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戦争に関する私的見解

作者: コルシカ

戦争に関する私的見解


 「戦争を知らずに~僕らは生まれた~♪」という歌が流行ってから半世紀。日本は太平洋戦争後、戦争を直接経験していない。

 敵から一転、強固な同盟国となったアメリカが起こしたり援助したりした戦争(朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争等)に支援物資を送ったり、自衛隊を派遣したりしていただけである。

 ここ数年前までは第二次世界大戦のような白兵戦等を伴う前近代的な戦争はもう起こらないと分析していた専門家も多かった。

 戦争には多大な人的・物的消耗が強いられ、コストパフォーマンスに見合わない、と思われていたからだ。

 ロシアがウクライナに侵攻する前までは。

 ロシアは明らかに、数年前ウクライナのクリミア半島併合の成功に味をしめていた。

 ウクライナ全土に蔓延る「ネオナチ勢力から国民を解放する」という妄想に近い因縁をつけ、侵攻をはじめた。

 当初の「電撃的にゼレンスキー大統領を捕らえるか国外に追放し、親ロシアの大統領と首をすげかえ、全土を支配する」という甘々な戦略は即時に破綻し、士気の高いウクライナ軍に反撃され現在でも戦闘は続いている。

 ロシアはこの悪手で西側諸国だけでなく、近隣のポーランドなどもNATOに加盟させてしまうなど、国際的孤立化が深まっている。

 西側諸国による経済制裁のみならず、ウクライナへの武器提供が各国から継続されるのに加え、ロシアは戦費を浪費するばかりで、武器弾薬は不足し、兵糧も滞り気味だとも聞く。

 第二次世界大戦で、アメリカ・イギリス等から支援を受けドイツをスターリングラードで撃退した成功体験と真逆の状態になっている。独ソ戦のときのロシア(当時ソ連)は、現在のウクライナである。

 人間はつくづく「成功からは学べない」というが、ロシアの場合もそれに該当するであろう。

 まだウクライナ戦争は長期化の様相を呈し、戦況に予断を許さないので、このあたりにしておきたい。


 (憲法第九条)

 戦争に関して我が国は、日本国憲法で第九条において簡単にいえば「戦争をしない」と定めている。

 とはいえロシア、北朝鮮、中国といった物騒な隣国がいるうえには専守防衛を掲げ、自衛隊を保持している。

 自衛隊が第九条に定められている軍隊かといえば建前上は「守備隊」という位置づけになるだろうが、実際はアメリカから最新の戦闘機やイージス艦、武器弾薬を購入しているので「軍隊」であることは間違いない。しかもなかなかの先進兵器を揃え、自衛官の練度が高いため隣国の抑止力になっている。

 憲法九条の改憲については長年の議論のもとになっている。すなわち日本国憲法は戦後まもなくGHQがやっつけ仕事で作った代物で、八十年近く改憲もせず解釈の変更のみで適用しているのは現実的ではない、ということだ。

 GHQとて占領をやめた時点で日本人による改憲を想定していたはずであるが、律儀な?日本人はひたすら憲法をいじらなかった。

 その結果「憲法九条を世界遺産に」などというちょっと考えられない提案をする人たちまで出てくる始末だ。

 戦争は暴力ではなくて、外交の一部分である。交渉が決裂して致し方ないとき両国による交戦が始まるのが常であるが、憲法九条は外交手段を封じている世界唯一の憲法といえよう。

 日本を侵略してくる国々に「わが国には戦争をしてはいけないという憲法がありますので、攻めてこないでください」とお願いして、それが通るはずがないのである。

 「話し合いでなんとかなる」とリベラル界隈の人たちはいうのだが、それでなんとかなれば世界中から戦争や紛争は根絶されている。

 やはり専守防衛の立場のわが国であれば、自衛隊戦力の拡充、アメリカの核の傘の下にいるから抑止力が働き、平和を維持できているという見方が現実であろう。

 台湾有事(中国が台湾に戦争をしかける)が起こった際は、自衛隊が米軍の支援をすることになる(集団的自衛権の駆使)であろうが、これは視野を広く持てば、中国が沖縄・九州に侵攻する抑止力になるはずだ。

 さらに現実起こっているロシアのウクライナ侵攻でウクライナに支援物資を送ることも、中国が台湾侵攻を思いとどまらせる抑止力だ。

 とにかくこれらのまわりくどい国土防衛をしなければならないのは、憲法九条が足かせになっている。戦争をしてはいけないのは常識として、国から交戦権を奪うのは、国民の尊厳を無視しているのと同義だと考えるがどうか。


 (戦争体験)

 私はもちろん戦後生まれなので、TVで観る戦争しか知らない。しかしうちの祖父は戦争体験者である。どころか、陸軍大学を卒業し、中国戦線で戦った後、陸軍省で敗戦を迎えた陸軍大佐であった。

