葵だよ」


 正面に立って話す葵に、健太は相変わらず信じられないといった様子で戸惑いを隠せずにいた。


「えっ……と……昨日は人違いって思って急に帰ってごめん。 本当にいきなりの事で頭が追いついてこなくてさ。 それに今も心の中では少し戸惑ってるんだ。 本当に……あの葵……なんだよね?」


「そうだよ。 正真正銘あの時一緒に遊んでた橘 葵だよ」


「あのハイエナみたい格好をした葵が、こんな可愛い女の子だったなんて、ちょっとまだ信じられないよ」


「あの頃は身なりも全然気にしてなかったから……だから、またケンちゃんと一緒に遊んだり、過ごしたりしたいんだ」


「う……うん。 僕でよければ」


「それで………えっと………その……よければ私と付き合って下さい。 ケンちゃん」


 耳を傾けて聞いていた野次馬と共に一斉に声をあげた。


「「 えっ……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!! 」」

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