#30 彼は再び歩きだす
退院した日は自宅に直行し、その日はミワも来て、イクミとミワは二人ともその晩ウチに泊まっていった。
ミワは事故のことが結構なトラウマになっているようで大人しかったけど、僕とイクミでわちゃわちゃテンション上げて騒いでいたら、少しづつだけど元気を出してくれた。
それで、イクミに『ミワの弱点は、脇腹だ』と教えてあげると、早速ミワに襲いかかって、最終的に二人で取っ組み合いのコチョコチョ合戦に発展し、美少女二人の乱れた姿を『こ、これはタマラン!』とスマホで激写しまくった。
イクミとは事故以降、エッチなことはもちろん自重してた。
あ、でも病室でおっぱいは揉ませて貰った。
動かせる右手でモミモミしてたら「おっぱいのサービスは別料金になります」とか言い出したので、『オレの財布持ってこいやぁ!札束ビンタしてやらあ!』とノリで返すと、服とブラ捲って生乳見せてくれた。
イクミたんマジ天使
翌週明けの月曜日から学校に復帰することになり、この週末土曜日にイクミは戻ることになった。
今回の見送りは、本当は新幹線の駅まで行きたかったけど、イクミに「無理したらダメ!」と強く拒否され、地元の駅までしか見送りさせて貰えなかった。
入院中、心身ともに支えとなってくれたのは間違いなくイクミであり、僕の中でのイクミの存在感とか愛情とか、今まで以上に揺るぎない物になったと自覚した。
イクミを見送った翌日から、早速リハビリがてらにウォーキングを始めた。
日曜の朝、ミクと待ち合わせて、市内の総合グランドまで片道20分ほどの距離を二人で歩いた。
初日はかなりきつかった。
以前なら20分の距離でも、この日は倍の40分以上かかってしまった。
途中、ミクとはほとんど会話をせず歩いた。
別にミクがツンツンしてるとか落ち込んでるとかではなく、喋りながら歩く余裕が僕になかった。骨折している腕も庇いながらだったし。
グランドになんとか到着すると、芝生に倒れ込んで休憩した。
休憩中ミクは僕の体を気遣い、パンパンに張っている脹脛や脛を根気よくマッサージしてくれた。ミクなりにリハビリのことや脚の怪我やマッサージのことなんかを事前に調べてくれていたみたいで、キチンとサポートの役目を果たしてくれた。
それで、ようやく落ち着いてまともなお喋りが出来る様になった。
ミクと二人きりでじっくり会話するのは、これが初めてだった。
『ミクちゃん、疲れてるのにマッサージありがとうね。凄く楽になったよ』
「いえ、私にはこれくらいしか出来ないので。約束ですし」
『そっか、でもありがとうね』
『ミクちゃん、あれから少しは落ち着いた?』
「はい、先輩には迷惑かけただけじゃなく、心配までして貰ってすみませんでした」
『いや、大丈夫だよ。あの時逆に僕が無事でミクちゃんに何かあったらって思うと、そっちの方のが恐ろしいし、これで良かったと思ってるから』
「あの・・・今回の事故だけじゃなくて、今まで失礼な態度とって、すみませんでした・・・」
『あー・・・まぁ、人間、合う合わないは人それぞれあるからね。苦手な人はどうやっても苦手意識があるから、それも気にしないで。 僕のリハビリ付き合うのも、しんどくなったら正直に言ってくれればいいから』
「いえ!そんなつもりじゃなくて・・・色々と先輩のこと誤解してました・・・お姉ちゃんにも散々言われてたのに、私ずっとムキになって・・・一緒に登下校する様になって、お姉ちゃんは先輩といるといっつも楽しそうで、私はそれ見て、面白くなくて、余計ムキになってて・・・」
『あ!それ!同じことミワに言われたことあるわ!』
「え?えーっと・・・」
『僕とミワも中学の時は学年でも有名なくらい犬猿の仲でさ、仲良くなったのって高校1年の夏なんだよね。で、その仲直りしたときに「イクミに散々怒られても僕のこと素直に見れなくて、僕とイクミが仲良くしてるのが余計にムカついた」ってこと言われたんだよ。今のミクちゃんの話とよく似た状況でしょ? で、その時、お互いに今までの事を反省してキチンと謝罪しあって、それで仲直り出来たんだよね』
「そうだったんですか・・・そういえばお姉ちゃん、いつの間にか先輩と仲良くなってましたね。あれだけ嫌ってたのに。そんなことがあったんですか」
『うん。 あ、じゃあさ、ミクちゃんはもう僕の事は嫌ってないってことでいいのかな?』
「はい・・・私もお姉ちゃんみたいに、先輩と仲良くしたいと思ってます」
『なら、これからは仲良くしよう。登下校でお喋りしたり、たまにでもいいから一緒に遊ぼう』
「はい、そうしたいです。よろしくお願いします」
と言って、初めて僕に笑った顔を見せてくれた。
笑ったミクは、やっぱり凄く可愛い笑顔だった。
こうやって、僕とミクは仲良くなることが出来た。
ミクと話してて、やっぱ姉妹で似てるなぁって感心した。