 祖父は文武両道を絵に描いたような人で、フランス語も堪能で器械体操を活かした戦場での機動力など我が家系中興の祖と呼んで差し支えないのだが、本人は戦後ほとんどといっていいほど戦争のことは語らなかった。

 「敗軍の将兵を談ぜず」ということばを実践していたのか定かではないが、恬淡と戦後を暮らし亡くなった。

 父は太平洋戦争が始まった年に生まれたので、疎開とか焼野原になった東京とかの記憶がかすかにあるらしい。

 祖父が若い将校たちを自宅に呼んだとき、頭に軍帽をかぶせてもらって敬礼をしたらまわりが笑っていたという思い出もあるとのことだ。

 祖父に話は戻って、部隊長になった祖父は戦場でも戦死した部下のご遺族にお手紙をしたためていたらしい。これは常識的な職業軍人なら誰しも行っていることである。

 戦後も時間ができたときは、亡くなった部下のご遺族へご挨拶にまわっていた。こういう悲しい話題は戦場を踏んだ人にしかわからない。

 命令一つで宣戦布告を命じる指導者は昨今もいるが、戦場のリアルは後方の安全なところから指揮している者にはわからない。

 戦争を続けていくとベテランの軍人が戦死していってしまい、新兵を前線に送らざるをえなくなる。ベテランの指導を受けていないので充分な訓練もされず戦う結果戦死者がさらに増える。さらに新兵を徴兵して国内の労働生産力が減る、といった悪循環が起きる。

 これはどの国も長く戦争を続けていく上で起こるジレンマであり、これを解消するには戦争をやめるしかないのだから、いかに戦争がコスパの悪い代物かということがわかる。


 (洗脳教育)

 未だに太平洋戦争において、日本がアジアに対して悪事を働いた、すなわち侵略行為を行ったと信じている日本人は多い。

 侵略といえば形だけ見ればそうかもしれないが、現実は白人国家支配からのアジア人によるアジアの解放という側面もある。

 このように思い込む人が多いのは、敗戦後日本を占領していたアメリカのGHQによる「ウォーギルトインフォメーション」という洗脳教育を国民が受けた影響が強いと感じる。

 すなわち日本は世界に対して大きな戦争犯罪を行った。ゆえにその行為を止めるために原子爆弾を投下し、アメリカ軍は平和を取り戻してあげた云々……というものである。

 しかし植民地政策は戦勝国ならばどこも日本のように行っており、原爆に関しては「黄色人種なら落としてもかまわないだろう」という人種差別および人体実験を広島・長崎市民を対象に行ったまぎれもない戦争犯罪だ。

 それを棚に上げて敗戦国の国民に「私たち日本人は戦争で悪いことをしてしまいました」と洗脳教育をしていたのである。

 もちろん最近はそういう行為を「自虐史観」として客観的に分析できる人やマスコミも増えてきた。それでもまだ洗脳教育が残るリベラルの人たちからは「右翼だ」との誹りをうけることもあるようだ。

 戦争に負けるとは、こういう嫌な議論や分断を生んでしまうことでもある。一か八かの賭けで戦争を仕掛けるのはあらゆる面でコストに見合わない。しかし太平洋戦争に関しては、アメリカから「ハルノート」など到底受け入れられない挑発で宣戦布告まで追い詰められた現実も理解しておかねばなるまい。


 (これからの戦争)

 本文冒頭で、ロシアのウクライナ侵攻から戦争が「先祖帰り」してしまった、と述べた。

 今回のウクライナ戦争はロシアの独裁者の脳内で侵攻が決まったようなもので、現在の戦争のトレンドからすれば例外的ではあろう。

 しかし例外的とはいえ、独裁政権が存在すればこのような前近代的戦争が起こってしまうというケースを世界は目の当たりにした。

 ヨーロッパの資源国同士の戦争は、たちまち全世界に波及し物価高騰・インフレという経済効果となって顕れた。今や世界各国の経済はグローバル化しており、戦争当事国でなくてもダメージを受けてしまう。それを鑑みれば当事国同士がいかに人的物的消耗を強いられているかも容易に想像できるであろう。

 戦争は始めるよりもおさめることの方が難しい。相手を徹底的に打倒するか、お互い妥協して講和するか。現在の被害と将来の危険を天秤にかけ、その均衡点でどちらのタイプの終戦にもっていくかを決定する。

 ウクライナ戦争の場合はロシア大統領が独裁者であることから合理的な判断ができるか疑問符がつく。一方のウクライナも領土を割譲してまでの講和には応じないだろう。

 このように戦争が泥沼化すれば悲劇である。日本も中国・北朝鮮の脅威から国土を守るためには話し合いが到底通じる相手ではないことから、軍備を増強してアメリカとの同盟強化と抑止力を高めることが現実的な対応であろう。

 平和的交渉は理想ではあるが、現時点では戦争回避の努力は抑止力拡充以外方法がないのが悲しいところである。

                  終


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