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第二音・澪月の調

音を閉ざした少女と、祝音の共鳴。

この物語は、音に選ばれた少女たちが、それぞれの「想い」と「旋律」で世界を変えていく物語。


第2話では、花咲 詠と出会う**黒髪の少女・紫月しづき みお**が登場します。

彼女の世界には音がなかった。いや、音を――“拒絶していた”。


だけど、詠のギターと心に揺さぶられ、澪は自分の旋律と向き合い始める。


閉ざされた音が、ふたたび響き出すその瞬間。

どうぞ、“第二の音”に耳を傾けてください。

わたし、花咲 詠。

昨日までふつうの転校生だったはずなのに――


ギターが突然光って、祝音少女に選ばれちゃった……!?


しかも、仲間があと4人いるらしい。


音で世界を守る使命とか、ちょっと重すぎるけど……

でも、大事なものを“音”で伝えられるなら――わたし、がんばってみたい。


仲間、きっと見つけてみせる!


* * *


【Scene.1 はじまりの旋律、ふたりの気配】


翌朝、澄んだ音と光に包まれて始まった神響女学院の一日。


詠は転入二日目の登校路、スケートで滑走しながら、胸の奥に微かに響く“音の気配”を感じていた。


(なんだろう……どこかで、誰かが……)


その日、学園ではいつもより少しだけ風が強く、音の通りが違っていた。


すれ違う生徒たちの中に、ピンと張り詰めた気配を持つ少女と、ふわりと風のように漂う誰かがいた。


ふと見上げた中等部校舎の渡り廊下。


そこに立つ少女の黒髪が揺れ、詠の目と一瞬だけ交差する――が、少女はすぐに視線を外した。


(あの子……)


言葉にできない共鳴。

鼓膜ではなく、胸で聴くような“無音の旋律”。


その直後、校舎の裏手で風が巻き起こり、木の葉が舞う。

通りすがる別の女子生徒のポニーテールが、大きく跳ねる。


ドンッ。


スケートの止まり際、少しだけぶつかった。


「ご、ごめん!」


「……気にするな」


低く凛とした声。

詠が顔を上げたときには、その子はもう通り過ぎていた。


(……雷、みたい)


名前も知らない。でも、確かに“音”を纏っている。


「……きっと、あの子たちだ」


詠は、祝華のストラップを胸元で握りしめた。


仲間の音は、すでにこの学園の中にある。


――第二の出会いは、もうすぐそこだった。


* * ** * *


【Scene.2 放課後と、黒き音】


日が傾き始めた神響女学院。

転入初日を終えた詠は、教科書や配布されたプリントを鞄に詰めながら、大きく息を吐いた。


(ふぅ……なんとか無事に終わった……よね)


クラスメイトたちは思ったよりも優しく、自己紹介後に話しかけてくれる子もいた。

けれど、どこかでまだ「よそ者」としての距離感を感じてしまう。


ギターの話題になると、一瞬だけ空気が変わる。憧れと、ほんの少しの“異物感”。


(仕方ないか。祝華は、普通のギターじゃないもんね)


帰り支度を終えた詠は、スケートを履き、昇降口を出てゆるやかな坂を滑り出す。


夕暮れの光が、桜並木の影を長く伸ばしていた。


そのときだった。


ふと、空気の密度が変わった。


スピーカーから流れていたはずの校内放送のBGMが途切れ、足音も風の音も消える。


――無音。


「……また、これ……」


あの朝の感覚。

耳ではなく、肌で感じる異常。


ざっ……


校舎の裏手。倉庫と体育館のあいだの路地に、黒い影が揺れている。


輪郭があいまいで、ノイズのようにチカチカと瞬く。

人のようで、人ではない。


(あれが……虚音)


