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レナードは暫く放心状態で固まっていたが、不意に我に返り声を上げた。


「……確かに今はもう、君は私の婚約者ではない。だ、だがユスティーナっ、聞いてくれ。私は君を愛しているんだ!今更だとは分かっている。それでも今の気持ちに嘘偽りはない。赦されるならもう一度始めから君とやり直したい」


「……」


必死なレナードの様子を見て、彼が嘘を言っている様には見えない。


「実はここだけの話、私は国を出ようと考えているんだ。そこで君にも一緒に着いて来て欲しい」


「国を出る……?」


「あぁ、そうだ。国を出て十分な力をつけて、私はまたいつかこの国へ戻り……私は兄上を見返してやるんだ」


レナードの不穏な物言いにユスティーナは眉根を寄せた。「見返してやる」流石のユスティーナにもその言葉の意味は理解出来た。彼は謀反を起こそうと考えている。そして彼の目的は、玉座だろう。


「だからこそ愛する君には私と共に来て貰って、私を支えて欲しい」


「……それは、私にヴォルフラム殿下を裏切れと言う事ですか」


「裏切るなんて人聞きの悪い。君は元々兄上とは婚約を解消すると話していただろう」


虚ろな笑みを浮かべるレナードに、少し乱暴に両肩を掴まれた。


「⁉︎」


「大丈夫だユスティーナ、君の気持ちは分かっている。私達は同じ気持ちだ、そうだろう?私は君を愛しているし、君も私を愛してくれている。私達は愛し合っているんだ。だが君は誠実だからな、婚約者のいる身では素直になれないのだろう。だから先ずは兄上と正式に婚約を解消しなくてはならない。詳しい話はそれからだな」


この方は変わらないな、そう思った。ジュディットの事を後悔する姿を見て、リックに剣術を教えている姿を見て、少しは変わったかも知れないと思ったが、人はそんなに直ぐには変われない、改めてそれを実感した。


「レナード様」


「ユスティーナ?そんな不安そうな顔をしてどうしたんだ?心配など不要だ。君には私が……」


「例え、私がヴォルフラム殿下と婚約を解消したとしても、この先私が貴方を愛する事はありません」


思いの外、大きな声が出てしまった様で裏庭に声が響いていた。そんなユスティーナに、饒舌だったレナードは目を見張り再び黙り込んだ。


「それにレナード様、貴方はもう王族から除籍されたんですよ。何故そうなってしまったのかを、考えた事はないんですか?貴方は王族として相応しくないと判断されたんですよ。もしもこの先貴方が謀反を起こし玉座を略奪しようとも、貴方を王として認める人間なんてどこにもいません。そんな下らない事を考える暇があるなら、もっと他にすべき事があるのではないですか?」


目を限界まで見開き、まるで信じられないと言わんばかりに彼は小刻みに身体を揺らしていた。


「彼女の言う通りだよ、レナード」


するとその時、木の陰からヴォルフラムが姿を現した。彼は瞬時にユスティーナからレナードを引き離すと、手を引いて立ち上がらせる。そしてユスティーナは彼の腕の中にスッポリと収まった。


「兄、上……一体、何時から……」


「二人が話し出した時には既にいたよ。気配に気付けないなんて、平民になって随分と堕落したようだな。それともユスティーナに夢中になり過ぎて周りが見えていなかったのか。まあ、どちらにしても、情けない事に変わりないけどね」


ユスティーナはヴォルフラムを見上げると、目が合った。彼は鮮やかに微笑む。


「レナード、お前は血を分けた弟だ。故に情けでこれまで自由にさせてやっていたが、それも終いだ。お前如きが力をつけた所でたかが知れているが、危険分子を野放しには出来ない」


その瞬間、足音がバタバタと聞こえたと思ったら、どこからともなく兵士等が現れレナードを拘束した。


「ユスティーナはっ、私のモノだ‼︎彼女も王位も全て私が手に入れるんだっ‼︎」


レナードは引き摺られる様にして連れて行かれる。その姿が見えなくなっても、暫し彼の叫び声だけは聞こえていた。







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― 新着の感想 ―
[一言] そうだよね〜 玉座奪うって言っちゃったしねぇ〜 腹黒ヴォルフラム殿下の思惑通りになっちゃったねぇ… 大人しくしてれば軟禁だけで済んでたかも知れないのに… ま、国を出た時点で消されてたとは思い…
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