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evold ~怪人になった少女~  作者: ドラグ
第1章 ようこそ、怪人の世界へ
5/17

ep5 覆われたベール

今回は平和な回だよ!

目を覚ますと、毎朝目覚まし時計を鳴らしている時間より5分程早かった。

寝ぼけ目でアラームが作動する前に前もって解除する。

カーテンを開けると、清々しい朝日が目にしみた。

昨日の出来事が全部夢みたいに思えるけれど、

体の感覚から夢じゃなかったんだってわかってしまう。

だって、目の周りに違和感があったから。

部屋の鏡に顔を写すと、案の定目の周りに例のヒビが入っていた。

「んん・・・、寝ぼけて入っちゃったのかな。」

このままヒビを全身に広げて擬態を破れば、

私はまたあのトカゲの姿になってしまう。

だからヒビを手で撫でて、なじませた。

おそらく本当は触っただけでは何の効果も無いのだろう。

でも、守江さんの話からきっと大切なのはイメージなのだと判断した。

こうやってヒビを消すみたいに触れば、そのイメージが反映されるんじゃないか。

私の予想は的中し、ヒビは消えていつもの私の顔に戻った。

ホッとした私は、改めて深く息を吸い、そして吐いた。

「私が、エヴォルド・・・。」

未だに自分の身に起こった事を受け止めきれない。

私はこれからどうすれば良いのだろう。

しかし、日常は困惑する私を置いていつも通り始まろうとしていた。

とにかく、今はいつも通り登校するしかない。

擬態していても抑えきれない怪力を持つ今の私が学校に行って大丈夫なのか

不安しかないけれど、これ以上お母さんを心配させるわけには行かなかった。

何とか周りに迷惑をかけないように、力を制御しよう。

そして、学校が終わったら守江さんのお店へ行こうと思う。

エヴォルドの事を守江さんから聞けば、少しは自分がどうするべきか

わかるかもしれないから・・・。

「あ、竜ちゃんおはよう。

今日はちょっと早いのね?」

リビングでは、お母さんが朝ごはんの用意をしていた。

お父さんは既に会社へ行っていた。

「おはよ、お母さん・・・。

昨日はコップを割って、夜中に外出して、

お母さんをケガさせて・・・、

たくさん迷惑かけて、本当にごめん・・・!」

「そんなに謝らないで良いのよ。

それに、痛いは痛かったけど別にケガはしてないし。

それより早く朝ごはん食べなさい?

ちょうど今出来立てだから!」

私は寛大なお母さんに感謝しながら席に着いた。

白米に大根の味噌汁、卵焼きといううちの朝食メニューの大定番だ。

「いただきまぁす。」

何とかモノを壊さない様に力を抜いてお箸や茶わんを持った。

うう、常に豆腐を崩さない様に神経質になってるみたいで辛い・・・。

・・・そういえば、昨日はコップこそ壊したけど、

その後の晩ごはんでは何も壊さなかった。

つまり昨日初めて擬態が解けたあの時までは、

あの瞬間を除いて普通の握力だったってこと・・・?

何だろう、その時はまだ完全なエヴォルドにはなっていなかった、とか?

この辺の事も守江さんに聞いたらわかるのかなあ。


学校での1日は、私が力を入れすぎない様に注意しているのを除けば

いたって普通の生活だった。

今日も友美ちゃんは女子軍団と話している。

私は一人。

そして放課後、ようやく話しかけてくれた。

「竜奈~!

今日ずっと表情が強張ってたけど大丈夫?調子悪いの??」

友美ちゃん、例の軍団と話しながらも、力のセーブに四苦八苦してる

私の事ちゃんと見ててくれたんだ!

