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メッセは自重するべき

ディアドラの私物や部屋を台無しにした人達は、ディアドラが仄かな恋心を抱きかけた人の真実も伝えてディアドラの気持まで台無しにしたようだ。


レイ・インベル君は存在していません。


ディアドラを騙していたことは事実なので、そこについては殿下を庇いたくは無い。けれど恐らくだが、殿下の気持は本気っぽい。そしてディアドラも淡い恋心は抱いているはず。ならばディアドラに殿下の真実を伝えてしまえば、きっとすぐにディアドラの気持は落ち着けるだろう。


だけど私には、レイ・インベル君が殿下だと、ばらして良いのか判断できる権限が無いのだ。大体、殿下のレイ・インベル扮装について、昨日知ったばかりなほやほや。

だから私にできることは、私も何も知らない設定で友人を慰める、それだけだ。


「レイ君が存在していないって、そんなはずないでしょう。私はちゃんと彼と握手もしたし、お話した。彼は夢じゃなくいたわよ」


「でも、ミドルにはいないって。ミドルの子が」


「そのミドルの子って、誰?」


「名前は分からないけど、ピンクブロンドでピンクのドレスを着た子と、テラコッタブラウンの髪にオレンジ色のドレスの子が、レイ・インベル君なんてミドルクラスにはいないって」


「その子達はもしかして、貴族の喋り方も出来ない方達かしら?」


「知っていた、の?」


「パレルモ様にご挨拶に行く途中で、気分が悪くなるあの人達に出会ったのよ。その時はピンクとテラコッタはピンクのお姉様を虐めていたの。あんな人達の言う事なんて気にしては駄目よ」


「でも、彼女達の言う通りに入学式の生徒名簿には載って無かった。インベルってお家の生徒は、この学園には入学していなかったの。私はレイ君に」


ディアドラは再び私の胸に顔を埋め、私の腕の中で声を上げて泣き始めた。

どうして私ばっかり酷い目に、なんて自分を悲観する台詞など一切なく、ただただ悲痛な泣き声をあげるばかりだ。私こそ可哀想すぎて泣きそうだ。


そもそも殿下が自分を偽らずにディアドラに自己紹介をしていれば、殿下の恋人だってことで嫌がらせはあるかもしれないが、殿下の真心はディアドラに通じていたはずなのである。気持を裏切られたとディアドラが絶望して泣く必要は無かったのだ。


「くっそ。あのレイめ」


殿下の名を敬称付けずに唱えたのは初めてだ。

そのぐらい私は怒りを殿下に抱いていた。

そんな私をあざ笑うかのように、殿下とジェットから伝言魔法が戻って来たじゃないか。


「女子寮腐ってんな。パレルモは何してんだ」


ジェットよ、感想だけだったらわざわざ送って来なくて良し。

あと、ディアドラ傷つけたのは殿下の方なんだよ。何してんだは、殿下の方!!


「ディアドラは大丈夫か? 一体何があったんだ!!すぐに報告を」


報告してやろうか。

殿下に騙されていたことを知って泣いてます、と。


ぴこんぴこんぴこん。


殿下はかなりディアドラが心配なのだろう。

私が返信する間もなく、次々とメッセージを送って来たのだ。


「ディアドラは泣いていないか」

「私は何してやれる?」

「こんな時は甘いお菓子だよな、すぐに手配する」


と次から次へと。私の神経を逆撫でてきやがる。


だから殿下のせいなんです!!


私は殿下にメッセージを返した。


「レイ・インベルは新入生名簿に載っていないとディアドラにバレました」


ぴこん。


「マリの家に行ってくれるか? そこで合流しよう」


殿下!!

直接顔を合わせて弁解したいからって、シャムル侯爵家(マリさんの家)に前触れもなく突撃は非常識です。ディアドラとのお付き合いに関して真剣に考えているならば、ちゃんと外堀も内堀も埋めてからパフォーマンスしましょう。後先考えなさすぎです!!


私は大きく息を吸うと、私にしがみ付いている可愛い子を断腸の思いで自分から剥がした。抱きしめられていたのに引き剥がされたディアドラは、一瞬だけきょとんとした後、すぐに貴族女性らしく表情を取り繕って笑みを作る。


「ご、ごめ」

「一緒にシャワー浴びよう」


「え?」


「とにかく、今日の化粧やら何やら落して、楽~な格好になって、愚痴を沢山言い合おう。いいね? 恋バナじゃなく駄目な男について愚痴にしよう」


「え、ええ」


「じゃあ、ドレスを脱がしっこしましょうか」


「今すぐ?」


「今すぐ。ディアドラ。後ろを向いて!!」


「ひゃあ」


私はディアドラの背中側のドレスホックを外しながら、ディアドラに気がつかれないようにして殿下に伝言魔法を送った。


「ディアドラはドレスも脱いで裸になりましたので移動は無理です」


嘘はついていない。

ドレスを脱がせている最中だったので、私の視界の一部が伝言魔法に紛れ込んじゃったかもしれない。ディアドラの綺麗なうなじ、とか。


そのあと殿下から、返信はひとっつも来なくなった。

私からディアドラのイメージが漏れ贈られる可能性を考えて、自分が返信するのはそれ目当てだと思われたらどうしようとか、そんな自分をディアドラに暴露されたらどうしようとか、色々考えたのだろう。ハハハ、計画通り!!


ちなみに、鏡を使って自分のうなじを確認した後、そのイメージをジェットにも送ってみた。ディアドラのうなじだけとは違って、振り返ってる私の顔も入ってる肩甲骨辺りまでのイメージだ。ジェットも私のことが大好きだって言っているから、どんな反応してくれるか知りたいじゃない。


結果として、ジェットから彼の上半身裸のイメージが届いた。

お陰で、ジェットに返信するべきかスルーするべきか、ディアドラの案件ではなくそれで一晩悩むことになったとは。ジェットめ。

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