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13.引き分け?

「安藤、本当にこの挑戦を受けるつもりなの?」


「なんで受けないんだ?ただの切磋だろ?」


「そうは言っても……」


ルーシーは歯がゆい気持ちになった。こんな簡単なことが彼には分からないのか?

切磋の過程は全て公開される。もしも途中で助けに入ることになれば、安藤の顔に泥を塗ることになる。


「本当に……」


「はいはい、ちゃんと考えましたって。先生、大丈夫です!」


心紋からの挑戦状を聞いたとき、初めは驚いたものの、すぐに彼女の意図を理解した。

「絶対に新しい技を覚えて試したくて、俺に見せつけに来たんだな」


安藤は冷笑を浮かべた。自分も隠している技がいくつかあるし、この女の子は自分を甘く見ているようだった。


「まぁ、自分で良いと思うならいいけど」


ルーシーは額に手を当て、少し頭痛を感じた。断るだけで済む話なのに、こんなに面倒なことになってしまった。


午後3時、安藤は予定通り中級訓練場に現れた。やはり優等班の連中が観客席に集まっていた。


「この前のやつじゃねえか?班長が彼とタイマン張るの?」


「班長、もう中級魔法を覚えてるんだろ?こいつが勝てるわけないだろ」


「おい、こいつの実力って一体どれくらいなんだ?どうやって前に中級魔法を使えたんだ?こんなやつがなんで劣等班にいるんだ?」


「だよな。南宮もこの前やられたんだし」


「黙れよ!俺がやられたんじゃねえ、あれは戦略的撤退だ!」


「ははは……」


観客席から笑い声があがったが、安藤は一瞥だけして、注意を心紋に集中した。


「どうして今日、わざわざ俺と切磋したいんだ?」


「自分が待ちきれずに訓練場を使いまくっておいて、よくそんなことが言えるわね?」


安藤は口をとがらせた。二人ともどっこいどっこいだが、彼女の意図を見極めようと思った。


「ちょっとこっちに来て」


「なんで俺がそっちに行かないといけないんだ?」


安藤は警戒して言った。ここには何か企みがあるに違いなかった。


「仕方ない、じゃあ私が行くわ」


心紋は近づき、安藤の充電器を手に取り、魔素を注ぎ込んだ。


「後で言い訳しないでよ。三手だけで勝負するから」


「分かった」


安藤も興奮してきた。こうして堂々と他人と切磋するのは初めてで、自分の実力を測るいい機会だと感じた。


二人は50メートル離れ、観客席の騒ぎも静まった。この日、一年生の生徒たちがほぼ全員この試合を見に集まっていた。


「観客が多いな……」


安藤は少し緊張しながら周りを見渡し、集まっている人の多さに気づいた。


「もう始めるよ。先生、合図をお願いします」


ルーシーは場内の安全を確認し、観客にさらに距離を取るよう促した後、大きな声で宣言した。


「切磋開始!」


「古来より承け継ぎし聖火よ……」


心紋の五つの気旋が瞬時に回転し、大気中の膨大な魔素が彼女のもとに集まり始めた。


安藤は目を見開いた。あの子がもう中級火球術を使えるようになっているとは?