それが私にはとてもとても嬉しかった。

「うん、大丈夫。

昨日の夜ちょっと調子悪かったけど、一晩寝たら治ったよ!」

・・・ほんとは全然大丈夫じゃないんだけどね。

大丈夫じゃないどころか、人間やめちゃったよ。ハハハ。

「でも一応念には念をと思って、今日はこの後お医者さんに診てもらう予定。」

と、今日の予定をごまかした。

「そっか、お大事にね。

私は今日から部活再開だよ、辛いなぁ。」

「吹奏楽、大変なんだよね?」

「もう大変ってもんじゃないよぉ。

体力づくりとかさ、いっぱいやることあって。」

「頑張ってね!」

「うん!ありがとう!」

私は部室へ向かう友美ちゃんを見送った。

・・・ほんと、学校の光景は何にも普段と変わらない。

けど、私は知ってしまった。

この日常というベールの裏に潜む怪人達の事を。

そのベールがちょっと剥がされるだけで、

日常は地獄と化す。

日常とは、まるでエヴォルドが人間の皮を被って擬態しているかの様に、

表面上にあるまやかしに過ぎなかったのだ。

エヴォルドはきっとあちこちにいる。

いつこのベールが破れるのか、誰にもわからないのだ。

私の日常は、昨日壊されてしまった。

・・・どうか、友美ちゃんの日常はこのままずーっと

ベールで覆われています様に。

私は心からそう祈った。


一度帰宅してから私服に着替え、再び外に出た。

昨日渡された名刺の住所をスマホに入力して、

『なごみ堂』を目指した。

20分位探し回って、ようやく見つけた。

随分わかりにくい所にあるので、

GPSがあってもわかりにくかった。

店の外観は、古めかしい伝統的な駄菓子屋って感じだ。

こんな所に駄菓子屋があるなんて知らなかったなあ。

「すみませーん。」

店に入って声を上げる。

反応が無い。

聴こえていないのかな。

店内を見渡してみた。

皆が良く知ってる駄菓子から、全く聞いたことないマイナーなやつまで、

豊富な品が揃っている。

もちろん値段がとても安い。

小学校の頃にこの店を知っていたら、

絶対ここで遠足のおやつを買っていただろう。

「あっ、竜奈ちゃん!いらっしゃい!!

早速来たんだね!!」

守江さんは、店の中では無く外から入ってきた。

「あれっ、外出中だったんですか?」

「ええ、ちょっとね。

店は炎ちゃんに任せて。」

「えっ、炎さんが!?」

レジの方を見たら、さっきは気が付かなかったけど

炎さんがすっっっっっっっっっごい嫌そうな顔で座っているのに気が付いた。

「あっ・・・、気が付きませんでした。」

何だか本人の冷酷なイメージと、駄菓子屋で店番やってる姿にギャップがあって

面白い。

「・・・そのまま気が付かなくて良かったのに。」

やっと炎さんが喋った。

相変わらずドスの効いた恐い声だ。

「守江、私はもう良いだろ。

下がってるぞ。

お前らとは関わりたくない。

同盟ごっこは勝手にやってろ。」

「はいはい、店番ありがとね!」

「・・・フン。」

そう言って炎さんは店の奥に入って行った。

「炎ちゃんね、うちに住まわせてもらってる身だからって言って、

エヴォルド絡み以外だったら嫌々言いながらも結構色々手伝ってくれるんだよ。

ああ見えてほんとはかなり優しい子!」

守江さんは私の耳にひそひそとささやいた。

「・・・不思議なんですけど、

炎さんはどうして自分もエヴォルドなのに、

エヴォルドをあんなに憎んでるんですか。」

私がそう聞くと、守江さんの表情が深刻に変わる。

「・・・炎ちゃんはご両親をエヴォルドに殺されて、

自分も殺されかけてエヴォルドに覚醒したの。

だからこの世の全てのエヴォルドを憎んでる。

・・・当然、自分自身も含めて。」

「そう・・・なんですか・・・。」

あの顔は何かとてつもなく重い物を背負っている顔だな、と思っていたけれど。

やっぱりそんな過去があったんだ・・・。

可哀想に、と私は同情した。

「・・・それじゃ、竜奈ちゃん。

本題に入ろっか。

お互いの情報共有。

あなたは私に、エヴォルドになった経緯を。

私はあなたに、エヴォルドに関する知っている情報を。」

「あっ、はい。勿論です!

ただ、私はどういう条件で人がエヴォルドになるのかよくわからないので、

もしよろしかったら守江さんのお話を先に聞かせて頂けませんか?

その方が説明もスムーズにしやすいと思うんです。」

「そうね、それじゃあ私からやらせてもらおうかな。」

私の提案を受け入れてくれた守江さんは、早速話を始めようとした。

「・・・え、今更なんですけど、売り場でこんな話しちゃって大丈夫じゃない

ですよね?もっと人目につかない所の方が・・・。」

私がさっきからさりげなく気になっていた疑問を守江さんにぶつけると、

「あー、良いのよ別に。

どうせこの店、場所が分かり辛すぎて誰も来ないもん。

一応炎ちゃんに店番は任せたけど、

もうずっと長い事客来てないから!」

と笑いながら言い放った。

・・・この駄菓子屋、どうやってやりくりしてるんだろ。

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