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殿下、あなたの親友の蒼炎の騎士さんがなんかぐいぐい来て困ります  作者: 蔵前
最愛の君の純潔を守りたい俺に聖女な君こそぐいぐいくるのは俺に喰われていいってことなのか?
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大人しくダンジョン攻略に行くべきでした

ミハマでは一番の高級宿の一室で、それもプライベートビーチを持つ部屋で、ディは俺という同伴者がいるという事に無頓着なのか。それとも俺という人間は、ディには時々存在感を失うデカいだけのオブジェなのであろうか。


俺の危険度がわからないディは、ぽぽぽんと服を脱ぎ棄てマーフォークの服姿になったのだ。


一分一秒でも早くディの部屋を出たがったのは、俺がディへと盛り上がったまま落とせなくなった情欲の火を冷ましたかったからだ。

そんな俺の葛藤など、彼女の前には全くの無力か。


畜生、最初から裸同然姿よりも、目の前で服を脱がれてのその姿の方が俺の股間に集まるでは無いか。何が? と? 余計な発情を起こす血の巡りだよ。


「あ、そうだ」


ディはニヤッと笑うと、俺に向かって何かを投げた。

俺の手の中にあるそれはディの髪色のアッシュブラウンの布。

開いて見れば、腿の半ば程度の長さしかないショートパンツだった。

マーフォークの布地のようで違う?


「これは?」


「自作したの。いくら男性型人魚(マーマン)用でも、マーフォークの服じゃ男の人にはきついよって、マリさんが。それで私が付与魔術使えるから、男の子達のは自分で作ろうかって縫ったの」


「これ、君の手作り?」


「うん。水遊び用のマーフォーク風お洋服。ええと水着? それでせっかく自作するならって、マーマンのぴちぴちした奴じゃなくてショートパンツっぽい形にしたんだ。嫌だった?」


「喜んで着るよ。すぐに着替える」


「うん。先に出て待ってる!!」


ディは嬉しそうに笑うと、そのまま部屋の大窓を開けてビーチにと出て行った。

俺はディの手作り服に着替えると、俺を待つディの元へと飛び出した。


青い空にどこまでも続く青い海。

砂浜の砂は白というよりも銀色に近くって、ディが纏うマーフォークの服の銀色こそ彼女が海の妖精か女神である証拠みたいに俺に見せた。


打ち寄せる波が来る度に、ぴょんぴょん跳ねている可愛い生き物。

美しくて可愛くって。


俺はディの姿に胸を貫かれ、俺の棒が跳ねあがる。


ありがとうディ。


俺はマーマン風水着を作ってくれたディに感謝を捧げる。

君には思いもかけずだろうが、男どもが女性にマーフォークの服を着せる癖に自分が着ないのは、マーフォークの服の形では己の棒がぼっきん折れるからなんだよ。


「ジェット、はやくはやく!!」


「大興奮だね、ディは」


「ここは最高なんだもの!!ありがとうジェット。ここに来ようって言ってくれて。私はミハマって町は知らなかった。ダンジョン十六階にしか綺麗な海風景は無いって思ってた。連れてきてくれてありがとう!!」


ディは俺に飛び掛かり、俺はディに抱き着かれたそのまま海へとダイブした。

ぜんぜん浅瀬で、海の世界を堪能どころか砂場で水浸しになっただけだが、俺の体のほてりを冷ますにはこれしかない。


「きゃあ。冷たい。それでしょっぱい!!聞いていた通り、海ってしょっぱい。ダンジョンに行かないことにして良かった。ダンジョンじゃ海の水を舐めるなんて出来ないもの」


「嘘。君は本当に本当の海に来た事が無かったの?」


「うん。森や山は多いけど、海は初めて。それに影は人目のある所には行っちゃいけないから、色んな所に行けるのはダンジョンだけって思ってた」


「これがりゃおっりぇがどごにあぶばばば」

これから俺がどこにだって連れて行くと言ってやりたかったのに、空気を読まない波の特攻を受けた。口の中に砂混じりの海水が流れ込む。大波の洗礼を受けた俺達は、特にディはもう大喜びのお笑いだ。


それからのディは、子供のように笑い、子供よりも無邪気に遊んだ。

フライングフィッシュが飛んでこない平和な砂浜でお城を作ったり、自分が作った魔導ボードで沖まで波乗りしたりと。

もちろん俺は、ディと一緒にお城を作ったし、ディと一緒に沖まで魔導ボードで競争したりしたさ。


すっげええ幸せ。


「じぇっと。私転がる。日焼け止めクリーム塗って!!」


「興奮しすぎてカタコト喋りになってるぞ。子供か」


「はやく!!」


ディは砂場にごろりと転がる。

俺はそんなディに苦笑しながら彼女の背中に手を当てる。

あ、転がる奴のせいでお尻に触れてしまったじゃないか。


「ハハハ。君だって幸せのふわふわん、だよ」


ディの言う姉やディアドラのふわんふわんがわからないが、俺の手の平が感じるディの体は俺の気持をふわんふわんにさせる、ふわんふわんだ。

嬉しそうにはにかんだ表情のディに、俺の胸はきゅうと締め付けられる。


「さあ、じっとして。上手にクリームが濡れない」


「うんうん。ジェット。私もジェットの背中にクリーム塗ってあげる。ジェットの筋肉って綺麗だよね。以前送ってくれたジェットの背中の画像はお気に入りだよ。ジェットの筋肉ひとつひとつ指でなぞって堪能したい」


ああ!!

ダンジョンに行くべきだった。

俺はフライングフィッシュに刺し貫かれるべきだった。


平和なここにこそ、今の俺を止められるモノが何も無いじゃないか!!


なのに数時間後には、俺達には寝るための夜が来る。

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