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殿下、あなたの親友の蒼炎の騎士さんがなんかぐいぐい来て困ります  作者: 蔵前
最愛の君の純潔を守りたい俺に聖女な君こそぐいぐいくるのは俺に喰われていいってことなのか?
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私って女の子なのにふわふわじゃないの

私は鏡の中のマーフォークの服に着替えた自分を見つめ、やっぱりなんか違うなあとがっかりした。


この服をお揃いで買った親友のディアドラが着てみた感じと違う。

もちろんこの服を買う機会を私達に与えた闇の女王(ジェット談)こそ私達が買った服よりもきわどいものを買ったが、マリさんが着た感じとも違う。


ディアドラやマリさんの体は、太ってはいないし肌だってつるんと光輝くような質感にみえるのに、どうしてもふわふわふんわりして見えるのだ。

触り心地が私と違ってマシュマロみたいだから?

私は自分の脇腹にぷすっと指をさし、フッと笑う。


「硬いぜ」


親友のディアドラのお腹や、ジェットのお姉さんのマリさんのお腹と全然違う。


どうして二人のお腹の感触を知っているか?

殿下は子爵令嬢なディアドラと結婚するために、それはもう色々策を練られていらっしゃいましてね。まず身分差の解消に、ディアドラをシャムル侯爵家の養女にしてしまったのですよ。今やディアドラはシャムル侯爵令嬢であり、マリさんの旦那の妹になったのでマリさんの義妹だ。


そしてマリさんは可愛い義妹が出来た事に大喜びで、妹と遊ぶのよ!!と、もう一人の義妹(候補)な私を呼びつけてはシャムル家にお泊りさせてくださる。


大きなお風呂で三人一緒、や、ドレスの着せ替えごっこなど、完全に裸な付き合いだ。――それで私は女の子がふわんふわんな存在だって知った。


二人とも出ている所は出ている体だからフワフワに感じるんじゃない。

適度な運動で締まっているお腹や細い二の腕だって、なんか、柔らかい、のだ。

思わずディアドラを抱き上げてしまったほど。けれど抱き上げて、ふわん、という感じで驚いた。

羽みたい。

え、嘘、と。


ディアドラを抱き上げた私は「自分はふわんふわんじゃない」と混乱し、ついでに過去の出来事を思い出し、笑えねえ、と愕然となったと思い出す。


ジェットがなかなか私を女だって認めなかったダンジョンでの記憶。

あれはジェッドが脳筋で思い込みが激しい奴だから、では無かったのだ。

真実は、私が女の子らしいふわんふわんな体をしていないから、ジェットが私を女であると信じられなかった、だったのだ!!


「でも、ジェットは男な私に突っ込む気でいたんだし、ふわんふわんな体じゃ無くたって気にしないんじゃないかな。ほら、アダム・ゴドフリィは、パレルモ姐さんのおっぱいが偽乳でも愛は変わらなかったじゃないの」


「胸って惚れた男に揉んでもらうと成長するらしいよ。あ、おっぱい魔人だったパレルモの大きな胸が無くなったのは、ゴドフリィが胸を揉みすぎたからだっけ。触ると減るって方が真実なら、ディ、気を付けろ。ジェットに揉まれたらお前のささやかな胸は無くなるぞ」


脳裏にマイナムによる揶揄いが蘇った。

あの野郎、ジェットをジェットと呼ぶようになってから本気で遠慮がない。

でも、と私は自分の体を今一度見下ろす。


胸に視界が遮られるなんて無く、ペタンコなお腹から爪先まで全部見下ろせた。

このささやかな胸なんか、ちょっと前まで私には何の問題も無かった、のに。

このしなやかな筋肉で出来上がっているこの体つきについては、王家を守る影として作り上げた最高の肉体だと自負もしていた。


私が猫のように音を立てずにしなやかな身のこなしができるのは、鍛錬によって作られたこの体があってこそなのだ。


自慢の肉体だったはずなのに!!


