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evold ~怪人になった少女~  作者: ドラグ
第1章 ようこそ、怪人の世界へ
2/17

ep2 変身

第2話です。

現在5話まで書き溜めてあります。

「あぁ、竜ちゃんお帰り。遅かったね?」

玄関ではお母さんが出迎えてくれた。

「ただいま。ちょっと友美ちゃんと話し過ぎちゃって・・・。」

道で倒れて悪夢を見ていたなんて言えないのでとりあえずこう言った。

まあ、嘘は言ってないからいいや。

「あらそうなの、良かったねぇ。

それじゃ、カバン置いておいで。

おやつ用意してあるから。」

「うん。」

私はカバンを片付け、早速おやつを食べた。

最近人気のコンビニのチョコケーキだ、一回食べてみたかったんだよね。

・・・と、ここまでなら、いつもの光景だった。

しかし、

「ご馳走さま、ふう・・・。」

私がケーキを食べ終えてコップを握った瞬間、不可解な事が起こった。

パキンッ!!

「え?」

何と、コップが粉々に割れてしまった!

「ええっ!?何で!?」

「どうしたの竜ちゃん、何の音!?」

「お、お母さん、これ割れちゃった!!」

テーブルの上は、コップの破片と中に入っていた麦茶であふれている。

「大丈夫!?怪我してない!?」

「えっと・・・、ちょっと人差し指が切れちゃった。」

「大変!あれは私が片づけるから、早く指を洗ってきて!!」

「ありがと、お母さん!」

私は洗面所へ走った。


蛇口から出る水で出血する人差し指を洗いながら、

どうして急にコップが割れたのか、不思議に感じていた。

ヒビでも入ってたのかな・・・?

いや、見た目はいつも通りのコップだった。

毎日使ってるんだから間違いない。

だとすると、どうして少し力を入れただけで・・・。

「竜ちゃん、指大丈夫??」

テーブルを片付け終わったお母さんが洗面所に私を心配して来てくれた。

「うん・・・。ねえお母さん、何であれ割れちゃったんだろ・・・。

昨日までちゃんと使えてたよね?」

「私が麦茶入れた時は、普通に持てたんだけどね~・・・。

・・・あれ、竜ちゃん?指が・・・。」

「え・・・?」

私は水から離して人差し指を見た。

なぜか、さっきまであった傷が綺麗さっぱり跡形なく消えていた!

「あれっ!?どうして傷跡が・・・!」

「お、お母さんにも見せて!

・・・さっきまで出血してたのに、どうして。」

お母さんは連続して起こった不思議な出来事に目を丸めている。

何か、嫌な予感がした。

でもそれが何なのかわからなくて、言葉に出来なかった。

「・・・ま、若いうちは傷の回復も早いんじゃない?

すぐに治って良かったわね!」

「そ、そうだね。」

私もお母さんも、苦笑いで今目の前で起こった異変から目を背ける様に言った。


次に異変が起こったのは、夕食後、宿題をしている時だった。

ふと、私の身体に、何か感じたことの無いゾワゾワした感覚を覚えた。

それは、まるで誰か水面に指で触れた時に広がる波紋の様だった。

「・・・何、今の?」

すると、さっきまで穏やかに感じられたそれが、

突如激しい流れに変わったのを感じた。

今度は、水に大きな岩が落ちて水しぶきが上がったような、そんな感覚・・・。

「何これ、気味悪いよ・・・!」

私は何か風邪でもひいてしまったのだろうか。

不安になってお母さんとお父さんに相談したら、とても心配された。

結局、大事を取って今日はもう寝なさいと言われた。

布団に入っても、さっきから続くゾクゾクは止まらない。

それは穏やかだったり激しかったり、

様々な場所から発せられている様に感じた。

「何なのこれぇ・・・。

これじゃ寝られないよっ!!

あ~っもう!!」

私は枕で頭を覆って、とにかく眠る事に集中した。

考えるな、感じるな。

眠れ、私。

眠れ・・・。



・・・?

どこ、ここ。

私の周りには、暗闇が広がっている。

またこれかぁ。

今日見た悪夢であの怪物に殺されかけた時に見た景色としている。

右の方で、チョロッと何かが動いたのを感じた。

やっぱり、あのトカゲだった。

「はぁ・・・、しつこいぞお前。

いい加減どっか行け!しっしっ!!」

もうトカゲで泣く年齢ではない。

トカゲを手で追い払うくらいの事は出来た。

しかし、トカゲは私の下を去らない。

トカゲは、じいっと私の方を見つめている。

「・・・何が言いたいの?」

トカゲは話せない。

ただ、こっちを見つめ続ける。

お互いに見つめ合う時間が、長い事続いた。

「・・・あれ?」

気が付くと、違和感を感じた。

相手の目から目線をそらす。

目の前にいたのはトカゲではなく、私だった。

「えっ、どうして私が目の前に・・・。」

そう言いながら手を前に持ってきた。

・・・その手は、私の手では無かった。

鱗に覆われた、獣の手。

それに、さっきまで私は立っていたのに、

今は四つん這いになっている。

そう、目の前に私がもう一人いるのではない。

私とトカゲが入れ替わっていたのだ。

「・・・いや、こんなの嫌っ!」

最悪だ。

よりにもよってトカゲと入れ替わるなんて・・・!!