背中の祝華が、びり、と震えた。

ケースのロックがひとりでに外れ、光が漏れ始める。


「……なんで……でも、わかる。これが……」


祝華のネックに手が触れる。

次の瞬間、制服が紅白の装束へと変わり、ギターのボディに桜の紋様が刻まれる。


「――奏装、起動……祝・華!」


祝音が鳴った。

詠の第一の音が、世界に放たれた。


ギターをかき鳴らす。高音の旋律が風を切ると同時に、桜色の光が弧を描いて舞う。


虚音は形を変え、長い腕のような影を地面から伸ばして詠に迫った。


「こ、こわ……でもっ!」


詠は一歩踏み込み、ギターを大きく振り下ろす。


「――奏・一閃桜いっせんざくら!!」


ピンクの斬撃が空を裂き、虚音を貫いた。

影の身体が砕け、黒いノイズが四散する。


光が満ち、音が戻る。


……チャイムの音。

風のざわめき。

夕暮れの空。


「やった、の……?」


ギターはすでに静かになっており、衣装も元の制服へと戻っていた。

祝華だけが、ほのかにぬくもりを帯びたまま、詠の胸元に抱かれていた。


そのとき。


「ふむ、案外早かったな。初めてにしては上出来じゃ」


聞き慣れない声。

振り返ると、体育倉庫の屋根の上に、ちょこんと座る不思議な存在。


丸い体にふさふさの耳、ぬいぐるみのようなその姿は、明らかに現実のものではなかった。


「ぬいぐるみ……? じゃない、よね……?」


「拙者は音の理を守る式神、ミヨリと申す!」


軽やかに跳ね降りると、ふかふかの着地音と共にお辞儀をする。


「……なにそれ、かわ……いや、よろしく!」


詠の中で、何かが始まりかけていた。


* * *


【Scene.3 夜の部屋と、ぬいぐるみ疑惑】


夜。家に帰った詠は、夕食を済ませて部屋に戻ってきていた。


祖母が用意してくれた煮物の香りが、まだ鼻に残っている。


ギターケースをいつもの位置に立てかけ、制服を脱いでルームウェアに着替える。


(……今日の、あれは……夢じゃないよね)


ベッドの上で考え込んでいると、突然――


「ふむ、なるほど。こうして見ると、やはり布団というものは文化的であるな」


「……はあぁあああっ!?」


振り返ると、机の上に例のぬいぐるみ――ミヨリが、腕組みしながら座っていた。


「な、なんでついてきてんの!?!? 校舎にいたじゃん!」


「お主の祝具が覚醒した以上、拙者も共に行動するのは道理。心配無用、姿は人には見えぬ」


「いやそういう問題じゃなくて! 勝手に家入ってくるとか、ぬいぐるみ勝手に喋るとか、そういうのが問題なの!」


「ふむ、確かに勝手に押しかけたのは事実。だが、音の契約とはすなわちえにし……」


「説明は明日でいいから寝かせてよ! ていうかその場所、私のスマホ充電スペースなんだけど!」


「うむ。ではその隣に移動するでござる」


「かわいい!……じゃなかった、なにこのノリ!」


――賑やかな夜が始まった。


詠の部屋には、確かに一人ぶん以上の音が満ちていた。


* * *


ミヨリは詠の膝にちょこんと座り直すと、小さく咳払いをした。


その姿は、子狐のような愛らしい輪郭に、桜色の耳と紫がかったしっぽ。

眉間には音を模した印が浮かび、左の耳には桜の花びら飾りがひとひら。

ふさふさの尾には五線譜と音符がきらめき、歩くたびに鈴のような音を奏でる。

まるで和風のマスコットキャラが命を宿したような、ちょっと可愛すぎる精霊。


「さて、詠よ。今夜こそ本格的に話すとしよう。我が名はミヨリ、音のことわりを司る式神にして、“祝音しゅくおん”の守り人じゃ」


「守り人……?」


「この世界には“虚音うつおん”と呼ばれる負の旋律が存在する。心の歪みや絶望、過去の痛みが音となって形を取り、現実を侵食するもの……それが、そなたが戦った黒い影の正体じゃ」


