表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/63

47




「ユスティーナ、本当に久々だな。急に来なくなったから心配していた」


「すみません、少し用事がありまして……。それより、リックは風邪を引いてしまったんですね」


彼女の言葉にレナードは、一刻前の事を思い出す。レナードが何時も通り屋敷を訪ねると、リックの姿はなかった。シスターに聞いてみると昨夜から熱を出して寝込んでいると言われた。それなら用はないので帰るかと思うも、もしかしたら今日こそユスティーナが来るかもしれないと期待して少し待つ事にしたのだ。


「そうみたいだ。だが医師にも診せて薬も飲んだらしいし、心配は不要だろう」


「ふふ。レナード様は本当にリックを可愛がって下さってますね。ありがとうございます」


久々に見た彼女の笑みは花が綻ぶ様に愛らしい。思わず喉を鳴らしたレナードは暫し見入ってしまう。


「以前から少し気になっていた事があったんですけど、聞いても良いですか?」


「あぁ、何だ」


「レナード様はどうしてこんなに頻繁に此方にいらっしゃるんですか?やはりリックに剣術を教える為ですか?」


まるで何かを期待しているかの彼女の言葉にレナードの胸は高鳴る。少し上目遣いで甘えた様な表情、これは間違いないだろう。


「半分はそうだが、半分は違う」


「それは……」


レナードはベンチに置かれていたユスティーナの手に自分の手を重ねて、彼女の目を真っ直ぐに見つめた。


「ユスティーナ、君に会いたいから来ている」


そう伝えると彼女は少し目を見開き、黙り込んでしまうが、優しく微笑んでくれた。その様子にレナードも自然と頬が緩む。

そしてユスティーナの笑みを見て確証を得た。今、彼女の気持ちは完全に自分に向いている。ユスティーナは、もはや自分のモノも同然だ。


「そう、なんですね」


「あぁ、それに正直に白状すれば、寧ろリックに剣術を教える事は君に会う為の口実であって、君に会いに来る事の方が目的で……」


「レナード様」


「?」


最後まで話終える前に珍しく彼女に言葉を遮られ、レナードは目を丸くした。


「もし、それが本当なら……もう此方にはお出でにならないで下さい」


「は……」


期待していた返答ではない予想外の言葉にレナードは呆気に取られた。


「な、何故だ⁉︎私は君に会いに、き、君だって私に」


頭が混乱して上手く言葉が出てこない。そんなレナードに対してユスティーナはとても冷静だった。


「では、逆に聞きますが、何故ですか?」


「は?何故、とは……」



「貴方はもう、私の婚約者じゃないのに」



無表情でそう言われ、頭が真っ白になっていく。彼女の顔に先程までの優しい笑みはもうない。レナードは放心状態になりながらユスティーナを見ているしか出来なかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] こりゃ御尤も! レナード浮かれすぎてたねぇ〜。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