「この体が鳥ガラみたいだって悲しくなる日が来るなんて」


でもジェットは、娼館で娼婦の体に無理矢理触らせられたとき、柔らかすぎで嫌だったって言ってた、よね?

だったら?


「違う。あの時のジェットは私が男の子だと思い込んでいただけだった。だから今は私を本当の女の子だと受け入れてるから、そしたら女の子として見たらやっぱ違うって思うかな」


ああ、ちくしょう。

私は私であれば良かったというのに、ジェットのせいでジェットの好きな自分を探して自分が不確かになっている、だなんて。


あああ、格好が悪い。


男によって変わる女がいるって聞いて、自分が無くて情けないってちょっと馬鹿にしてた自分が傲慢だってわかった。ごめんなさい、だ。

私はもう一度鏡に映る自分を見返し、なんて不安そうな顔をしているのだと笑う。


「この大馬鹿。何年私をやっているんだ。私は私。元は一人でも大丈夫なように老後の生活を考えてたりしてただろ。ジェットと恋人じゃなくなったって、ただの友達に戻るだけ。友達に戻ったら、ダンジョンでバカ騒ぎすればいいんだ」


さあ、行くぞ!!


私は決死の覚悟で部屋を飛び出し、ジェットを残して来た居間に向かった。

もう照れとかなく、本気の覚悟で部屋に飛び込む。

さあ、これが私だ。

ふわんふわんなどどこにもない私の肉体だ!!


「おうふっ」


居間のソファに物思いにふける感じで深く座っていたジェットは、居間に飛び込んだ私を見た途端に今まで聞いた事もない変な悲鳴? 叫び声? をあげた。

その上ジェットは両手の拳をぎゅっと握り、己を押しとどめるようにして全身にぐっと力を込めたのだ。

――そんなに受け入れ難かった?


「残念だったな。これが私だ。夢の無い体でごめんよ」


しゅっとジェットの力が抜けた。

そしてジェットは本気で意味が分からない、という風に首を傾げた。


「夢? 残念? それで君が俺に謝る意味がわからないのだけど」


「え、だって。私はふわんふわん無くて男の子みたいな……あ、ふわんふわんが行方不明でも構わないのはもしかして、ジェットはやっぱり男の子が好きだったんだね」


それでこんな女を強調できる服を着た私が耐えがたかったんだね。


「男の理性試して、耐えた俺を称賛どころか扱き下ろすってどういう了見だ?」


久々に聞く、ジェットの低~い怖い声。

うわ。眉間で眉毛がつながっちゃったくらいに、眉根を寄せて睨んできている。


「だって、マリさんはこの服を着たらヴァルマーさんが飛び掛かって来たって言ったし、ディアドラから男性用のマーフォークの服を貰った殿下は、ディアドラとの新婚旅行に海のあるミハマに離宮建てるって決めたよ? でもジェットは? 私見て変な声上げただけでソファに座ったまま全然動かない!!」


「おうふっ!!」


ジェットは再びおかしな叫び声をあげ、胸を押さえてソファに沈み込んだ。


「ジェット。どうした?」



今さら登場人物紹介

アダム・ゴドフリィ

ゴドフリィ宰相の息子 ゴドフリィ伯爵家令息

生徒会役員会計

さらさらした淡い紫の髪は毛先に行くにつれて金色に光るという不思議なもの。

青紫の瞳は理知的で涼やか。

殿下の為ならば弱者をいくらでも切り捨てられるくそ野郎

という設定がマイナムと被る部分ありで登場場面が無く、結局ラストで学園の高嶺の花であるパレルモ嬢を手に入れた猛者として登場してジェットとディの見せ場を奪ってくれた。おっぱい魔人で怖い寮長(姐さん)だったパレルモの胸を揉み減らして倒したということで、男子達に勇者呼びされる。

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