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その後のできごとについて聞かされる

親父殿の腹違いの兄による王都騒乱は、私が彼を細切れにし、召喚された悪魔アモンをジェットと倒した事で終結した。

アモンを倒した事でダンジョン化していた学園は解放され、一気に王国騎士団が学園に突入して生徒達の救助に動いた。アイリス達の捕縛もその時、かな。


また、王国騎士団の手が届かない所への救助は、王都の危機に第四騎士団がタイミングよく帰還したことで事なきを得た。彼等が王都内のロアロア化していた人々への救済や、召喚時に入り込んだ魔獣の討伐などを先頭に立って動いてくれたので、王都は二日経つ頃には平穏を取り戻せたのである。


王国騎士団から第四騎士団が手柄を横取りした様に見えるが、貧乏くじ男が王都の民衆に英雄として認知されたので私には喜ばしいことだ。


一日で生徒の人気者になった講師のアシュトンは、真っ赤なニセモノだったらしいよ。本物は、この間まで僻地の雪山で、白いモコモコ毛皮が高値で取引されるグラッファードグリズリーの討伐をさせられていたらしい。

環境庁の偉い人の奥さんが、グラッファードグリズリーの毛皮のローブが欲しいと強請ったとかなんとか。


マイナムが私にアシュトンにちょっかい掛けるなと釘を刺したのは、ニセモノアシュトンを学園に口利きしたのがコーツ侯爵家だったかららしい。普通に余計な面倒起こすなって奴だ。そして考えるに、ニセモノが私を教室から排除したのは、私との接触が長くなればなるほどニセモノと見破られるから、だろう。

でもそのせいで、穴あき生徒という仕込みバレてんの。


どこまでも無能なおっさん。


さて今日は事件が終わった一週間目だ。どうして今さらこんな話を、殿下とマイナムに滔々と説明されなければいけないのだろうか。


私とジェットはディアドラが療養しているシャムル家に呼び出され、私達こそ知っておくべきだとマイナムと殿下の二重奏を聞かせられているのだ。


「ディ。ちゃんと聞いているかな? 本当の後始末はこれからなんだよ」


殿下は言うや、がっくりと肩を落とす。

私とジェットがくっついてソファに座っている姿を眺めているのは、マリさんによってディアドラから遠ざけられている殿下には見るのも辛いのかな。

ちょっと離れた――られないな。

もっとくっついて来た。


「説明するのが馬鹿らしくなってきた」


「殿下、投げてはいけません。ディへの情報共有は大事です。だって殿下がしろって、なんて言い訳をディに与えてはいけません」


「だな」


マイナムと殿下の掛け合いからわかることは、私のせいで面倒だ? 何か言い返してやりたいが、マイナムも殿下と一緒に今回の事件の後始末で疲れ切っているご様子だ。いつもの柔和な笑みではなくて、貫徹続きで天国が見えている人の笑みにしか見えない。大丈夫か?


ちなみに、ジェットが今回殿下付きの後始末要員から免除されているのは、見習いでも現在王国騎士団員でもあるので、現在魔物がわりに跋扈している小盗賊達の捕縛に王都を駆け回らされているからである。


召喚され実体化したアモンを倒した事で、ジェットは誰もが認めるバルウィン王国で一番の騎士となったはずなのに。冒険者ギルドからはプラチナプレートだって贈られてたはず。


だけど身分は、バルウィン王国王国騎士団見習い騎士のまま。

見習いの肩書きなぜつけると、セレストさんに尋ねたいくらい。

気軽に誰でもジェットを使いまわせるように、なんて返答が返って来たら怖いから聞かないけど。


「えっと、いろいろお疲れ様です。やっぱ人知れずにしなきゃいけない事案だからこそ、苦労は知って欲しいよね。わかります」


「マイナム。この間までこの子の返答を許せたんだが、今日は無神経な奴の戯言にしか聞こえないのはなぜだろう」


「無神経な戯言しか言っていないからです」


「はあ。そうか。完全に過去話で第三者視点を貫けると、そうなるか」


「殿下ももう少し第三者視点貫いて良いのですよ。生徒から死者が二十五名。コーツ嬢達の企みの結果にしては凄惨すぎますが、王太子だからとあなたの責任だって持ち帰る必要など無いんです」


「そうは言うけどね。この事態は結局は私が二度目なんか企んだせいもあるしね」


「あなたがディを助けたからこそ、ディがいる。あなたがディを育てたからこそ、ディはあなたの救出のために校舎内のロアロア化した学生全員をミンチにしなかった。ディを成長させたのはご自分だと、誇っていいくらいですよ」


「ありがとう。君こそいてくれて私は助かっている」


「どういたしまして」


殿下とマイナムは労わり合って微笑み合っている。

だけどなんか、二人に私がディスられている気しかしないのはなぜだろう。


「殿下。私察せないかも」


「うんわかる。だから直に私も言いたいけどね、こんな命令ってしていいのかなって、人間的に悩んでいるんだよ。私はアーマド・スピネル伯爵を裏切りたくない。彼はただでさえ今は大変だ」


「確かに親父殿は後片付けが面倒だってグチグチ言ってますね。それから私が親父ど――お父様を裏切るのは無しです」


親父殿に関係すると言われれば、私はとても不安になる。何の話なんだろうと、私は隣に座るジェットへと視線を動かす。


左側がとにかく密着してきて熱いと思ってたら、ジェット様は眠ってらした。


私は再び正面へと顔を戻す。

殿下は言いにくそう。

マイナムもそうなのは、殿下が私に命じる内容は親父殿に関係するからか。


「じゃあ、しなきゃいけない命令することになった背景言って。頑張って察してみるから」


「わかる? 察するって、人の言葉の行間を読む事だよ?」


「殿下。察せなくても背景ぐらいは脳みそに入ります。とりあえず戦闘員としては有能な奴なんで」


だから、なんていう阿吽の呼吸でデスってくるんだ。

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