#01 プロローグ
僕、三上アカリは、小学生の頃から走るのが好きだった。
中学校へ入学したら、迷わず陸上部へ入部した。
短距離でも長距離でもどちらでも良かった。
走っていると脳みそが空っぽになって、周りの景色がモノクロになる。
息が上がろうが、脚が重くなろうが、ひたすら走り続けた。
1年の夏、7月の市内の新人戦に長距離の代表選手に選ばれた。
新人戦では無事に優勝することが出来た。
8月の頭、部活の帰り道に交通事故にあった。
残りの夏休みは入院とリハビリで終わった。
脚には大きなキズ跡と後遺症が残った。
生活する中では問題無かったが、選手として走ることは絶望的になった。
夏休みが明けて新学期、顧問の先生と相談して、陸上部は退部した。
中学校の規則で、いずれかの部活動をする必要があったので、文芸部に入部した。
それからは、放課後は部活での読書と週2回のリハビリで過ごした。
周りの友達は、激変した僕の生活環境に同情して、色々元気付けようと気を使ってくれた。
特に同じ小学校出身の連中は、いつも僕のそばに居てくれて、一緒に登下校してくれた。
みんな、僕を笑わせてくれたり、遊びに誘ってくれたりした。
ある週末、同じ小学校出身の連中が遊びに誘ってくれて、ゲームセンターへ行った。
コインゲームで遊んでいたのだが、罰ゲームを賭けて勝負をすることになった。
罰ゲームは、好きな女の子に告白すること。
勝負は僕が負けた。
僕には好きな女の子が居なかったから、学年で1番可愛い子に告白することにした。
1年には二人の有名なかわいい子が居た。
一人は、森田ミワ。
目がクリクリして、親しみやすい笑顔が似合う美少女でバスケ部に所属。
もう一人は、高梨イクミ。
女子の中では身長が高く、バレー部に所属し1年なのに期待のエース。綺麗系でショートカットの美少女。そして中学生の割には胸が大きく、学年の中では1番モテていた女の子だったと思う。
二人は同じクラスで、仲が良い美少女コンビとしても有名だった。
僕は二人とも話したことは無く、こちらが一方的に顔と名前を知っている程度だったが、罰ゲームは森田ミワに告白することにした。
呼び出して告白するという発想が無く、放課後になったら彼女のクラスへ押しかけ告白することにした。
週明け月曜日の放課後、賭けをした連中を引き連れ、森田ミワの居る7組へ押しかけた。
まだ教室に沢山残っているなか、森田ミワのところまで行き、目の前に立って『好きです!付き合って下さい!』とクラス中に聞こえる大声で告白した。
滅茶苦茶ドン引きされて、嫌悪感丸出しの顔で「キモイ、最低」と即フラれた。
フラれること自体は判り切っていたが、予想以上に嫌悪されたことには結構凹んだ。
それでも一緒に来ていた友達連中とは帰り道、僕の告白のことで盛り上がりながら帰った。
翌日学校に行くと、前日の告白のことが学年中に広まっていた。
クラスでもバスケ部の女子から「ミワちゃんに告白してフラれたんだって?」と聞かれたので『汚物を見るような目でフラれたよ』と答えると「ドンマイ!」と笑いながら励まされた。
同じクラスの連中は、僕に同情的だったが、他のクラス、特に僕と交流の無い人たちからは、敵意を向けられた。
同じクラスのバスケ部の女子が教えてくれたが、森田ミワは僕に対して相当怒っているらしく、絶賛ネガティブキャンペーンを繰り広げているらしい。
好きでもない子に罰ゲームで告白、しかも大勢の目の前でそれを実行したんだから嫌われても仕方ないし、色々言い広められても自業自得だと思って、何も反論せずに、色々な奴から何か言われてもスルーした。
罰ゲームを賭けて遊んだ友達たちは、そんな僕に申し訳なく思ったらしく謝ってくれたが、ド派手に目立つ告白は自分で決めて実行したことだから謝る必要ないよ、気にするなと笑って強がった。
幸い、同じ小学校の友達やクラスの連中、文芸部の子たちは、相変わらず僕と仲良くしてくれていたので、イジメになるようなことは無かった。