使用済みのティッシュ
「えぇぇ……何があったらそうなるのよ……」
次の日、教室に来た美紀は変わり果てた教室を見てギョッと驚いた。それもそのはず、私が丸めて捨てたありえないほどの山盛りになったティッシュの残骸が机の上だけ留まらず、周りにまで転がって被害を出していたからだろう。
「うわぁ、使用済みのティッシュ……汚っ……」
「うぅぅ……美紀……私はもう……ダメかもしれない……」
自分でも信じられないほど涙が昨日の出来事から止めどなく溢れてくる。記憶を遡ってもこんなに泣いたのなんて覚えてない。このまま泣きすぎて死んでしまうんじゃないかと自分でも心配になるほどだ。周りには迷惑を掛けている自覚はある。でも仕方ないじゃないか。ずっと涙が止まらないんだもの。
「はぁ……。 取り敢えず早く授業が始まる前に片付けなよ。 何か男共がどうしたらいいから分からずに周りでペンギンみたいにオロオロして騒いでるし、それにこの使用済みのティッシュを持って帰られて変な事に使われてもイヤだしさ」
ざわついている教室の中、溜め息をつきながらも美紀は教室の隅に置いてあるゴミ箱を取ってきて、一つずつ汚そうな顔をしながらも片付けをしてくれる。
本当にありがたい。
「うう……分がった……」
「ホント何がどうなったらそんなに泣くほどの事が起きるのよ。 しかもこの量……。 涙だけで脱水症状になるわよ……。 まぁ、でも葵も泣く事あるんだね、意外だったわ。てっきり血も涙もない女だと思ってたのに」
確かにそうだ。自分でもそれには1番驚いてるくらいだ。
「人を変人みたいに言うな……」
「いや、充分過ぎるほど変人でしょ貴方は……。 取り敢えず聞かせてよ。 何があったか……」
◇
昼休みになり、普段ならお腹は減る筈だが、昨日の出来事もあり食欲はなかった。仕方なく購買で適当に買ったパンを口に入れるが味はよく分からない。それだけ精神的に参っているのだろうと痛感する。私にはそれくらい衝撃的な事が起きたのだ。
気分が晴れる訳もない。だが口に出して少しでもこの感情を紛らわしたかった。そんな気分だった。
「昨日ケンちゃんに会ったら私の存在を忘れられてた……」
「え……いや……ちょっ……待って……」
昨日の出来事を美紀に説明すると、真剣に聞いたかと思われたのは最初だけで、途中からは今にでも笑い出しそうな顔を見て、葵は眉を潜めた。
「……何が可笑しい? 可笑しい事なんて一つもなかっただろう」
「くっ……ぷふっ。 何年も会わなかったら顔を忘れられてたって……それが……笑わずに……ぷふぅっ!!! あぁ……苦しいっ……」
「何がおかしいっ!! おかしいのはお前の頭だろうっ!!!」
机をバンッと勢いよく叩き、これでもかというほど思い切り美紀の首を絞め上げる。
こんなに腹が立ったのは久しぶりだ。人が悲しい思いをしてるのに不幸を笑うなんてどうかしてる。こんな奴、私の友ではない。いっそこのまま絞殺してやろうか。
「ごめ……ん……なさ……い。 私が悪かっ……た」
「いやいやまだ足りないだろう? このまま天国まで連れてってやる」
「いえ……もう充分……です」
ぱっと手を離し、咳き込む美紀を見ながら葵は溜め息をつき席に座り直すと、喉を痛そうに擦りながら美紀は問いかけた。
「でも、不思議よね。 それだけ仲のよかったあんた達なら忘れる訳がないと思うんだけど。 まさか妄想なんかじゃないわよね?」
「そんな訳ないだろう。 魂に刻まれるほどの仲だった」
「魂って……どんな出来事があれば魂に刻まれるほどの事が小学生の時に起きるのよ……」
そう、ずっと一緒にいた。今でも鮮明にあの頃の事を思い出せるほどに。だけど私とケンちゃんは学年が違った。校内に入ればそれこそ授業が終わるまでお互いは別々だ。だからだ、そんな事をいちいち確認する事もなかった。だからこそケンちゃんと久々に会った時に気になる反応があった。
「昔の私は短髪、短パンで常に男の子みたいの服装や、振る舞いだった……。 だから私が声をかけた時、私の事を男だと思ってて気付かなかったの……?」
ポンと手を叩いて腑に落ちたような顔をして美紀が反応して見せた。
「うぅん! 当にそれだわ」
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