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14.焰心紋

夜、劣等班が訓練場を使う時間になり、安藤は心紋を引き連れて場に現れた。

「魔法をスムーズに発動させるために、まずは物理の知識を教えるよ。」

「物理?それって何?」

「つまりは『万物の理』さ。物質には固体、液体、気体の三つの状態があるんだ…」(プラズマ状態も)

安藤が夢中になって心紋に物理の授業を始めると、彼女は初めて接する知識に目を輝かせていた。

「ああ、わかった!水を加熱して蒸発させると気体になるから、体積が増えるわけね。それで前の火球を押し出すのか!」

「賢いな、修士になってみるか?」

「修士って?」

「ゴホン、それはいいとして、もう原理は理解したんだから、具体的な操作は実験で学んでくれ。」

安藤は少し後ろに下がり、心紋に場所を譲った。

「まずは水球術!清らかな水よ、我が命に従え…」

「次は中央に点火して…」

安藤は彼女がその段階に来たのを見て、すぐに頭を抱えて地面に伏せた。心紋は何が起こるかまだわかっていない。

彼女の優れた火元素の才能によって放たれた火球は非常に高温で、目の前の水球が瞬時に爆発した。

安藤は彼女を引っ張って地面に倒れさせ、正面からの高温蒸気による火傷を避けた。

それでも二人は衝撃波に吹き飛ばされ、草の上を何度も転がった。

「こ、これは一体何なの…?」

心紋はぐったりして目を回している。普通の低階魔法がどうしてこんな威力になるのか。

「火の温度が高すぎたんだ。それに点火の位置も水球の中央を避けないといけない。」

安藤は彼女に先ほど見落とした点を説明した。

一度目の経験が生かされ、心紋は二度目はさらに慎重になった。

「点火!」

水球の前半部分が爆発し、後ろ半分がまだ厚みを保ち、衝撃をほとんど受け止めて水しぶきが心紋に降りかかった。

「うわ!冷たい!」

彼女は自身の魔法の威力を初めて味わった。

「ははははは!」

安藤は隣で床を叩きながら大笑いした。

「バカ!あんた、ちゃんと教えてるの?」

心紋は怒って再び水球術を放ち、訓練場を安藤と一緒に走り回ることになった。

「ちょ、待てよ、これは俺のせいじゃなくて、君の問題だ!」

「教えたのはあんたでしょ、だから教わる側のせいじゃなくて教える側の責任!」

安藤は魔法の速度に追いつけず、全身で水球の洗礼を受ける羽目になった。

「寒い…」

夜の少しの風でも二人は震えるほど冷え込んだ。

「ち、ち、ちょっとさ、明日、朝にしない?」

「平気だよ、火で温まればいいんだから。」

心紋は手を伸ばして小さな火を前に出し、二人は火を囲んで暖をとった。

安藤は頭上から立ち上る蒸気を見ていた。

「うーん…」

彼はまた何かを思いついたが、今はそれを実現する力がなかった。

「心紋?水球をもっと均等に爆発させることってできる?」

「均等にって?」

「つまり、広がりを大きくしてくれってこと。」

「できるにはできるけど、それがどうなの?」

心紋は安藤の指示に従って再び点火の位置を水球の中心にして、今度は魔法が完全に発動する前に逃げ出した。

逃げている途中で背後から爆発音が聞こえ、水球は巨大な水霧となり、空中に長く漂って消えなかった。

心紋はその光景に目を輝かせ、安藤の意図を理解した。

「このやり方なら相手の視界を邪魔できる!」

「でもまだ効果が足りないかも、ひとつの水球じゃ小さいかもな…」

水霧の濃度はあまり高くなく、まだ霧越しに訓練場の向こう側がなんとか見えてしまっていた。

「君、迷わせる霧を出したいのか?暗系の魔法に似たものがあるよ、ちょっと勉強してみれば?」

「そんなのがあるの?じゃあ、明日図書館で調べてみよう。今思いついただけだから。」

心紋はやっと彼の奇抜なアイデアの源を理解した。それはいつも「閃き」で生まれていたのだ。

「君の頭の中ってどうなってるの?普通の人と考え方が全然違うんじゃない?」

「そうかな?俺が普通なんだよ、普通じゃないのは君じゃないか?九級の才能なんて、普通にあるものなのか?」

安藤は冗談で言ったつもりだったが、心紋の表情が沈んだのを見て気がついた。

「あ、すまない、俺、何か言い過ぎたかも…」

彼は入学テストで初めて心紋と会ったとき、彼女が言った「私は天才じゃない」という言葉を思い出した。

それが彼女の本質的な考えなのだろう。

「大丈夫よ。これは生まれつきのものだから、どうしようもないの。」

心紋は髪を手でかきあげ、まだ少し濡れた髪を整えながら、安藤に続けた。

「私の名前がどうやってつけられたか知ってる?」

「心紋のこと?」

「そう、文字通りの意味。」

「私が生まれたとき、体内に“心火”が宿っていて、それが私の身体を焼き尽くしていたの。そして、母もその炎のせいで命を失った。」

彼女の視線は下がり、右手で胸を軽く押さえた。

「これが才能の代償なの。李家の傍系の中でもっとも有望な若者になったわ。でも——」

「もし25歳までに“山階”に到達できなかったら……」

彼女は安藤の方を見上げ、言葉の続きを口にしなかった。

「心火…」

安藤は心の中でその言葉を繰り返し、胸に手を当て、自分の心臓が焼かれるような痛みを感じる幻覚に囚われた。

「痛いか?」

心紋は首を振りながら言った。

「家族が神級の魔法師に依頼して私の“心火”を封じてくれたけど、封印は25年しかもたないの。」

「女性に年齢を尋ねるのは失礼かもしれないけど、今、何歳なの?」

「そんな礼儀ある?聞きたいなら聞きなさいよ。私は18歳よ。残り7年もないわ。」

自分より一つ上か…と安藤は心の中で計算し、7年という時間が長いようで短いと感じた。

「7年もあるじゃないか、心配することないよ。一、二年しかないのかと思った。」

「他人事だからそんなこと言えるんだ。試しに“心火”に体を焼かれる気持ちを味わってみなさいよ。」

「3年で“山階”に到達するさ。君も遅れを取らないように。」

「3年?“山階”がどれだけのものかわかってるの?今山階以上の人が何人いるか知ってる?」

「知らない。」

「この……」

心紋は歯ぎしりしながら、彼の何気ない態度に腹を立てた。

「山階が遠いなら、まずは小さな目標を設定したらどう?」

「どんな目標?」

「例えば、期末までに中階に到達するとか!」

安藤は自信たっぷりの笑みを浮かべながら心紋に言った。

「よくもまあ、そんなこと言えるわね…」

彼女はぶつぶつと呟きながらも、進度を考えていた。

期末まであと3か月、低階の試験は今なら間違いなく通るだろうし、中階の「炎能爆発」や「爆裂炎柱」も練習中で、まだ成功率は低いけれど、あと数か月で習得できそうだ。

その頃には中階に近づくはずだ。

だけど、この彼はどこからそんな自信が湧いてくるの?魔法の発動にはいつも充電器が必要で、中階魔法を使うとすぐにエネルギーが尽きてしまう。どうやって試験に合格するつもりなの?

「そんな侮蔑的な目で見ないでくれ、気分が悪いんだから。」

「誰が見てるっていうのよ…ふん!」

心紋は髪を翻し、立ち上がってその場を後にした。

「明日の朝またね!」と安藤は彼女の背中に向かって叫んだ。

「うん——」

彼女が返事をしてくれたのを見て、安藤も安心して帰路についた。



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