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evold ~怪人になった少女~  作者: ドラグ
第1章 ようこそ、怪人の世界へ
10/17

ep10 君に伝えたい

ちょっと今回の竜奈の行動は色々問題があると感じると思いますが、まだ14歳の子なので温かい目で見てあげてください・・・!

「炎さん!落ち着いてください!!」

私は自傷行為に及ぶ炎さんを止めるために必死に声をかけ続けた。

しばらくは錯乱状態のようになっていた炎さんだけど、

3分程声をかけて、ようやく頭を打つのをやめ、人間に擬態した。

「はぁ・・・、はぁ・・・。

最悪だ。

お前にこんな姿見せるなんて。

お前を助けに来たときの威勢が馬鹿みたいだ。」

「そんなことありません!

炎さんのおかげで私とあの男子高生は死なずに済みました!」

「うるさい・・・。

・・・前から思ってたけど、

何でお前は私に敬語使ってるんだ?

私も14で同い年なんだ。

うざいからやめろ。」

「えっ、同い年!?!?」

嘘でしょ!?!?

年が近いとは思ってたけど、

あの冷酷な雰囲気から、

てっきり1個上位かと思ってた・・・。

「あっ、じゃあ、炎ちゃん、でいいかな?

守江さんと同じだけど。」

「・・・好きにしろ。」

そう言って炎さ、じゃなくて炎ちゃんは立ち去ろうとした。

「待って!!」

「・・・何だ。」

私は思った。

このまま炎ちゃんを帰しちゃいけない。

ちゃんと、どうしてあんなに取り乱したか聞かなきゃ、って。

「あのさ、ちゃんと教えてよ。

どうしてさっき、あんなことに・・・!」

「それ聞いて、どうする気?

私の弱みを知って、私を見下すため?

お前も大概性根が腐ってるな。」

「はぁ!?

何でそうなるの!?

私はただ、炎ちゃんが辛そうだなって思って・・・!」

「同情した、と?

ずいぶんご立派な身分だな。

お前は私の何なんだ?

出会って1日の、赤の他人じゃないか。

なれなれしいにも程がある。

人には知られたくない部分が誰にでもあるんだ。

そこにズケズケと踏み入る奴は、死ねばいい。

それが私の信条だ。

覚えておけ!」

「っ・・・!!」

そう言われて、私はハッとした。。

・・・そうだ。

私も同じだ。

他人にズケズケプライベートに入ってこられるのが、大っ嫌いだ。

だからクラスの女子軍団が嫌いなのに、

今、私は炎ちゃんに同じ事をしようとしてしまった。

最低だ、私・・・。

自分で投げたブーメランが、今私の心にグサリと突き刺さった。

「・・・じゃ、帰る。」

炎ちゃんは歩き出した。

全部、炎ちゃんの言う通りだ。

私は他人のプライベートに踏み込もうとした。

自分が嫌いなことを他人にするなんて、

一番やっちゃいけないことなのに。

・・・でも、本当にそれでいいの?

このまま帰していいの?

炎ちゃんの事情を聞かなくても、

私には何かできるんじゃないのか??



「・・・炎ちゃん。」

「・・・何だ。」

私は、今選んだ選択が正しいのか確証が無かった。

余計に嫌われるかもしれなかった。

でも、やってみる価値はある。

やるしかない。

私は言った。

「・・・さっき逃げてもらった男子高生がちゃんと無事に

逃げられたか、一緒に確認しに行かない?」

「断る。

お前一人で行け。」

まあ、そう言うよね。

でも、何が何でも来てもらうよ。

「・・・もしさ、あの人が私たちの存在を世間に言いふらしたら、

色々大変じゃん?

ちゃんと口止めしておかないと。

でも私一人じゃ口止めなんて無理だよ。

トカゲなんて大して怖くないし、間抜けだし。

やっぱりここは、万一に備えて威圧に長ける炎ちゃんも一緒に行くのが

適任かな~って!!」

「お前、何言ってるんだ??」

「良いから!行こう!!」

「おい、ふざけるな離せ!!」

私は強引に炎ちゃんの腕を引っ張って連れて行った。

計画通り・・・!



あの男子高生は、近くのコンビニの前でガタガタと震えていた。

「あのー、大丈夫ですか?」

「ひっ・・・!トカゲの・・・!!」

男子高生は私たちを見て怯えている。

まあ、いきなりあんなの見たら当然の反応だろう。

私だって昨日はそうだったし。

「落ち着いて話を聞いて!