目の前の私は、ニヤリと笑った。

まるで計画通りとでも言わんげに。

「返してよ。

私の体、返してよ!!」

私は私の身体に向かって懇願した。

すると、私の体は呟いた。

『あなたは、トカゲだよ』と。


「はっ!?」

私は布団から飛び出した。

「また夢ぇ・・・?」

一日に2回も悪い夢を見てしまった。

もう気分は最悪だ。

眠気も無くなってしまった。

時計を見ると、深夜2時。

これから朝までどう過ごそうか。

とりあえず水でも飲もうと思って2階の自室から1階に降りた。

・・・思えば、あの時道路で悪夢を見てから変な事ばっかりだ。

コップは割れるし、傷はあり得ない速さで治る。

おまけに変な寒気がする。

これも全部昼食の時にエヴォルドの話を聞いたせいだ。

そこで話を聞いたせいでそのイメージが頭に残って悪夢を見たんだ。

人の話なんて盗み聞きするもんじゃないな。

リビングや台所に繋がる玄関には、壁掛けの姿見がある。

そこを通ると嫌でも自分の姿を見ることになるのだ。

私は寝起きでボーっとしながらそこを通ったのだが。


「・・・・・え?」

信じられないモノが一瞬見えて、

素通りするつもりだった姿見に縋りつく。

「なに・・・これ・・・。」

そこに映る私の姿には、明らかにおかしい所があった。

目の周りだ。

目の周りに赤黒い、ヒビの様なモノが入ってる・・・!!

「きっ、気持ち悪い・・・!

何なのこれ!!」

・・・あれ?これ、どこかで見なかったっけ?

「・・・まさかっ!?」

思い出した。

これは、あの悪夢の中で、蝙蝠のエヴォルドが人間の姿から化け物の姿に

変わる瞬間に出ていたやつだ。

あれと、全く同じだ。

あの赤黒い不気味なヒビが、私の顔に!?

「ど、どうしよ・・・。

こんなのどうやったら治るの・・・?」

私は恐る恐る手でヒビに触ろうとした。

しかしその直前に、私の絶望はさらに加速した。

ヒビが、目の周りだけでなく顔中に広がったのだ。

「うわぁぁぁぁぁっっ!!!!!」

顔どころじゃない。

首、そして胴体にまで広がって行く。

「ダメぇっ!止まって!

広がらないでぇ!!!」

そしてあっという間に、ヒビは私の身体中を覆ってしまった。

「ハア・・・ハア・・・、これが・・・割れたら・・・。」

私はあの悪夢を思い出す。

あの時、蝙蝠のあいつはっ・・・・!

ヒビが割れたらっ・・・、

エヴォルドの姿にっ・・・!?

私の中に、最悪の答えが浮かんだ。

『ヒビが割れた時、中から怪人になった私が現れる』

「そんなのダメ!!!」

腰を抜かして膝をつく。

怖い。怖いよ。

嫌だ。

嫌だ。

あの蝙蝠に襲われる悪夢の時よりも深い恐怖が、

私の全身を包み込んだ。

「違う!

私が怪人になるわけない。

私は人間。

私はただの人間っっ!!!!」

頭を抱えながら、自分に言い聞かせるようにそう呟き続ける。

ヒビの中心地である目からは涙が無限に流れ続けていた。



『あなたは、トカゲだよ』

さっき夢の中で言われたその言葉がフラッシュバックした瞬間に、

私の姿は音も無く崩壊し、崩れ落ちた。

そして鏡に映っていたのは、"私"ではなかった。

「なに、これ・・・?」

全身を覆う鱗。

腰から伸びる長い尾。

分厚い筋肉に包まれる腕や脚、そして胴体。

そして、トカゲそっくりの、異形の頭。

口からは鋭い牙が生え、目は赤く不気味に光る。

「わ、わた、し・・・。」

私は手を恐る恐る顔に近づける。

すると、鏡の中のトカゲの化け物も、顔に手を近づけた。

「っ・・・・!!」

理解してしまった。

自分に何が起こったのか。

鏡に映っているのは、私だ。

この私の面影なんて微塵も残っていない、

何か特殊なスーツを着ている様にしか見えないトカゲの怪物。

しかし、顔に触れた時の手の感触も、顔の感触も、

全て地肌に触った時のそれと全く同じであった。

「いやあああああああああああああっっっっっっっっっっっっ!!!!!!」

私は、トカゲのエヴォルドになっていた。

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