詠は神妙に頷きながら、ベッドに座り直した。


「じゃあ、祝音ってのは?」


「祝音とは、音に祝福を宿す者の力。正しき旋律で虚音を祓い、人々の想いを調和へ導くもの。祝具を媒介として、選ばれた者――祝巫女いわいみこのみが奏でられる音じゃ」


「……私が、その祝巫女?」


「うむ。そなたの祝具“祝華”が覚醒した今、すでに選ばれておる。そして――」


ミヨリはくるりと宙に跳ね、詠の目の前でくるくる回る。


「祝音少女《五色ノごしきのちぎり》を結ぶ五人が、そなたを含めてこの地に現れる運命にある。今はその“はじまりの音”にすぎぬが、いずれ五つの音がそろうとき、この世界の音は新たなかたちへと導かれるであろう」


「五人……」


詠はそっと祝華を撫でながら、小さく呟いた。


「……なんだか、少しワクワクするかも」


「それでこそ、祝音少女の器よ」


こうして詠の静かな夜は、音と秘密に満ちたものへと変わっていった。


* * *


第二音・澪月の調


* * *


わたし、花咲 詠。

昨日までふつうの転校生だったはずなのに――


ギターが突然光って、祝音少女に選ばれちゃった……!?


しかも、仲間があと4人いるらしい。


音で世界を守る使命とか、ちょっと重すぎるけど……

でも、大事なものを“音”で伝えられるなら――わたし、がんばってみたい。


仲間、きっと見つけてみせる!


* * *


【Scene.1 はじまりの旋律、ふたりの気配】


翌朝、澄んだ音と光に包まれて始まった神響女学院の一日。


詠は転入二日目の登校路、スケートで滑走しながら、胸の奥に微かに響く“音の気配”を感じていた。


(なんだろう……どこかで、誰かが……)


その日、学園ではいつもより少しだけ風が強く、音の通りが違っていた。


すれ違う生徒たちの中に、ピンと張り詰めた気配を持つ少女と、ふわりと風のように漂う誰かがいた。


ふと見上げた中等部校舎の渡り廊下。


そこに立つ少女の黒髪が揺れ、詠の目と一瞬だけ交差する――が、少女はすぐに視線を外した。


(あの子……)


言葉にできない共鳴。

鼓膜ではなく、胸で聴くような“無音の旋律”。


その直後、校舎の裏手で風が巻き起こり、木の葉が舞う。

通りすがる別の女子生徒のポニーテールが、大きく跳ねる。


ドンッ。


スケートの止まり際、少しだけぶつかった。


「ご、ごめん!」


「……気にするな」


低く凛とした声。

詠が顔を上げたときには、その子はもう通り過ぎていた。


(……雷、みたい)


名前も知らない。でも、確かに“音”を纏っている。


「……きっと、あの子たちだ」


詠は、祝華のストラップを胸元で握りしめた。


仲間の音は、すでにこの学園の中にある。


――第二の出会いは、もうすぐそこだった。


* * *


【Scene.2 澪、静かなる演奏】


昼休み。

初等部校舎の中庭では、友達同士の声が飛び交い、春の陽射しが踊っていた。


詠はベンチに座りながら、祝華のストラップを指で撫でていた。


(……あの子、どこか気になって……)


そのときだった。


ピリッ、と空気が震えた。

風が止まり、遠くの校舎の屋上あたりに、うっすらと黒い揺らぎが見えた気がした。


「虚音……!」


周囲には誰も気づいていない。

でも詠には、あの朝のように確かに“異音”が聴こえた。


しかし、次の瞬間――


ザァァン……!


重く、鋭く、突き刺さるような“音の一閃”が鳴った。


刹那、黒い揺らぎが消えていく。

そして音も風も、何事もなかったように戻っていった。


(……え? 今のって……私じゃない)


祝華は反応していない。

誰かが、あの虚音を祓ったのだ。


誰? どこで? どんな“音”で?