私たちは人間を襲う気は無いの!」

私は、自分の事情と先ほどの戦闘の結果を彼に教えた。

横を見ると、炎ちゃんがゴミを見る目で私を見ていた。

待って、お願い。

もう少しで真意がわかるから!

最も、その真意でも怒られるかもしれないけど・・・!

「・・・そういうわけで、私たちの事は秘密にしてください!

お願いします!!」

私は彼に土下座をした。

どうだ・・・?

わかってもらえたか・・・!?


「・・・頭を上げてよ。

言わないよ、二人の事!

君たちの事情はよくわかった。

あいつは、心の底まで化け物になってしまって、

チームメイトをたくさん殺してしまったんだね・・・。

でも君たちは違うってわかったから。

むしろ僕の方こそ、怖がってごめん。

君たちの事は絶対に口外しない。

約束する。

二人とも、僕の命を助けてくれて、

本当にありがとう・・・!」

そう言って、男子高生は笑った。

「・・・っ!こちらこそ、ありがとうございます!!」

良かった、わかってもらえたんだ・・・!

私の計画の最大の鬼門を突破出来た!!

私は咄嗟に炎ちゃんの方を見た。

案の定、炎ちゃんはこの状況に困惑しているようだった。

私の計画完遂まで、あと少し・・・!!



男子高生と別れた後、

炎ちゃんは私に言った。

「・・・まさか、あれのために私を連れていったのか?」

「うん、そうだよ。」

私はうなずいた。

「炎ちゃん、自分の事を責めてたからさ。

炎ちゃんのおかげで助かった人、感謝してる人がいるって

伝えたかったんだ。

八つ当たりでも、それで救われた命が一つあったって。」

「・・・でもお前、あいつが私たちを怖がって、気持ち悪がって、

公表される可能性は考えなかったのか!?

いや、もしかしたらあいつの言葉は口だけで

これからあいつは私たちを通報するかもしれない!

どうしてそんな不確定すぎる計画を組んだんだ!!」

私は、色々考えながら言葉を綴った。

彼女に納得してもらえるように。

「私はね、自分で言うのもあれだけど、

結構ひねくれた性格でさ。

表面上だけの付き合いが嫌いなんだ。

・・・だからずっと他人の顔色を伺って、

何が本当で何が嘘かを疑う人生を送って来たから。

なんとなく、わかったんだ。

あの人はそんなことしない、って。

顔を見たらわかる。

あの人は私の話を信じてくれる。

そういう、純粋な顔してる。

私のクラスの、プライベートに勝手に入ってくる迷惑な女子軍団と

違ってね!」

「はぁ??

お前、何事も無計画にも程があるだろ・・・。

何かお前の自信が怖くなってきたよ・・・。」

炎ちゃんはだいぶ呆れた顔をしていた。

何だかちょっと間抜けな表情だ。

「ふふっ、そんな表情初めて見た。」

すると、炎ちゃんは『まずい!』って感じの顔をして、

「・・・何なんだよ、お前は。」

と、いつもの冷酷な様子に戻っていた。

今だ、謝らなくちゃ!!

「・・・さっきは、勝手にプライベートに踏み込もうとしてごめん。

私もそういうの嫌いなのに、炎ちゃんに同じ事しようとしちゃった。

ごめんね。

でも、これだけは伝えたかった!

炎ちゃんのおかげで助かる人がいる!!

少なくとも、そこだけは間違いないの!!

・・・もし逆効果な事してたらごめんなさい。

それだったら、私をボコボコにしてください。

お願いします。」

私は再び土下座しながら言った。

だいぶ、危険な駆け引きだった。

炎ちゃんの言う通り、あの人が私たちを拒絶したら終わりだった。

それが上手くいったとしても、炎ちゃんにブチ切れられる可能性は大いにある。

私はちらっと顔をあげ、炎ちゃんの表情を見た。

炎ちゃんは・・・、








「お前・・・、無茶苦茶だよ、ほんと。

怒鳴ろうと思ったけど、

呆れて物も言えない。

もうわかったから。

私も機嫌悪くて、色々言い過ぎた。

意地の張り合いはやめよう。

私の負け!!

これでいいだろ、"竜奈"?」

炎ちゃんは、私を見つめながら、少しだけ口角を上げていた。

その表情を見て、私は胸を撫で下ろす。

「やっと名前で呼んでくれたね。炎ちゃん!」

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