ふわんふわんってなにそれ可愛いって食べてよい――――わけないんだよ!!
俺は覚悟が浅かった。
冷静を保つことぐらいできるかと思ったが、現実は脳が作り出したイメージなど簡単に凌駕する凶悪さを時として発揮するものだったのだ。
「ジェット、どうだ!!」
扉を勢いよく開けて登場したディは、俺の脳みそで渦巻く俺が作ったエロッチ服を着たディの姿を一瞬にして一蹴した。
明るい光の中で、ディの美しく滑らかな肌が、光を放っているかのように煌く。
細い体と華奢な手足は童話の挿絵の妖精達を彷彿とさせる。しなやかな筋肉によって造形でされた曲線美は俺が理想とするラインを描いて美しいばかりだ。
そんな彼女は胸が小さかろうが……うそ、胸のふくらみに谷間ができそう?
ダンジョンで脱いでくれたから、俺はディの上半身は知っているはずだった。
何もわかっていなかったじゃないか!!
ただの裸よりもギリギリ隠した方がエロ度が強まるなんて!!
伸縮性の高い布地のお陰で、美しき丘陵地帯だったそこに谷間を持つ双子山が出来上がっているじゃないか。なんと、胸が寄せてあげられている!!
そうか、ディの胸は俺が両の手で持ち上げすくえば――。
「おうふっ」
俺の色々な場所にディの可愛さが刺さりまくり、俺の足の間をかんかんに腫らす。
ケダモノにメタモルフォゼしかけた俺は悲鳴を上げるしかできなかった。
銀色という俺色を身に纏った、俺の夢見る妖精がそこにいる。
幻で終わらぬように、俺は彼女を捕まえ抱きしめねば!!
なんて俺にさせるわけねえ!!
俺がディに飛び掛からないように、俺はぎゅっと目を閉じ全身に力を籠める。
噛みしめた奥歯から血の味が?
俺はどんだけ頑張ったんだよ。
「残念だったな。これが私だ。夢の無い体でごめんよ」
残念だった? 夢のない体?
俺が夢見た理想の体だよ?
俺はがっかりした声を上げたディへと視線を向ける。
彼女は、なんと、恥ずかしいを通り越して情けなさそうにしているじゃないか。
どうした事だ?
「…………」
え? なんて言った今。
私はふわんふわん無くて? なにその可愛い言い方。
「……ジェットは男の子の方がやっぱ好きなんだね」
「男の理性試して、耐えた俺を称賛どころか扱き下ろすってどういう了見だ?」
大好きな彼女に脅す声出してました。
ディに飛び掛かって色々迸らせたい俺を抑えている俺を評価するどころか、ディに性欲感じない人とディが俺を勘違いして来るのは俺への最大の侮辱である。
いいか、俺は――え?
俺は再びディの可愛いにとすとすっと刺し貫かれ、俺の何処かの器官もディを刺し貫きたいと再びの雄叫びを上げることになった。
「おうふっ」
痛みと衝動に耐え切れずに俺は叫ぶ。とにかくディに飛び掛かることないように。俺はソファの座面に身を沈める。ディから背を向けて。
だって、可愛らし過ぎだろ?
ディは今何て言った? 脳よ、再現しろ!!
「だって、マリさんはこの服を着たらヴァルマーさんが飛び掛かって来たって言ったし、ディアドラから男性用のマーフォークの服を貰った殿下は、ディアドラとの新婚旅行に海のあるミハマに離宮建てるって決めたよ? でもジェットは? 私見て変な声上げただけでソファに座ったまま全然動かない!!」
ディは拗ねたのか? 俺が君に飛び掛からなかったから。
かっっわい過ぎだろ。
腐った姉と性獣な義兄はどうでもいい。
惚れた恋人の為に税金がかかる管理が必要な建物を手順無視で増やそうとしている、賢王から愚王の道まっしぐらな殿下についても今はいい。
抜粋、そしてリピート、だ。
ジェットは私見て変な声上げただけでソファに座ったまま全然動かない!!
ああ音声付映像で脳内以外でも永久保存したい!!
「ジェット? どうしたの?」
バシッ。
俺は俺に触れようと伸ばされたディの手を振り払ってしまった。
「三歩下がれ。俺に触るな。近づくな。地獄を見るぞ」
俺の獣は突撃カウント始めてんだ。
今の俺は必死に獣を抑えつけているんだぞ!!
俺より戦場の場数を踏んでいる君が、どうして自分がとてつもない危機にあることに気がつかないんだ!!
俺は君を襲ったらその後は確実に死を迎えねばならない、カマキリの雄なんだぞ? 俺を殺しに来るのは君の父親だけどな!!