その答えは、昼休みが終わる直前、廊下の開けた窓からふと聴こえてきた。


低く、静かな、深海のような音色のギター。


詠ははっと顔を上げ、音の方向へ走り出した。


* * *


放課後、詠は一人、音の記憶を頼りに音楽室へと足を運んだ。


そっと扉を開けると、そこにいた。


静かに佇み、椅子に腰かけた黒髪の少女が、ひとりギターを奏でていた。


教室の明かりはついておらず、夕陽だけが差し込む静謐な空間。


指先が弦を撫でるたびに、空気が波紋のように揺れる。


言葉はない。

けれど、音がすべてを語っていた。


(この子……あのときの……)


詠は黙って扉の外から、その音を聴いていた。

祝華が静かに震える。


音が、共鳴している。


少女の名も、声もまだ知らない。

でも、その音が“本物”だということだけは、詠にはわかった。


【Scene.3 沈黙の音、初めてのことば】


翌日の放課後。

詠は昨日の出来事が忘れられず、もう一度音楽室の前へと足を運んでいた。


ドア越しに耳を澄ますと、やはりあの音が聴こえてくる。

低く、深く、胸を揺らす旋律。


そっと扉を開けると、少女はそこにいた。

まるで昨日と同じように。


けれど、今日は違った。

少女は演奏を止め、静かにギターを膝に置き、こちらを見た。


「……ここ、中等部なんだけど。あなた、初等部でしょ?」


澄んだ藍の瞳。声は静かで、けれどよく通る。


詠は一瞬たじろぎながらも、でも勇気を出して答えた。


「う、うん……そうなんだけど……でも、すごく綺麗な音だったから……」


少女は小さく瞬きをしたあと、視線をギターに戻した。


「それは、音に触れていい理由になるの?」


「……わかんない。でも、聴きたかったの。心が勝手に動いたんだよ」


その返事に、少女の手がほんのわずか震えた。


「……変な人」


「うん、自分でも思う。でも、あなたの音も変だったよ。変っていうか、なんか……すごく、悲しいのに綺麗で」


少女はギターを抱き直し、再び指を弦へと添えた。


紫月しづき れい。」


「え?」


「名前。あなたが名乗らないなら、先に名乗る」


「……花咲はなさき うた!」


二人の間に、一瞬だけ風が通り抜ける。

けれど、音は途切れなかった。


沈黙のあとに鳴ったのは、澪の爪弾く静かなフレーズだった。

詠は、それを言葉のかわりとして受け取った。


それが、二人の“はじめての会話”だった。


詠は、しばらくその場を動けなかった。

夕陽が音楽室のガラス窓を照らし、澪の影が床に長く伸びている。


(この空気、壊したくない……)


その音は、さっきの問いかけへの答えのようでもあり、あるいは別れのあいさつのようでもあった。


詠は静かに頭を下げ、ドアの外へ足を向けた。

けれど、ドアノブに手をかけたとき、背後から声が響いた。


「また、来てもいいよ」


振り返ると、澪はギターを抱えたまま、視線だけをこちらに向けていた。


「その……別に話したいとかじゃなくて、音、邪魔しないなら」


「……うん、邪魔しない!」


詠の顔がぱっと明るくなる。


音の中にだけ許された、二人だけの静かな約束。


この日を境に、詠は放課後、よく音楽室に立ち寄るようになった。


まだ会話は少ない。

でも、そこには確かな“音の友情”が芽生えはじめていた。


* * *


【Scene.4 共鳴の一撃、ふたりの音】


その数日後の夕刻。

澪は一人で音楽室にいた。


詠はその日、家庭の都合で少し遅れると連絡をしていた。

だから澪はいつも通り、静かにギターを弾き、音に没頭していた。


そのときだった。


音が、途切れた。

いや、世界から“消えた”。


校舎の外の風の音も、遠くの話し声も、すべてが消える。

空気の振動が、止まる。


「……虚音」


澪は立ち上がった。

ギターを構え、指を弦に添えた瞬間。


闇のような影が、窓の外から忍び寄る。

黒い波紋が、ゆらゆらと教室の床を這ってくる。


澪はすぐに弦を鳴らす。


「――奏・静波律せいはりつ


その音は、波のように静かに押し寄せ、虚音の動きを止めた。

けれど、敵は複数いた。


もう一体、いや、三体……四体。

音楽室の窓が軋み、空間が不協和で満たされる。


澪の顔がわずかに強張る。

一人で抑えきれる数ではない。

だが、逃げるわけにはいかなかった。


(音は、わたしのすべて)