「ちょうどいいじゃないか」


安藤も自分の特大サイズの気旋を使い、「蒸気爆弾!」と力強く唱えた。


数秒後、水球と火球が同時に現れ、観客たちはざわつき始めた。


「これって中級レベルの威力じゃないか?低級魔法じゃ防げないだろ?」


「やばいぞ、今後ずっと恥をさらすことになるな、ははは」


「先生、すぐに助けに入らないといけないんじゃねえか?楽しみだな」


心紋の目線も安藤の動きに注がれていた。


「私がもっと早く決める!」


彼女は安藤の準備が長くかかると知っていたため、強い勝負心に火がつき、彼の方向へと火球を投げ込んだ。


「焦るなよ」


落ち着いて、最後の火球術を完成させたとき、強力な蒸気の波が安藤の周りで炸裂し、観客席にも強い風が感じられた。


高速火球が空中の巨大な火球に正確に命中し、その核を貫いた。


まるで閃光が空へと突き進むかのようだった。


核心となる魔素の漩渦が破壊され、火球はすぐに消滅した。


しかし安藤の魔法はまだ続き、火球は勢いを保ちながら中級訓練場の天井に激突し、大きな穴を開けた。


「危ない!」


「風鳴り——利刃!」


高空から降り落ちる破片に、ルーシー先生が迅速に魔法で対応し、二人の安全を確保した。


全てが静かになったとき、場内の全員が固まっていた。


あの天井の穴が、今の魔法の威力を雄弁に物語っていた。


中級訓練場は通常の中級魔法に耐える設計だったが、天井は脆弱な部分だった。威力が中級の限界に近いことが示された瞬間だった。


「先生、これ、弁償しなくていいですよね?」


これは安藤の心の中の思い。


「前回、俺がこの魔法を食らってたら、もう命なかったかもな……」


これは南宮衛春の心の中の思い。


「なんで彼はいつも新しい技を出せるんだ?どうやって覚えるんだろう……」


これは心紋の心の中の思い。


「すげえな、お前、マジかよ!」


これは林蕭一郎の心の中の思い。


「生徒がやったことなら、教師の責任にはならないよな?」


これはルーシー先生の心の中の思い。


数秒間の静寂の後、劣等班の生徒たちが歓声を上げた。


「もうやらない!ずるい!」


心紋は腕を下ろし、場外へと歩き去った。


安藤は頭をかき、結果的にまた自分のせいになったようだが、中級訓練場の天井がこんなに脆いとは思わなかった。


「切磋はここまで!二人とも引き分け!」


ルーシー先生が大声で結果を告げると、すぐに応援を呼ぶために電話を取り出した。


「もしもし、夏侯彦太郎先生、学生が訓練場を壊しちゃって、ちょっと見に来てくれる?」


安藤が場外に戻ると、他の生徒たちは自然に道を譲り、彼は無言で歩き去った。


「ねえ、安藤、どうして優等班に来ないの?」


人が少ないところまで来たとき、心紋が後ろから追いかけてきた。


「どうして優等班に行かなきゃならないんだ?」


「だって……優等班なら、もっといい宿舎、もっといい設備、もっといい訓練場もあるし……」


「でも今の生活も十分だし、先生や友達もみんな好きだし。食堂のご飯も、父さんのより美味いし、宿舎も教室や図書館から近いから、遠くまで行かなくて済むし」


「でも、でも……」


こう言われてみると、心紋は優等班の良さが分からなくなった。


「ふふっ、なら、心紋、お前が劣等班に来てみたら?ここがどれだけいい場所か実感できると思うぞ」


「私が?それは無理よ。父に知られたら叱られるだけじゃ済まないわ。先生だって迷惑を被るかもしれないし」


「なんでだよ?」


「うーん……家庭の事情で、もっと強くなる必要があるから」


「なら、劣等班に来た方がもっと強くなれるって説得すればいいじゃないか」


「えっ?」


そんなことが通用する?心紋は疑問を抱きつつも、安藤の言葉の論理に戸惑った。


「実践が真理を証明するんだ。優等班では俺に勝てないけど、劣等班に来たらすぐに勝てるようになる。それはすごい進歩だろ?」


「バカ言ってんじゃないわよ!君が充電切れで止まっただけなのに。勝ったつもりか?今すぐまた勝負する気?」


心紋はむっとして、明らかに自分が手加減したのに、彼にまるで勝利を譲ったかのように言われて苛立っていた。


「冗談だよ。どう考えても俺が君に勝てるわけないだろ」


安藤は急いで手を振って彼女をなだめた。彼は自分と心紋の実力差を分かっていた。


「それにしても、あれを、あれを……」


彼女の顔を見た瞬間、安藤は彼女の望みを察した。


「その技、今夜教えてやるよ。俺はまず腹が減ってるから飯を食いに行く」


「分かった!今夜の夕飯、私が奢るわ」


「うーん、食堂の一番高いやつでいいか?」


「チッ、みみっちいなぁ。食堂ならなんでもいいから、好きに頼みな」


「じゃあ、遠慮なくいただくぞ」

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