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天狗(てんぐ)の学校

作者: カズ ナガサワ

 昔むかし、山のまた、その山の奥深くに、天狗たちが暮らしていました。


 天狗たちには、不思議な力がありましたが、その力を身に付けるためには、学校に入り、厳しい修行をしなくてはなりません。

 天狗の学校は、大きな木の下に空いた、ほこらの中にありました。先生は大天狗。生徒たちは子天狗が七人です。子天狗たちの座る席は、天狗の力を示す鼻の長さで決められていました。それで子天狗たちは、毎朝学校に来ると鼻を比べ、自分の席を決めるのでした。


 そして、学校での子天狗たちの呼び名は、鼻が長い順に、一番天狗から七番天狗と呼ぶことになっていました。なので、毎日、誰が何番目なのかを覚えなければなりません。

 子天狗たちの毎日は、こんな感じです。

「おれは今日は三番天狗だ!あいつは、一番から四番になったな!」

「おはよー、三番天狗!」

「おはよー、一番天狗、、から四番天狗になった四番天狗!」

「やっちゃった~。鼻が縮んでいく!」

「おい、おれの鼻もだ。間違えてたらダメだぞ!」

 もしも呼び名を間違えてしまうと、その度に鼻が縮んでしまうのでした。すると、七人の順番がまた分からなくなり…

「ごめん!皆んな、また間違えたー、鼻比べ、お願いします!」

「いいよ。この前は俺がやっちゃったし!」

「間違えは誰にでもある。いいってことよ!」


 そして暫くたつと、子天狗たちは仲間の鼻を見ると、直ぐに誰が何番目か分かるようになります。それも、天狗の力の一つになるのでした。

 先生の大天狗おおてんぐは、子天狗たちが一生懸命勉強して、鼻がどんどん長くなるのを、毎日楽しみにしていました。 



《不思議な力の元》

 

 天狗てんぐの不思議な力は、自然の力を自分の力に変えることで身に付きます。その力を持つためには、三つのおきてを必ず守らなければなりません。もし、そのおきてを破ると、力が全て失われてしまうのでした。

 学校では、どういうことがおきてなのか、どうすると破ったことになるのかを学びます。


 それでは、これから天狗の学校の様子を、見に行くことにしましょう。




《自然の勉強》


 一時間目の『自然』の勉強がはじまりました。


 自然の勉強では、風や雨、太陽や月、草や木、花など、自然にあることを何でも勉強しなければなりません。天狗たちにとって、とても大切なことです。

 最初に、子天狗の中で、一番鼻の長い一番天狗が質問しました。


一番天狗「おたずね申す。風はときに、木を吹き飛ばしまする。木は風を怖がりませぬか?」


大天狗「誰か、思うところあらんか?」


三番天狗「われは、木は風と戦った。ゆえに、木は怖くないから風と戦い、それで負けたと思う!」


大天狗「ほかに?!」


七番天狗「われは、怖がっておったと思う。木は動けぬゆえ、怖くて逃げられなかったと!」


大天狗「ほかに?!」


二番天狗「われは分からぬ!ただ、木はまた生える。怖いと思うても、また生えればよいと、思い直そう!」


大天狗「確かに!…風は空気なり。空気が太陽などの力により流されて、風となる。木はその空気から息をして生きておる。また、太陽からも光を浴びて葉が茂り、生きるかてとしている。」


五番天狗「おたずね申す。太陽は夜に隠れ、朝にはまた現れ申す。常に照らそうとせぬは、なぜ?」


大天狗「誰か?」


一番天狗「太陽は天に一つ。あまねく照らすために場所をかえる。そして、必ず朝にはまた登る!」


四番天狗「あまねくは、違っておる。雲や山、木などの陰により、太陽の光はさえぎられる。あまねくに足らずや!」


大天狗「確かに!」


六番天狗「さにあらず。あまねくとは、常に当たる光にあらず。長きに渡り、自らが当たろうと努めることと!」


大天狗「確かに!でわ、最後の一問を許す。」


五番天狗「人間は、木は心を持たぬものと、思うのはなぜ?」


大天狗「われ思う。人間の求める心は、人間が定め、それを心としているもの。万物様々に、思いを抱くことを忘れておる。それゆえ人間は、木は心を持たぬとしておる!」


一番天狗「相わかり申した!」


他の子天狗たち「よく分かりませぬ!」


大天狗「人間については、また別の機会に学ぶとする。」




《風の力の勉強》


 二時間目の「風の力」の勉強がはじまりました。

 子天狗たちの中には、すでに風に乗って遠くまで、飛んで行けるものもいます。でも、どうやって力を蓄え、使うのか、分からないことばかりです。

 まだまだ練習や勉強が必要です。


一番天狗「おたずね申す。昨日、風に乗り山を越えますれば、戻るに戻れず、落ちてしまいました。いかなることで、落ちまするのか?」


大天狗「誰か、思うところあらんか?」


二番天狗「一番天狗の力が足りなかったと!」


三番天狗「戻るに戻れずとは、一番天狗が必ず戻れるものと、思うて飛んでいたかと!」


四番天狗「ちゃんと風に乗るとは、戻るときにいかなる風に乗るかでござる!」


七番天狗「われはまだ飛べぬ。でも、たとえ落ちても、どこまでも、どこまでも遠くに飛びたいと思いまする。」


大天狗「ほかに?」


六番天狗「われも飛べませぬが、沢山飛べるようになりとうございます。」


大天狗「相わかった。見える力とは、使えば使うほど減る力!どこまで飛べたかは見える力じゃ。…思う力とは、思えば思うほど、増す力。その時、一番天狗が戻ろうと思うたか、より遠くに飛ぼうと思うたか、その違いにある!」


一番天狗「私は、そのとき里に戻ろうと思うておりました。」


子天狗たち「相わかり申した!」


大天狗「うむむ!、さすれば、これから飛び方を実際に学ぶとする。誰ぞ直ちに風を読め!、一同したくをせい。必ず飛びたいと思うのじゃぞ!」


子天狗たち「相わかり申した!」


 子天狗たちは、学校のほこらの上にそびえ立つ、大きな木に登りました。うちわを使い軽々と登る者や、蔦を掴んで登る者など、まちまちです。

 そして、必ず飛びたいと、飛んでみせると思い、木の一番高い所に登ります。

 高くなればなるほど、風が木の枝を揺らし、ヒューヒュー音をたて、小枝がこすれて、ザワザワと波打ちます。

 大天狗は、一気に地上から木のてっぺんまで上り、子天狗たちに風の読みをたずねました。


大天狗「誰ぞ、風を読んだ者はおるか?」


二番天狗「はい、西の風が、少し北に巻いておりまする。私が乗ると、およそ一里かと!」


三番天狗「私は二里!、しかし皆が飛ぶためには、少し弱いかと!」


大天狗「相わかった!」


 すると大天狗は、自分のうちわで風を強めました。

 子天狗たちは、次々に飛んでいきます。そして七番天狗が飛び立つのを見て、最後に一番天狗が飛び立ちました。

 一番天狗は、飛びながら大天狗を見て言いました。


一番天狗「私は思いまする。皆が飛べるようにと私が思うたら、もしや私も飛べるのではないかと!」


大天狗「確かに、わしもそうじゃ…さあーゆくぞ!」




《天狗の掟》


その一 自然に思い、自然に振る舞い、自然に生きること。


そのニ 自然を慈しみ、自然を敬い、自然を育むこと。


その三 自然から学び、自然から受け継ぎ、自然から許されること。




〜〜つづく〜〜



作者 Kazu. Nagasawa

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