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エスコート、それ違う

ジェットが「蒼炎の騎士」と呼ばれるのは、炎系の魔法剣士でありながら、喜怒哀楽も無く表情を変える事が無い冷静沈着な素振りばかりだからという評判だから。

また、ジェットが纏う魔力の色が火属性なのに青いからでもある。


彼の銀灰色の髪が青みがかっているのは、彼の魔力の色なのだ。


ちなみに昔のジェットの髪色は、赤みがかった銀灰色だった。

なぜ今は青くなったのは、彼が炎系魔法を磨きに磨いているからだ。

炎は極めれば極める程に蒼くなる。


そしてそんな蒼の君が、何故か今は顔を真っ赤に染めている。

私に今の姿が似合うと言った途端にだ。

珍しく私が落ち込みかけた声を出したから、私のワンピース姿が女装しているとしか思えなくともジェットは私を褒めたのだ。けれど、真っ当で頑なな男には、女装している男性にその姿が似合うと言うのは苦痛であったに違いない。


そもそも私は本物の女で、女装なんかじゃないですけどね!!


私はジェットの優しい部分を思いやるよりも、ジェットに立てたむかっ腹の方が強かったので、ジェットを揶揄うことにした。


「真っ赤。どうして精神力(火力)弱くなった?」


「うるさい。わかった。お前がそれで行くならそれでいい。ほら、戻るぞ」


ジェットは私の右手首をガシッと掴む。

それで再び私を引っ張って歩き出す。

私は散歩拒否する犬みたく両足を踏ん張る。


「いえ、一人で戻りますから」


「女のふりなんだろ。女が一人で建物の裏でフラフラしてたら目立つだろう」


「既に悪目立ちありがとうです。オブシディア様によって大目立ちさせられて講堂裏に連れこまれたんですからね。せめて戻る時ぐらいは、私の隠密スキルでこっそりひっそり教室にが、原状回復最適オーダーなんで解放してくださいって、馬鹿力で引っ張らないで!!」


「女を通すんだろ。じゃあエスコートさせろ」


「手首掴んで力任せに引っ張るのはエスコートじゃない!!ねえ、待って。オブシディア様。待って待って、待ってください!!」


馬鹿力男はずんずん歩いていく。

散歩拒否の格好のまま引き摺られる犬みたく私は引き摺られるままだ。

身体強化の無駄遣い!!


「オブシディア様!!」


「ディ。ここは身分を問わない学園だ。ジェットと呼べ」


「ジェット様、離してください」


「だから、様などいらないと」


ジェットは私を睨みつける。けれど、彼の強引な引っ張り(えすこーと?)に私が転げまいと、私が自由なもう片方の手で彼の腕に縋っている状態であることを目にした途端に、なぜか彼こそ動揺しきった顔になった。ビクッて感じで。


その後の彼は、自分の口から不用意な言葉が勝手に飛び出さない風にして、きゅっと口元を硬く閉じてしまった。

で、物凄い勢いで進行方向へと顔を戻すや、なんと、そのまま再びずんずんと歩くだけとなってしまった、とは。


「ちょっ。転ぶ。止まって、止まって下さい」


このままこんな感じで大勢の目がある校舎に何か戻れません!!


慌てる私。

けれど、脳筋には配慮って言葉は記憶されていないようで、校舎前どころか、私の教室まで私を引き摺って(エスコートして)くれましたよ。

そのせいなのか、クラスメイトとなった方々が私に向けるのは、敵愾心ばかり。

私に聞こえる音量での私を罵倒する囁きが、そこかしこから噴出だ。


主に女子!!


「ほんっと、平民って恥を知らない。昼日中から男性に抱き着くなんて」

「蒼炎の騎士様が心優しい方だから、邪魔でも斬り捨てないだけなのに」

「虫ぐらいにしか認識されていないのでしょう」


ジェットからの認識は虫程度で良い、のが私の本意ですよ?

そうだったら、手首をがっちりつかまれて、すごい勢いで引っ張り回されることなどないだろうし!!



ホームルームが終了するや、私は教室を飛び出した。

その後は、学園の隠し通路を走り抜け、認識阻害魔法をかけまくって、大事な上司の元へと報連相するべく急いだのだ。

だって先に話を通しておかなきゃ大変だ。


任務遂行に障害となるアレを自己判断で排除しても良いですか? って。



殿下、腹を抱えて笑わないで、でしたけど。

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