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(一)-2
終えて部屋に戻ると、女はまだベッドに横たわっていた。
「でも良かったの、今日私とこんなところにいて。奥さん、今頃出産なんでしょ」
ようやく息も落ち着いた女は、そう言うと開いたままの足を閉じて横向きに直して巨勢の方を向いた。
「義理の両親がついている」
巨勢はシャツに袖を通しながら答えた。
「大丈夫なの?」
「仕事が忙しいと言ってある」
「嘘つき」
「仕事が忙しいのは事実さ」
「さすがは極皇商事の不動産部門のエリートさんね。その割には愛人とこうして毎週会っているじゃない」
(続く)