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37.電——磁



安藤は自分の行動がどんな波紋を引き起こしたか知る由もなく、車の中でのんびりと過ごしていた。隣に座る心紋から漂うほのかな香りが心地よかった。


「安藤……」

心紋が長い沈黙を破った。

「もし後から妙な人たちが君を探しに来たら、まずは自分を守って。」


彼女は、安藤を自分の家の訓練場に連れて行ったことを後悔しているようだった。

「黎氏、つまり私の母親よ。彼女はあの訓練場の責任者で、君の実力を必ず目に留めるはず。」

「だから、もし本当に誰かが……君を連れて行こうとしたら、それは私の意志じゃないってことだけは分かってほしい。」


安藤は口を半開きにしながら考えた。つまり、心紋の母親に目をつけられてしまった可能性があるということだろうか?

でも、自分はたかが中位魔法使いに過ぎない。李家のような大勢力がなぜ自分なんかに興味を持つというのか。


「それに、家族の中にもいろいろな噂があるのよ。私が劣等生クラスに来たのも、何かしらの理由があってのことだって……」

心紋はそう言いながら窓の外に目を向けた。その横顔は美しく、少し赤く染まっていた。


「分かったよ。」

安藤は短く答えた。


「もしまたこんな魔法を試すなら、次は学校の中でやりなさい。私がなんとかするから。」

「今日の訓練場には……君が高位魔法使いになってから行くべきよ。そのときなら、ある程度は自分を守れるはずだから。」


安藤は苦笑した。心の中で、「その頃には訓練場でも足りなくなってるかもな」と思った。

今の施設はあまりに脆弱すぎる。ちょっとした実験で場が壊れてしまうのでは、魔法使いがどう進歩するというのか。科学実験も同じだ。試すたびに装置が爆発していたら、技術の進展など望めないだろう。


学校に戻り、安藤は心紋と別れた。別れ際、心紋はまだ彼の安全を心配してあれこれ話していた。

「ちょっと、李家のお嬢様だからって僕を見くびらないでくれよ。僕だって這いつくばってここまで来たんだ。」

地球時代、安藤がいじめを受けなかった理由の一つは、いつでも即座に逃げる能力だった。


「ふん、それならいいけど。じゃあね!」

心紋はポニーテールを軽く揺らしながら歩き出したが、一度振り返ってみた。すると安藤がまだ彼女の方を見ていたため、彼女はいたずらっぽく舌を出して笑い、急いで階段を駆け上がった。

安藤は自分の部屋に戻ると、疲れ切っていた。魔法の実験で大量の魔素を消耗し、最後の衝撃波も彼の体に少なからぬ負担をかけていた。


「今日はお嬢様とデートでもしてたのか?」

ルームメイトの林がドアを開けるなりからかってきた。


「ん?どこで聞いたんだよ?」

「おいおい、ここは劣等生クラスの宿舎だぞ。ちょっと上から見れば何だって見えるんだ。」


「……確かにな。」

安藤は窓から外を見下ろすと、確かにここではバルコニーから地上の様子が丸見えだった。


「彼女に街を案内してもらっただけさ。それに、これも買ってもらった。」

安藤は手に通信器を掲げて見せた。


「なんだよお前、まるでヒモじゃないか!」

「黙れ!お前こそヒモだろ!これだって学費みたいなもんだ!」


「ふん……」

安藤は胸ポケットにある黒いカードをそっと触れた。それを林に見せるつもりはなかった。触れるだけで、そのカードは妙に重く感じられた。


「雷系……電気をどうやって開発するかな?」

安藤はそうつぶやきながらベッドに倒れ込むと、そのまま深い眠りに落ちかけた。


「おい!もう何回我慢したと思ってんだ!風呂に入れ!」

突然、隣から林の怒号が飛んできた。彼は枕を掴んで安藤の頭に投げつけた。


「分かった、入るよ!分かったから!」

「チッ……」


枕をさらに顔に叩きつけられ、安藤は観念して風呂に向かった。


深夜、二人が熟睡している間、部屋の隅に置かれた小さな石が淡い光を放ち始めた。

誰にも気づかれることなく、石はゆっくりと浮かび上がり、安藤のベッドの方へと動き出した。


石は彼の胸の上にそっと降り立つと、光を弱めながら、内部から魔素が溢れ出した。それは安藤の体内に静かに吸収されていった。


安藤の荒かった呼吸は徐々に落ち着き、緊張していた四肢も次第に緩み、彼は深い眠りに引き込まれていった。


朝、安藤が目を覚ますと、すでに日が高く昇っていた。

「え?もう何時だ?」

時計を見ると、針はすでに10時を指していた。


「ちくしょう!林!なんで起こさないんだよ!」

部屋を見回すと、ルームメイトの林はすでにどこかに出かけていて、姿はなかった。


「おかしいな……目覚まし時計の音が聞こえなかったのか?もしかして昨日疲れすぎてたのか?」


頭を掻きながら、手の中に何かを握っていることに気づいた。

「ん?これは……この間拾った飾り石か?」


手の中の小さな透明な結晶は、磨けばアクセサリーにできそうなくらい綺麗だった。


「なんでこんなの握ってるんだ?林のやつの悪ふざけか?」

眠りが深すぎた自分をからかおうと、仕掛けられたのかもしれない。


「くそ……こんなことで初めて目覚ましを無視しちまった。」

安藤は悲嘆の声を上げたが、すぐに気を取り直し、服を着替えると体を動かしてみた。すると、昨日の疲れがすっかり消えていることに気づいた。


「おお、今日は調子いいな。よし、新しい魔法を試しに行くか。その前に、雷系魔法について図書館で調べよう!」


図書館に着くと、白髪の老人がいつものように座っていた。安藤が近づくと、老人は彼を一瞥し、何かを感じ取ったようだった。


「この小僧、また気が強くなってやがる……だが妙に違和感があるな。」

老人は眉をひそめたが、深く考えずにまた本に目を戻した。


安藤は雷系魔法に関する書籍を山積みに借りた。

『雷電法師奇遇記』『雷系魔法:入門から応用まで』『雷電魔法の市場応用』など、どれも分厚い本ばかりだったが、安藤にとっては退屈どころか楽しい読み物のようだった。


「雷系って、本質は金属中の自由電子を操ることか。」

安藤はそう呟きながら、いくつかの初歩的な魔法の記述に目を通した。


初位魔法は電撃のようなシンプルなもので、まるで磁暴歩兵を連想させるような攻撃だった。中位魔法の雷鞭や雷落は、さらに破壊力が増した攻撃型魔法だった。


「心紋はこれでひたすら暴力の道を突き進んでるな……」


安藤はページをめくりながら、この世界の魔法研究がほぼ攻撃に偏っていることに気づいた。

「この世界のやつら、オーストの法則くらい知らないのか?」


科学的な探求がこの星ではいかに遅れているかを再認識し、安藤はため息をついた。

「仕方ないな……じゃあ僕が発見者ってことにしておこう。」


彼は肩をすくめた。タイレン星の人々がいずれ彼に感謝する日が来るだろう。

「電は磁を生み、磁は電を生む……」


安藤は小声で誰にも理解できない言葉を呟いた。その目には、また一つこの世界を震撼させる発明を生み出す決意が宿っていた。

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