そのとき――


「澪ッ!!」


扉が開き、祝華を抱えた詠が飛び込んでくる。


「間に合った!」


詠はギターを構え、勢いよく空間に音を解き放つ。


「――奏装・祝・華!」


桜の光が音楽室を満たし、ふたりの音が重なる。


それが、祝音少女ふたりの“最初の共鳴”だった。


* * *


戦いのあと。

音楽室には、破られたガラスの破片と、消えゆくノイズの残響だけが残されていた。


澪は壁に背を預けて座り込み、肩で息をしていた。

詠もギターを抱えたまま、その隣に腰を下ろす。


「……助かった」


澪が、ぽつりと呟く。

その声は、これまでよりも少しだけ柔らかかった。


「わたしこそ。……間に合ってよかった」


詠が笑いながら返す。


そこへ、音の粒がきらめくように、ミヨリが宙から現れた。


「ふたりとも、見事な連携だったのう」


「ミヨリ……」


「澪よ。そなたも見届けたはず。自らの音が“選ばれしもの”として目覚めたことを」


澪は目を伏せ、指でギターの弦を軽く弾いた。


「……あの音は、拒めなかった。胸の奥で、ずっと鳴っていたから」


「それが、祝具との“音の契”じゃ。詠と同じく、そなたもすでに祝音少女である」


ミヨリは宙を跳ね、ふたりの間に浮かぶと、音の波紋のような光を放った。


「ここに、ふたりの祝音を記す。“二音のにおんのちぎり”成立じゃ」


光がゆるやかにふたりを包む。

心と心が、音を媒介にしてふわりと繋がる感覚。


「……へんな感じ。でも、ちょっと、うれしいかも」


「……私も、たぶん」


* * *


その夜、寮の一室。


澪は、自分のギターケースをそっと撫でながら、ベッドの上で目を閉じていた。


(私には、必要ないって思ってた。誰かと関わることも、音を分かち合うことも)


(でも……)


音楽室の中で、詠と重ねたあの一瞬の音。

桜の旋律と、深海の低音が重なりあったあの響きが、ずっと胸に残っていた。


(……あんな音が出るなら、もう少し……一緒にいても、いいのかもしれない)


澪の唇が、ほんのすこしだけ笑みに近づいた。


* * *


そのころ、桜都の郊外――。


静かな夕暮れ、古民家の一室。

窓辺に立つ中等部の制服姿の少女が、白い鍵盤の前に座っていた。


鍵盤から紡がれるのは、ピアノよりも軽やかで風をまとうような音色――まるで、風そのものを奏でるような旋律。


部屋には花の刺繍クッションと柔らかなカーテンが揺れ、家庭の笑い声とパンの香りが漂っている。


少女はただ、指先で音を紡いでいた。

誰に届くとも知れぬ音。

でも、その音は確かに、どこかへ向かっていた。


やがて音が止むと、少女はそっと呟いた。


「……届くといいな」


まだ名も知らぬ“音の仲間”へ――その旋律は、風のように流れていった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


今回の主人公は、紫月 澪――音を拒み、孤独の中にいた少女です。

彼女の祝具《音幻おんげん》が覚醒する瞬間は、静かながらもとても強いシーンでした。


詠との重奏デュオ、そして初めて“音を重ねる”という体験。

内向的な子が少しだけ心を開いていく様子を、丁寧に描いたつもりです。


澪の祝装フォームはこちら!

→ 奏・静波律しずはりつビジュアル

https://27565.mitemin.net/i979336/

冷たいようで芯がある、月と夜を思わせる静かな美しさ――

そんなイメージでデザインしています。


あと、今回も登場しましたね!

マスコット<淫獣>ミヨリ!(ノジャ口調がクセになります)


ぬいぐるみみたいな見た目と、語り部ポジションのギャップで、

これからもチョコチョコ活躍していく予定です。


次回はいよいよ、風の旋律をまとう“第三の音”――お楽しみに!


コメントや感想にはなるべくお返事しています。お気軽にどうぞ!

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